レガシーシステムとは?意味や脱却するポイントをわかりやすく解説

レガシーシステムとは?意味や脱却するポイントをわかりやすく解説

レガシーシステムとは、導入から長い期間が経過した旧型のシステムのことです。レガシーシステムはセキュリティ面や変化し続けるビジネス・テクノロジーへの対応ができないなどのさまざまなリスクがあるため、刷新していく必要があります。

本記事では、レガシーシステムの意味や問題、脱却する方法、新システムへの刷新に成功した事例などについて解説します。

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レガシーシステムとは

レガシーシステムとは、最新の技術ではなく古い技術で構築されたシステムのこです。主に1980年代に導入されたメインフレームと呼ばれる大型コンピュータや、それを小型化したオフィスコンピュータ(オフコン)などに代表される、最新技術を適用しにくいシステムを指します。

企業の基幹システムにはこのような構築から20年以上経過するレガシーシステムが残っている場合が多く、柔軟性や機動性の低さなどからDXを妨げる要因になる可能性があり、刷新する必要性が高まっています。

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経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」とは

「2025年の崖」とは、2018年に経済産業省が発行した「DXレポート」で言及された問題です。企業がレガシーシステムへの対応を誤ると、DXが実現できないだけでなく、2025年以降に最大12兆円の経済損失が生じる可能性があると述べられています。

具体的にレガシーシステムは維持管理費の高額化やセキュリティリスクの高まりなどの経営面に加えて、貴重なIT人材の浪費など人材面の問題も抱えています。この2025年の崖問題で予測される損失を回避するには、レガシーシステムの刷新が急務であると言えます。

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レガシーシステムが生まれる要因

では、なぜ導入時は便利に使われていたシステムが、課題の多いレガシーシステムとなってしまうのでしょうか。その要因について見ていきましょう。

システムのブラックボックス化

長期間運用されているシステムは修正や更新が繰り返されますが、担当者の変更や退職などにより全体像を把握できる人がいなくなることで、ブラックボックス化しやすい傾向にあります。適切な運用やメンテナンスが難しくなるうえ、障害発生時の対応が遅れてしまう原因となります。

部署ごとの部分最適化

特に規模の大きな企業では、部署ごとにシステムへ必要な機能を追加したり、部分的に最適化したりすることがよくあります。これによりシステムが肥大化・複雑化し、全体最適化や新たなシステムへの刷新が行いにくいレガシーシステムとなっていることが多くあります。

システム開発の外部依存

自社にシステム開発を行う環境が整備されていない場合、外部企業に開発業務を委託することになります。しかし、外部企業へ「丸投げ」してしまい自社でのシステムへの理解が浅くなると、適切な運用ができずレガシーシステムとなってしまう可能性が高まります。

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レガシーシステムが引き起こす問題

実際にレガシーシステムが引き起こす可能性のある問題として、以下のようなものがあります。

業務の属人化

古い技術が使われていたり、複雑化・ブラックボックス化していたりするシステムは特定の人しか扱うことができず、業務の属人化が進みます。この場合、担当者の離職などが発生すると企業にとっては大きなリスクです。また、どの企業でもIT人材の不足が深刻な問題となっており、特に古い技術やノウハウは継承することが難しくなっています。

システム障害リスクが高まる

レガシーシステムは老朽化や処理能力の問題により、障害が発生する可能性が高いです。またブラックボックス化・複雑化している場合、復旧にも時間がかかります。障害が発生すると、業務の中断やデータ損失、サービス提供の停止などさまざまな悪影響があり、企業の評価や信頼度の低下につながりかねません。

市場変化への対応が困難

市場が変化するスピードは速く、次々と画期的な技術や製品が生まれています。最新技術を取り入れながら市場のニーズに対応したり、新たなビジネスを展開することは企業にとって重要です。しかし、レガシーシステムは最新技術との互換性が低く、適用しづらいことから企業間競争において他社に出遅れてしまう可能性が高まります。

メンテナンスや運用コストの増加

レガシーシステムはメーカーのサポートが終了する場合が多く、延長サポートを受ける費用や、自社で対応する場合には人材コストが必要になります。また不具合の発生頻度も高くなるため修理やメンテナンスの回数が増え、その度にコストが発生します。

DX推進の妨げになる

DXを実現するために新たなシステムやアプリケーションを導入する場合、古い技術やアーキテクチャによって構築されているレガシーシステムとの連携やデータの移行が困難な場合があります。

ほかにも、ここまで解説したレガシーシステムが引き起こす諸問題はDXを実現するうえでの障壁となります。DXを実現するには、まずはレガシーシステムを刷新することが最優先であると言えるでしょう。

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レガシーシステムから脱却するには

では、レガシーシステムから脱却するにはどうしたら良いでしょうか。ここでは、効果的な方法を4つ解説します。

マイグレーション

マイグレーションとは「移行」という意味で、古いシステムを新しいシステムへ移行することです。システムやデータを新たな環境へ移すことで、レガシーシステムからの脱却を目指します。マイグレーションには以下の3つの手法があります。

  • リホスト:現行システムにおけるアプリケーションは変更せず、プラットフォームやハードウェアなどを新しいものに変える手法
  • リビルド:既存のシステムをベースに新しいシステムを再定義する手法
  • リライト:レガシーシステムのロジックは変更せず、使用するプログラミング言語を新しいプログラミング言語に置き換える手法

どの手法を選択するかによって、移行期間やコストは変化します。現状どのような課題があり、どのような改善が必要なのか、洗い出してから検討しましょう。

モダナイゼーション

モダナイゼーションとは「現代化」という意味で、単なるレガシーシステム刷新にとどまらず、業務フローを最新のテクノロジーを用いて最適化し、組織がさらなるビジネス価値を創出できるように変革していくことです。

マイグレーションはシステム刷新そのものを目的とするのに対し、モダナイゼーションは従来の業務システムを現在のニーズに合わせて変革し、ビジネス全体の最適化を図ることが目的です。

データ移行による工数勘案とダウンタイムの最小化

マイグレーションやモダナイゼーションに伴い必要となる作業が、既存データの移行です。データ移行においては、新旧双方のシステムを理解し、移行すべきデータを把握・特定することからはじまります。
新システムに合わせてデータの加工・変換を行う場合、正しくデータが作成できているか等突合による確認作業が必要になります。
対象のデータ件数が膨大であったり、データ容量が大きかったりすると、データ移行は非常に多くの工数を要し、レガシーシステム刷新プロジェクトの総工数の大半がデータ移行に関わる場合もあります。また、システム移行に伴うダウンタイムをどの程度許容し最小化するかといった課題があります。そのため、データ移行のための工数を最小限に抑え、最低限の移行期間で適う方法を検討することは重要なポイントとなります。

したがって、レガシーシステムから脱却するためには、必ずマイグレーションとモダナイゼーションのどちらかを選ばなければならないわけではありません。部分的に適切な方法を見極めて進めることが効果的です。

クラウドサービスの活用

レガシーシステムをクラウド環境へ移行することも有効な手段です。クラウドサービスはシステム環境をオンデマンドで提供するため、柔軟性やスケーラビリティに優れていることが特長です。そのため、オンプレミスからクラウドへ移行することで、コストの削減やセキュリティの向上、運用負荷の軽減などレガシーシステムの課題解決につながることが期待されます。

データ連携には要注意

モダナイゼーションでオンプレミスとクラウドの両方にシステムが存在する形となった場合、データを連携させずにシステムを構築すると、サイロ化の原因となります。サイロ化した場合、そもそも必要なデータが足りていなかったり、システムごとに個別にデータを揃えるのに手間がかかったりと、せっかくモダナイゼーションした新システムを最大限活用できません。そのため、データ連携のプログラムは、連携するクラウドサービスやアプリケーションごとにスクラッチで開発するなど検討が必要です。

DX人材の確保・育成

レガシーシステムを刷新してDXを推進するには、デジタル技術やデータ活用に精通しつつ、DXの取り組みをリードできるDX人材が必要です。

しかし、DX人材は量・質ともに日本全体で不足しており、外部から確保することは容易ではありません。そのため、社内でのリスキリング内製化を行い、人材を育成することに注力すべきです。

社内にノウハウやリソースが不足している場合は、外部のパートナー企業からスキルトランスファー型支援を受けることも有効な方法とされます。

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レガシーシステム刷新に成功した企業事例

最後に、実際にレガシーシステムを刷新してDX推進に成功した企業の事例を紹介します。

角上魚類ホールディングス

角上魚類ホールディングスは、鮮魚専門店「角上魚類」を展開する企業です。同社の鮮魚市場における発注・買い付け業務は手作業で行われており、ミスや誤配送の多発、紙を使用することによる事務作業の負荷などが課題となっていました。

そこで、市場特有の買い付け業務のフローを崩さずにデジタル化し、既存の基幹システムとの連携も可能な『セリ原票アプリ』を開発。全体業務フローと課題の可視化、改善ポイントの洗い出しを行い、実際の現場で動作確認を中心に入念なテストを繰り返し、不具合やユーザビリティを損なう箇所を割り出しては改善を繰り返しました。

その結果、受注明細やセリ原票のフォーマットを踏襲したUIデザインにより、手書き作業と遜色ない使い勝手の良さを実現するとともに、効率化にも成功。また、紙をデジタル化したことによるペーパーレス化にも貢献しています。

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クボタ

クボタは建機・農機などの製品を軸に、世界各国へトータルソリューションを提供するグローバル企業です。同社は建機の修理対応の多くを現地のサービスエンジニアの手で行っており、担当者のスキル・経験によってはサポートの質が不十分であるという課題を抱えていました。

そこで、3Dモデル・ARを活用した故障診断アプリ『Kubota Diagnostics(クボタ ダイアグノスティックス)』を開発。スマートフォンをかざすことで建機内部の故障個所や対象部品をビジュアルで認識・特定できるようになりました。

アプリの導入によりサービスエンジニアのスキルや経験に依存せず故障個所を迅速に割り出せるようになったことから、脱属人化に成功し業務効率化を実現。カスタマーサクセスに直結するサポート体制のボトムアップに成功しています。

さらに、UIデザインや設計においては米国ユーザー向けのトレンドを取り入れ、日本語のマニュアルを英語圏向けに再構築。現地ユーザーが使いやすいタッチポイントを意識することでローカライズにも成功し、本アプリは日本を含む世界各地の市場に順次展開していくことが予定されています。

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ユニメイト

ユニメイトは、レンタルユニフォーム事業を主軸に各種ユニフォームの企画・生産・販売やクリーニングまでを手がける企業です。同社のレンタルユニフォーム事業における従来のサイズ申請は、クライアント企業のスタッフの自己申告で行われてきました。しかし、ヒューマンエラーによるサイズ違いが起こりやすく、返品・交換にかかる労力やコストを大きな課題としていました。

この課題解決のために開発されたのが、AI画像認識を活用した自動採寸アプリ『AI×R Tailor』です。同社の採寸ノウハウを活かして適切な服のサイズを導き出すマッチングロジックの創出と、「画像から3Dモデルを作成し、そこから実際のサイズを予測する」オリジナルのAIエンジン開発に成功しました。

アプリはサイズ測定対象者の背面・側面の写真と基本データ(身長・年齢・体重・性別)から適したサイズがフィードバックされるシンプルな仕組みで構築。大人数を撮影・管理することを考慮したUIデザインも加わり、使いやすさにも優れたプロダクトに仕上がりました。

従来の手作業をアプリで代替することにより採寸ミスが減り、課題であったコストや労力の削減に成功しました。さらに返品による廃棄品も削減し、自然環境への貢献も実現しています。

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まとめ:レガシーシステムを刷新してDXを実現しよう

レガシーシステムとは、導入から長い期間が経過した旧型のシステムのことを指し、企業におけるDX推進の足かせになることが懸念されています。

本記事で解説したように、レガシーシステムはさまざまな課題を抱えています。不確実性の高い現在の市場においてビジネスを成長させるには、レガシーシステムへの早急な対応を検討し、DX推進に注力する必要性が高まっています。

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記事の作成者・監修者

平田 大祐(株式会社モンスターラボ 常務執行役員)

平田 大祐(株式会社モンスターラボ 常務執行役員)

2004年IBMグループに入社し、IBM ITスペシャリストとしてシステム開発に従事。 2009年からベンチャー企業にて受託開発、コンテナ型無人データセンターの管理システム、ドローン開発などソフトウェアからハードウェア開発まで幅広く関わる。チーフテクノロジストとして2015年にモンスターラボへ入社し、2018年4月より最高技術責任者であるCTOに就任。 プロフィールはこちら