DX戦略とは?必要な理由と成功の秘訣を3つの事例で解説

DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉が浸透して久しいですが、「2024年問題」や「2025年の崖」が目前に迫る昨今、改めて自社のDX戦略を見直す企業も多いのではないでしょうか。そこで今回はDXの意味や定義のほか、DX戦略が必要な理由、推進する際のステップや成功事例を解説します。DX戦略策定方法や予算確保で悩まれている方にぜひ読んでいただきたい内容となっております。

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DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?

DX戦略の本題に入る前に、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の定義と歴史を簡単に説明します。DXの本質を理解することが、戦略の策定には欠かせないのでしっかりとチェックしてみましょう。

★まとめ
・DXとはデジタル技術を活用して生活やビジネスを変革すること
・DX戦略を成功に導くには全社員にビジョンを共有すること
・DX戦略のメリットは顧客ニーズの変化に素早く対応、業務の効率化/生産性向上、新しいビジネスモデルの創出

★DXについて詳しくはこちら

そもそもDXとは?

DXとは「Digital Transformation」の略称です。日本語では「デジタル変革」と訳されています。DX を一言で表現すると「デジタル技術を活用することで生活やビジネスを変革すること」になります。さまざまな意味で捉えられがちですが、日本のビジネスシーンにおいては経済産業省の定義を理解すれば間違いはないでしょう。

DXの歴史

DXの歴史は2004年、スウェーデンのウメオ大学教授で2022年現在はインディアナ大学教授で上級副学部長のエリック・ストルターマン氏が提唱した概念です。この概念は「デジタル技術を活用し、人々の生活をあらゆる面で豊かに変革させる」ことを指します。なお、日本にDXが浸透したのは経済産業省が2018年に発表したDXレポートであるとされています。

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DX戦略とは?

ユーザーに新たな価値を提供するためには、これまでにない収益獲得の仕組みを構築することが先決です。このためには既存のビジネスモデルを打破して企業全体の変革が求められます。従ってその変革の過程にはDXを成功に導くための中長期的なロードマップが必須です。つまり、DX戦略とは、「DXで目標達成を実現するための指標の確立」といって間違いはありません。

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DX戦略が必要な理由とは?

DX戦略について理解できたところで、次にDX戦略が必要な理由として以下の2つをご説明します。

全社的な取り組みが必要

DXを進めるには、一部の部署や一部の社員だけではなく全社的に一体となって推進する必要があります。
したがって、DX戦略がないと、社内の足並みを統率できず、推進度合いに格差が生まれます

手段が目的化することを防ぐ

DX戦略がないとDXを実践することが目的となってしまうケースが多いです。つまり、手段が目的化する恐れがあります。この結果、新しいDXの施策を手当たり次第に行うことになりかねません。あくまでもDXは自社の目的を達成するための手段という認識が必要です。

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DX戦略を策定するメリット

それでは、DX戦略を策定した場合のメリットを3つご紹介いたします。
自社の課題をDXでどのように解決するか、という方向性を示したDX戦略を策定し、全社一丸となってDXを進めていきましょう。

業務の効率化と生産性向上が可能

DX戦略の基本は企業内に溢れるアナログデータをデジタル化することです。デジタル化の過程で業務の棚卸をすることにより、業務の自動化や無駄な業務の削減等が行われます。この結果、業務の効率化と生産性向上が可能となります。
同時に業務のデジタル化が進むことで従業員の残業時間の削減や在宅勤務が実現することで労働環境の改善にも繋がります。

新しいビジネスモデルを創出できる

我々を取り巻く生活やビジネスは日々、刻々と変化しています。このような環境下、DX戦略を導入することで市場ニーズにマッチした商品やサービスを生み出す取り組みが活性化されます。この結果、これまでに無い画期的なビジネスモデルを創出することができます。

顧客ニーズの変化に素早く対応できる

昨今、ユーザー志向は多様化しており、従来のマーケティング手法やユーザー分析が通用しない環境に置かれています。この状況に対応する手段として最新テクノロジーやビッグデータの活用等を駆使することがDX戦略です。DX戦略の導入で顧客ニーズの変化に素早く対応することが可能です。

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DX戦略を成功に導く推進ステップ

ここではDX戦略を成功に導く推進ステップを3つご説明します。幅広い産業に適用できる内容なので、ぜひ確認してみてください。

現状を把握する

DX戦略を推進するためには、まずは自社の現状を把握する必要があります。
自社に散在する資源(技術、ノウハウ、人材)を把握、整理することや、現場の課題を調査、抽出します。
また、DXの推進度合いを客観的に確認する方法として、経済産業省が公表している『DX推進指標』を活用し、自己診断することや専門機関に依頼し、評価をしてもらうといったことも可能です。

ビジョンを設定、共有をする

まずは、DXによって達成したいビジョンを定めるために、会社の基本理念を改めて確認します。基本理念とは、企業や組織が根本に据える使命や存在意義など基本的な価値観を指します。どのような価値を社会に提供したいかが明確になることで、それを実現するための最善の方法は何かが明らかになり、達成すべきビジョンが見えてきます
DX戦略は、達成すべきビジョンを定めるところから始まります。DXを通じて企業がどのような成果を目指すのか、どのように新しい価値を提供できるのか、具体的に描くことが重要です。
そしてこのビジョンは、経営層だけではなく、全社で共有します。
共通認識があることで、進むべき方向性や方針にブレや迷いがなく、DXを推進することができます。

外部環境の分析をする

昨今のコロナ禍やロシアによるウクライナ侵攻など、外部環境の変化は企業の存続に大きな影響をもたらします。そのため、外部環境がこの数年間でどのように変化しているか、自社のビジネスにどのように影響を与えているか分析することも重要です。
外部環境の変化を分析する方法としては、PEST分析、5フォース分析、3C分析などがあります。代表的なフレームワークであるPEST分析は、政治、経済、社会、技術の4つの外部環境を整理し、分析する手法です。分析によって予測できる変化について対策を練ることはもちろん、予測できない変化については、対応できる組織力の醸成などの対策が必要です。

社内体制の整備をする

最初のステップで自社に散在する資源(技術、ノウハウ、人材)の把握や整理を行いました。それらを基に社内体制の整備に移ります。戦略が定まっても、DXを実施するために必要な人材が不足していれば、取り組みは困難です。
特にデジタル・IT人材が不足しやすい上、業務の自動化や省力化には、AI・IoTについてのエンジニアリングの知識が必要です。集めたデータを分析し、活用して行くには、データアナリティクスの知識を持つ人材が必要となります。
しかしながら、日本全体でIT人材が不足している状況で、こういった人材を確保するのことは容易ではありません。既存の人材を育成する場合でも、多くのリソースを要するでしょう。採用や人材育成と並行して、DX推進を支援する企業に委託することも一手です。
また、DXは全社的な取り組みで進めるものですが、DX推進部など各部署の取り組み状況の統括や、先行して施策を進める部署を設置することもDXを推進する上で重要でしょう。

★DX人材について詳しくはこちら

具体的な方針や施策を決める

自社の状況と直近の外部環境が分かったら、ビジョンを実現するために、取り組みの優先度やどの施策を重点的に取り組むかを決める段階に入ります。この場合、ヒトモノカネといった経営資源は有限なため、新たに取り組むべき課題を決める一方で、取り組まない(やめる)ことを決めることも重要です。

ビジネスプロセスのデジタル化が十分でない場合やレガシーシステムが障壁になっている場合は、まずはこれらの対応から検討することが必要になります。
ここで策定する施策は、戦略の成果を測るために定量的に測れるものであることが望ましいでしょう。

ロードマップを作成する

施策や目標を設定したら、それぞれの施策をいつまでにやるのかロードマップを作成します。
ロードマップを作成することで、その時期までの到達目標が明確になり、全員が同じ方向に向かって推進することができます。何のための作業かがよく理解できるため、モチベーションアップにもつながります。
中長期で計画する場合、5年後にどのような状態になっているのかといった目標から逆算することも一つでしょう。

2020年12月に経済産業省が発表した「DXレポート2」を参考に、超短期・短期・中期のDXのロードマップ(シナリオ)を確認してみましょう。

【超短期はDXの理解と業務のデジタル化】
1.事例などの情報収集
2.業務環境のオンライン化
3.従業員の安全、健康管理のデジタル化
4.顧客接点のデジタル化

【短期のDXは推進体制の整備と戦略の策定】
1.社内のDXに対する認識や方向性をまとめる
2.CIOなどの担当者、責任者を設置して役割と権限を明確化する
3.デジタル企業としての競合優位性を確立するまでの具体的な作戦を立案
4.それぞれを実行し、PDCAサイクルが回せる状態をつくる

【中期は人材育成とプラットフォームの形成】
1.SaaSサービスなどに移行することでレガシー環境から脱却を図る
2.DX人材の確保
3.「1」と「2」を活用して産業変革を加速する

あくまで一例ではありますが、俯瞰的な観点を持ちつつ、ひとつずつステップアップすることが必要です。

成果の評価と定期的な戦略見直しを行う

DXを推進していく上で、DX戦略を立てることは重要ですが、一度立てた目標や戦略を頑なに変更しないということも考えものです。
定期的に評価し、場合によっては見直し、改善を行うことも重要です。
「毎月」、「四半期に1度」など頻度を決めて、DX戦略の進捗や成果の把握と、課題があれば戦略の軌道修正を即座に実行できる環境を整備しましょう。

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DX戦略実行のための予算確保方法

ここまでDXを推進させるための戦略の立て方を見てきましたが、実行するためには予算を確保する必要があります。
特に新規事業開発や既存ビジネスの変革といった場合、先行投資や失敗も加味した予算の確保を検討することもあるでしょう。潤沢な予算がなければ失敗を活かし改善していくマインドを醸成していくことも難しくなります。
ではどのように予算を確保すればよいでしょうか。短期的な場合と長期的な場合で考えてみます。

短期的に予算を調達する場合、既存の予算とは別に既存事業の利益を充てる、外部から資金を調達するといったことが考えられます。条件がありますので、一概に調達できるわけではないですが、行政などのDX補助金を検討することも可能です。
しかしながら、既存の予算配分を変更しスモールスタートしていくことが、より現実的かもしれません。スモールスタートであれば、成功体験を重ねて、予算を少しずつ増やしていくということも可能でしょう。スモールスタートと相性の良い開発手法としてアジャイル開発というものがあります。

★アジャイル開発について詳しくはこちら

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中長期的には、短期的施策によって実現したコストカット分や、生み出された利益を更に活用していくという好循環が重要でしょう。
特にIT予算については、レガシーシステムの刷新による維持コストの削減やデジタル化による効率化、省人化による人的資本の再配置など最適化を行っていけば、新たな予算を確保することができるでしょう。

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DX戦略の導入事例

ここではDX戦略で成功を収めた主要企業のうち、3社の活動を紹介します。自社に役立てられるものがあるか確認してみましょう。

株式会社クボタ

アプリを使い診断している状況

建機・農機などの製品を軸に世界各国にトータルソリューションを提供する株式会社クボタ。

同社が2020年12月にリリースした『Kubota Diagnostics(クボタ ダイアグノスティックス)』は、3Dモデル・AR機能を活用した故障診断ができる革新的なサービスです。

具体的には以下のメリットを与えることができるとされています。

・経験や知識に頼らない故障診断フローを提供

建機の修理対応の多くは現地販売代理店のサービスエンジニアの手で行われており、担当者の経験・スキルによってはマニュアルだけではサポートが不十分なケースも発生していました。

・ダウンタイムによる建機の稼働率低下を抑える

ダウンタイムによる建機の稼働率低下は、ユーザーの収益減少に直結する問題。そのため、迅速かつ効率的で誰にでもわかりやすく、サービスエンジニアの能力に左右されない故障診断サポートが求められていました。

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コマツ(株式会社小松製作所)

出典:https://sanki.komatsu/komtrax/

総合機械メーカーのコマツはDX戦略を導入した「コムトラックス」を開発しました。

このサービスは全世界で稼働する約30万台あるコマツ製の建設機械にGPSを搭載することで、機械の稼働情報や警告情報、故障情報などを収集してユーザーの稼働管理やメンテナンス管理を支援します。

具体的にはユーザーに対して以下のメリットを与えることができるとされています。

・盗難防止

建設機械は高価で稼働場所も郊外が多いため、盗難被害に遭うケースがありました。コムトラックスを導入することで建設機械の位置情報を適時確認できます。万一、盗難被害に遭った場合は遠隔操作で建設機械のエンジンを停止することも可能です。

・保守費用の削減/稼働率の向上

コムトラックスを導入することで建設機械のメンテナンス情報や稼働状況を管理しているため、適切なメンテナンス時期を通知することができます。これにより不要なメンテナンスを防ぎ、保守費用を削減できます。また、定期的なメンテナンスを行うことで機械の故障を防止できるため、稼働率の向上にも貢献できます。

沖電気工業株式会社

出典:https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2019FY/000312.pdf

情報機器メーカーである沖電気工業は、DX戦略を踏まえた「バーチャル・ワンファクトリー」 を推進しています。この取組みは同社の2工場(本庄工場と沼津工場)をバーチャル的に1つの工場として融合するものです。

この取組みの背景として現在、各工場では異なる製品を生産していますが急激な需要の増減に対して施策が充分でありませんでした。

そこで今回の取組みとして以下の4つを実行しました。

・部門間融合

生産、技術、品質の各部門で交流会を実施しました。また、効果のある施策として「良いとこ取り活動」も水平展開しています。

・生産融合

生産状況の見える化を行うことで各工場の負荷状況が明示された結果、各工場の得意技能も明確になりました。 これにより、生産の繁閑に合わせた工場間での生産応援が可能となりました。

 ・試作プロセス融合

協力メーカーに任せていた工場の試作品を別の工場で請け負いました。これにより、試作生産の効率化と量産工程へのフィードバックが容易になりました。この結果、新製品の生産立ち上げ期間が短縮されました。

・IT融合

工場間で異なる生産管理システム(ERP)の統合検討を開始しました。

この取組みの成果は以下の2つです。

2工場の生産規模を維持しながら効率化を進めた結果、コスト削減に加えて人材や技術の交流が活性化。この結果、両拠点の強みを生かした生産体制を構築しました。

・工場間の連携により、多品種少量生産の二―ズの取り込みや人手不足に対応した工場間の負荷分散等、外部環境変化 への対応が容易にできる体制を確立しました

まとめ:適切なDX戦略が成功のカギ

この記事ではDXの意味や定義からDX戦略の必要な理由、そして成功に導くポイントや事例までを解説して来ました。DX戦略の成功には新しいユーザー提供価値への変革が必要不可欠です。しかしながら組織の変革には反対勢力が多いのも事実です。

従って全社員を巻き込んで各自が当事者意識を持てる取り組みにすることが重要と言えるでしょう。

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記事の作成者・監修者

宇野 智之(株式会社モンスターラボ 常務執行役員)

宇野 智之(株式会社モンスターラボ 常務執行役員)

2003年に独立系大手システムインテグレーション企業に入社。エンジニアを経て、PMとして組み込み/MobileApp/Webシステム開発案件を担当。大規模案件のマネジメントやオフショア開発を複数経験する。海外エンジニアとの開発における課題を解決することで、日本のIT人材不足の解決に貢献したいと考え、2015年にモンスターラボへ入社。2015年に豪州Bond University MBA取得。入社後はPM、PMO業務および組織マネジメント業務を担当。 2019年より、執行役員 デジタルコンサルティング事業部副事業部長・開発統括。2021年より上級執行役員 デリバリー統括責任者。プロフィールはこちら