デザイン思考(デザインシンキング)とは? プロセスや活用事例をわかりやすく解説

デザイン思考(デザインシンキング)とは? プロセスや活用事例をわかりやすく解説

デザイン思考(デザインシンキング)とは、デザイナーがデザインをおこなう際に用いられるプロセスを体系化したもの。

ユーザー視点に立ってサービスやプロダクトの本質的な課題・ニーズを発見し、ビジネス上の課題を解決するための思考法として、注目されています。

この記事では、デザイン思考の意味や、ビジネスシーンで注目されている理由、デザイン思考の5つのプロセス、活用事例を紹介しています。

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デザイン思考(デザインシンキング)とは?

デザイン思考とは、デザイナーがデザインを考案する際に用いるプロセスを、ビジネス上の課題解決のために活用する考え方のこと。

ユーザー視点に立ってサービスやプロダクトの本質的な課題・ニーズを発見し、ビジネス上の課題を解決するための思考法として、注目されています。

実際にデザイナーが設計した衣服や建築物といった「デザイン」そのものと混同されがちですが、デザイン思考は、あくまでこれらのデザインが設計される際に用いられた思考のプロセスを示します。

また、ユーザーニーズを検証することで課題を発見するという観点は、個人の自由な発想や感性によって作品を創作する「アート思考」とは異なります。

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デザイン思考がビジネスシーンで活用される理由

デザイン思考がビジネスの世界でも必要とされている要因は、時代とともにビジネスのあり方が変化し続けていることが大きく関係しています。

DX推進の観点

デジタル技術の進化に伴い、あらゆる業種においてこれまでにない新しい製品やサービス、ビジネスモデルが続々と登場しています。そんななか、さまざまな企業が競争力の維持・強化を図るためDXを推進しています。

ユーザーの視点に立った”課題の本質を発見を特徴とするデザイン思考は、変化し続けるユーザーのニーズを発見し、前例のない問題の解決策を導き出さなければならないDX推進において必要不可欠な思考プロセスです。

IPAが2021年10月に発表した「DX白書2021」においても、DXにおけるデザイン思考の重要性が指摘されています。

「デザイン思考」は製品やサービスのユーザーが抱える真の問題と最適な解決方法を探索し創出す る思考方法であり、DX推進において顧客に新しい価値提供をするために有効な手法である

出典:情報処理推進機構「DX白書2021

サービスデザインの観点

サービスデザインとは、顧客体験のデザインのみならず、それを継続的に提供できる組織や仕組みもデザインすることで、新たな価値を創出する方法論。

サービスデザインを実現するためには、デザイン思考や人間中心設計などのユーザー視点に立った方法論を活用し、UXCXを意識したサービスやプロダクトを実装することが重要です。

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デザイン思考の5段階プロセス

それでは、デザイン思考を実践するにはどのようなプロセスを踏めばいいのでしょうか。

最も代表的なものの一つに、ハーバード大学デザイン研究所のハッソ・プラットナー教授が提唱した『デザイン思考の5段階』で紹介されている5つのプロセスがあります。

これによれば、デザイン思考は「観察・共感」「定義」「概念化」「試作」「テスト」という5段階のプロセスに分けられます。

それでは、それぞれプロセスについて具体的に解説していきましょう。

① 観察・共感(Empathize)

このプロセスでは、サービスやプロダクトの課題をユーザー視点でとらえ、根本的な解決策を探ります。そのための手法として、アンケートやインタビューを駆使した調査を実施します。

ユーザーの意見を単に鵜呑みにするのではなく、いかにユーザーの立場になりきって本音に近づけるかどうかが重要なポイントです。

② 定義(Define)

「観察・共感」プロセスで得られた意見から、ユーザーのニーズや現状の課題を抽出し、”ユーザーが本当に求めていることは何か”という仮説を立てるプロセス。課題解決に向けての具体的な方向性を定めることが目的です。

③ 着想(Ideate)

「定義」で立てた仮説をもとに、課題解決に向けての「アイデア出し」を行うプロセス。ブレインストーミングなどの手法を用いて、たくさんのアイデアを出すことが重要です。ここで出たアイデアから1つのアイデアに絞り込む際、単に多く支持されたものを選ぶのではなく、アイデアにどのような意味があるかや、チームとして成し遂げたい目的に合っているかという視点を重視しましょう。

④ 試作(Prototype)

「着想」で固まったアイデアをもとに、サービスやプロダクトのプロトタイプを作るプロセス。できる限り低コスト・短期間でおこなうのがポイントです。ここで作るのはあくまでプロトタイプであり、完璧なクオリティが求められるわけではありません。

しかし、いくらプロトタイプとはいえ、ビジュアルデザインが魅力的でない製品はユーザーの支持を得にくいという点には注意が必要です。プロトタイプであっても視覚的な(ビジュアル)要素も重視した方が、機能・性能の使いやすさや有効性だけでなく本当にユーザーにフィットした製品であるかをテストで確認しやすくなります。

⑤ テスト(Test)

「試作」で作成したプロトタイプのユーザーテストを行い、ここまでの過程で見えてこなかった課題を洗い出すプロセス。しかし、テストを行ったら終わりではないので注意が必要。

このプロセスで得られたユーザーの反応をもとに、仮説が正しかったかを検証し、製品がユーザーのニーズに沿ったものになっているかを確認します。

「デザイン思考」では、一度形になったアイデアをそのままにせず、何度も改善や再考を重ねて、より良いサービスやプロダクトを追求していくことが重要です。

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DXにおけるデザイン思考の重要性

近年、さまざまな企業が急務として取り組んでいるDX推進においても、ユーザーのニーズを汲み取りサービスやプロダクトに反映できるデザイン思考は重要な要素。

デザイン思考はDX推進のどのような局面で役立つのでしょうか。具体的に解説していきます。

ビジネスにおけるDXの意味
簡単に言ってしまうと、「データやデジタル技術を駆使して、ビジネスに関わるすべての事象に変革をもたらす」こと。

★DXについて詳しくはこちら

DXレポートにおけるデザイン思考の重要性

2018年に経済産業省が発表した「DXレポート」においても、デザイン思考は企業のDX推進を担う「DX人材」に求められる重要な要素として記されています。

DXレポートにも記されているデザイン思考の必要性

DXレポートにも記されているデザイン思考の必要性 (出典:DXレポート)

DXとは、進化し続けるテクノロジーやそれに伴う人々の生活に合わせて、ビジネスの在り方自体を再構築していく取り組み。そのため、ユーザーのニーズに沿ったサービスやプロダクトをいち早くリリース・改善していくことが求められます。

ニーズから課題を抽出してプロダクトやサービスに反映させるデザイン思考は、DX推進に欠かせない要素の1つといえるでしょう。

DX人材にデザイン思考が必要な理由

IPAが2020年5月に発表した「DX推進に向けた企業とIT人材の実態調査」によると、DX推進に必要な人材は「ビジネスデザイナー」「アーキテクト」「データサイエンティスト/AIエンジニア」「UXデザイナー」「エンジニア/プログラマー」の6つの職種に分けられます。

一見、デザイン思考はサービスやプロダクトを設計する「デザイナー」だけに必須スキルであるように感じられるかもしれませんが、全ての職種に共通して必要な要素です。

どんなにいい機能を備えたシステムであっても、ユーザーのニーズに沿っていなかったり、ユーザーにとって使いにくい仕様であれば人々の生活に根ざしたプロダクトにはなり得ません。こうした事態を防ぐためにも、DX推進に携わるすべてのファンクションの担当者が、デザイン思考を意識すべきといえるでしょう。

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デザイン思考と相性のいい開発手法

IPAの「DX白書2021」において、デザイン思考はアジャイル開発やDevOpsといった開発手法との親和性の高さが指摘されています。

「デザイン思考」は仮説検証型のプロセスであるため、短期間でソリューションを開発し、顧客からのフィード バックを受けながら修正を繰り返す必要がある。そのため、小さなチームで開発・適用を短期間で繰り返しながら開発する「アジャイル開発」手法や、開発チームと運用チームが技術的のみならず組織的文化的にも連携することでスピードと品質の向上を目指す「DevOps」との相性が良い。

出典:情報処理推進機構「DX白書2021

DX推進・デザイン思考と関連性の高い開発手法は以下の通り。

デザイン思考と関連性の高い開発手法
・リーンスタートアップ
コストをかけずに最低限の機能を持った製品やサービスを短時間で作り、改善を繰り返すことで成功モデルに近づける方法
・アジャイル開発
必要な機能から開発に着手し、改善や追加の機能を細かいサイクルの開発工程を繰り返しながら実装する開発手法
・DevOps
開発担当と運用担当が技術的のみならず組織的文化的にも連携することでスピードと品質の向上を目指す開発手法

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デザイン思考に関連したフレームワーク

デザイン思考を実践する際におすすめなのが、フレームワークの活用です。ここではデザイン思考と関連がある2つのフレームワークを紹介します。

デザインスプリント

デザイン思考を実践するための手段としてデザインスプリントを実施する方法があります。デザインスプリントとは、アイデアの価値や顧客体験の検証をするフレームワークのこと。

短期間かつ低コストでサービスのアイデアのニーズ検証や、プロトタイプを用いた顧客体験の検証ができるため、スピード感のあるマーケットインが求められるデジタル領域における新規サービス開発においてよく用いられます。

デザインスプリントは通常5日間程度の短い期間で実施され、1日ごとに「理解」「発散」「決定」「プロトタイプ」「テスト」という5つのフェーズのワークを行います。

バリュープロポジションキャンバス

バリュープロポジションとは、顧客のニーズが高く、かつ競合他社が提供できていない独自の価値のこと。バリュープロポジションキャンバスを実施することで、自社のサービスにおけるバリュープロポジションを明確にすることが可能です。

デザイン思考のフェーズにおいて、アイデアが決まり、実際にソリューションを実行していくフェーズにおいて用いられます。

バリュープロポジションキャンパスでは、顧客を理解するために必要な「顧客プロフィール」、顧客のために自社でどのような価値を創造するかを考える「バリューマップ」を作成し、この2つを重なり合う状態にすることで、顧客のニーズと自社の提供する価値をフィットさせます。

★バリュープロポジションキャンバスの詳しい解説や作り方はこちら

デザイン思考関連のおすすめ教材

デザイン思考をより深く学びたい・ビジネスで実践できるスキルとして身につけたいと考えている人にはこちらの書籍もおすすめです。

おすすめ書籍①
デザイン思考が世界を変える〔アップデート版〕: イノベーションを導く新しい考え方

デザイン思考を提唱したデザイン・ファーム「IDEO」CEOのティム・ブラウンの著書。デザイン思考のプロセスを数々の具体例を交えて説明しています。「デザイン思考」についてわかりやすく噛み砕いた入門書は多いものの、まずは原典にあたってデザイン思考の本質を学びたいという人におすすめ。

おすすめ書籍②
実践 スタンフォード式 デザイン思考 世界一クリエイティブな問題解決 できるビジネスシリーズ

実践という観点からデザイン思考を解説している本の中ではこちらがおすすめ。デザイン思考に必要なアイデア出しやファシリテーションといったプロセスの方法が、著者のスタンフォード大学での体験をもとに説明されており、具体的でわかりやすいです。とにかく一度デザイン思考を実践してみたい人におすすめの一冊。

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デザイン思考の活用:モンスターラボの事例

デザイン思考を活用した企業のDX推進の取り組み・事例を紹介していきます。

8事業を1つのブランドに統合し、サービスの魅力を最大化(日商エレクトロニクス)

縦割りの構造だった部署間に相互理解を生み出す

縦割りの構造だった部署間に相互理解を生み出す

「自社のサービスが持つ価値や魅力を整理して伝えきれていない」というクライアントの課題に対し、複数の事業を統合するブランド開発を提案。チームビルディングから参画し、各事業部の担当者を交えたワークショップを実施しました。

★詳しくはこちら

ワークエンゲージメントを高める企業向け相互称賛アプリ(ピアトラスト)

プロジェクトメンバー全員でデザインスプリントを実施

プロジェクトメンバー全員でデザインスプリントを実施

クライアントが目指した「従業員同士で相互に称賛を送り合える社内コミュニケーションサービス」の開発に、企画段階から参画し、UXデザイン・設計からプロダクト開発まで担当。開発チームやクライアント関係者をはじめとしたプロジェクトメンバー全員でデザインスプリントを行い、サービスのアイデア出しを行いました。

★詳しくはこちら

まとめ:デザイン思考はこれからのビジネスを切り開くカギ

デザイン思考は現代のビジネスパーソンに必須の課題解決手法

デザイン思考は現代のビジネスパーソンに必須の課題解決手法

デザイン思考は、人々のニーズの観察に基づいて課題を定義し、そのうえでアイデア出し、試作、テストまでの一連の流れを行う課題解決の考え方。ビジネス上の課題に対する最適解を探る思考法として注目を集めています。

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記事の作成者・監修者

津山 拓郎(株式会社モンスターラボ デザイングループ グループ長/株式会社A.C.O. 執行役員)

飲食・音楽業界での活動を経て20代後半からIT業界に転身し、WEB/アプリ系のディレクターを10年以上経験。現在は、要求定義・要件定義のPM、UXのためのデザインプログラムマネージャーとして活躍。また、設計・開発工程ではIAをメインに担当。モンスターラボのデザイングループ・マネージャー、株式会社A.C.O.(デザインコンサルティングファーム)の執行役員を兼務。HCD-net 認定人間中心設計専門家。 プロフィールはこちら