サプライチェーン(SCM)とは?具体例やサプライチェーンマネジメントのメリット、先行事例を解説

サプライチェーン(SCM)とは?具体例やサプライチェーンマネジメントのメリット、先行事例を解説

サプライチェーンとは、製品・サービスを提供するために必要な部品の調達から、製造や配送などを経て消費者の手元に届くまでの一連の流れを指します。

本記事はサプライチェーンの意味や適切な管理、見直しで得られるメリットについて解説します。また画期的な取り組みを実施している企業の先行事例も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

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サプライチェーンとは?

サプライチェーンは、製品・サービスを構築するための部品の調達から消費者の手元に届くまでの一連の流れを表します。コスト削減のための計画を立てること、企業の強みや弱みを把握することに役立つサプライチェーンについての理解を深めましょう。

★まとめ
・サプライチェーンとは製品・サービスが消費者へ届くまでの一連の流れのこと
・国内および海外情勢の変化に伴い、サプライチェーンマネジメントを見直す必要がある
・サプライチェーンマネジメントにはDXの最適化がおすすめ

サプライチェーンの意味

製品・サービスを作るときに経る過程「部品や材料の調達 → 製造 → 配送 → 販売 → 消費」までの一連の流れをサプライチェーンといいます。「サプライ」は日本語で「供給」を表し、「チェーン」は日本語で鎖または連鎖を表します。言葉の通り、サプライチェーンは消費者の元へ製品・サービスが供給されるまでのつながりを指します。

バリューチェーンとの違い

サプライチェーンと類似する言葉に「バリューチェーン」があります。バリューチェーンとは、製品・サービスが消費者の手元に届くまでにかかわる部署およびそれらを支援する部署において、各部署がどれほどの付加価値を生み出しているかを分析することです。

部署ごとの付加価値がわかれば、他社と比較したときの自社の強みや弱みが把握できるうえ、マーケティング戦略やコスト削減の計画を立てるときなどに役立ちます。

「サプライチェーン」は製品・サービスが消費者の手元に届くまでの一連の流れに注目し、自社の強みや弱みを洗い出します。一方で「バリューチェーン」は製品・サービスが消費者の手元に届くまでにたどる部署および関連のある部署すべてに注目し、部署ごとの強みや弱みを洗い出します。

それぞれの注目対象を表にしたので確認してみましょう。

サプライチェーン バリューチェーン
注目対象 物やお金 部署や部署ごとの付加価値
注目箇所 調達・製造・配送・販売・消費 調達部・製造部・技術開発部・販売部・マーケティング部・人事部など

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サプライチェーンの具体例

サプライチェーンへの理解を深めるため、「スマートフォン」を例にサプライチェーンを見ていきましょう。スマートフォンの部品調達から消費者の手元に届くまでには以下の工程をたどります。

【スマートフォンのサプライチェーン】

部品調達(仕入れ) ・液晶パネル
・金属フレーム
・半導体
部品組み立て(製造) ・仕入れた部品を製造工場で組み立ててスマートフォンのパーツを製造する
本体組み立て ・製造されたパーツを組み立ててスマートフォンの形にしていく
配送 ・完成したスマートフォンを専門店または倉庫へ配送する
販売 ・スマートフォン専門店で販売
・通信販売の倉庫にて保管し、注文があり次第発送する
購入 ・購入した消費者の手元にスマートフォンが届く

このようにスマートフォンが私たち消費者の手元へ届くまでには、複数の部署や過程を経ます。ほかにも身の回りにある製品・サービスの多くは、このように連なった部署や過程をへるため、定期的にこれらのサプライチェーンを見直さなければ製品・サービスの供給に支障をきたすリスクが大きくなるのです。

サプライチェーンの抱える課題

サプライチェーンはさまざまな要素が絡み合っているため、以下のように複数の課題を抱えています。

・製品の在庫が適切に管理されておらず欠品や過剰在庫が発生する
・人的リソースが最適化されていない
・サプライチェーンの複雑化による全体把握の困難さ
・環境にやさしいサプライチェーンの構築が求められている
・災害や海外情勢などの緊急時におけるサプライチェーンの脆弱性

海外からの部品や人材の調達、製品を海外へ輸出するなど、サプライチェーンのグローバル化が急速に進んでいます。

それに伴い、サプライチェーンが複雑化し全体像の把握が困難になると、人的リソースの最適化や環境問題への対策の遅れ、自然災害や感染症などの非常事態が起きた際の迅速な対応ができないなど多くのリスクが発生します。

2015年に合意された「パリ協定」にて、日本は2030年までに温室効果ガスを2013年比で26%削減することに同意しました。それにより温室効果ガスの削減につながるサプライチェーンの構築が大きな課題となっています。

また2022年におけるロシア・ウクライナ情勢の影響で、部品の調達が困難に陥り製品が納品されない、燃料価格の高騰などの問題が多発しました。これらのことから、海外情勢に臨機応変に対応できるサプライチェーンの構築が求められています。

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サプライチェーンマネジメントが注目される理由

デジタル技術の進化により顧客のニーズや価値観が多様化し、企業内のみによるサプライチェーンの管理では追いつかなくなっています。

そんな背景から、他企業との連携などサプライチェーンに新しい変革をもたらす「サプライチェーンマネジメント」が注目されています。

これまで調達から配送までサプライチェーンのほとんどを企業内で管理していました。しかし欲しいときに欲しい量を手に入れたいという顧客の要望により、企業内だけでサプライチェーンを把握し管理することが難しくなりました。

そこでデジタル化を利用し自社を越えて他社とのつながりを重視したサプライチェーンの構築を目指すことで、顧客のニーズに対応しようとする動きが強まったのです。

サプライチェーンマネジメントとは?

製品・サービスを消費者の手元へ滞りなく届けるには、サプライチェーンの定期的な見直しや管理が必要です。

企業内および他企業と連携してサプライチェーンの見直しと改善を行い、製品・サービスの供給を最適化させることを「サプライチェーンマネジメント」といいます。

昨今では、サプライチェーンマネジメントに注目し、画期的な政策を打ち出す企業が増えています。2章で紹介した課題解決が急がれるため、サプライチェーンマネジメントは今や企業または製造業にとって早急に取り組むべき事項の1つといえるでしょう。

サプライチェーンマネジメントのメリット

サプライチェーンマネジメントを見直すことで製品・サービスの供給において以下のメリットがあります。

・在庫の適正管理
・人的リソースの有効活用
・リードタイムの短縮
・供給を最適化しコスト削減につなげる
・データ分析が簡単に行え、市場における需要変動に対し臨機応変に対応できる
・供給スピードや在庫管理が適切になり、キャッシュフローや収益の向上が期待できる

サプライチェーンにおけるあらゆる要素を自動化または最適化することで、徹底的にムダを省きます。すると部品や人的リソースを有効活用でき、リードタイムの短縮につながります。また管理用ソフトなどを用いてサプライチェーンにおけるデータを収集し分析すれば、サプライチェーンで発生している課題の把握や改善案の提案も容易になるでしょう。

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サプライチェーンマネジメントの先行事例

自社で検討すべきサプライチェーンマネジメントのお手本として、3つの企業が実際に取り組んでいる先行事例を紹介します。

花王

大手化学メーカー「花王株式会社」では、年間で約21億個の製品を国内へ販売しています。膨大な数の製品・サービスを消費者へ届けるには、いかにサプライチェーン全体を把握し管理するかが求められます。

そこで「花王株式会社」では、最適なサプライチェーンの構築を行うための開発部隊として「ロジスティクス部門」を立ち上げました。そこではサプライチェーン構築の方法論や運用技術が生み出されています。

そこで実際に採用された案が、欠品を出さないために通常なら配送の際に通過する卸店を通過させず、全国8万店へ企業自らが製品を届ける配送方法。1500種類を超える製品を国内にある21か所の物流拠点に集めて管理し、受注から24時間以内に納品する体制を構築しました。

その結果、欠品や在庫過多の大幅削減に成功しました。

出典:花王

日本アクセス

「株式会社 日本アクセス」では製品を卸売店へ配送する際に、欠品や過剰在庫が問題視されていました。

そこで基幹システム「Captain」を構築したのです。「Captain」は、荷主に代わり貨物運送の手配や物流施設への荷物の保管など物流業務を一括して請け負うシステムです。

例えば、顧客から必要なときに必要なだけ製品を仕入れたいとの要望があれば、物流業務を一括して引き受けた「株式会社 日本アクセス」が直接顧客へお届けします。また売り場に並べる商品提案から納品まで一括してお願いしたいとの要望にも対応できるようにしました。

これらの取り組みにより、顧客の必要なときに必要な部分だけお任せしたいというニーズに対応できるようになり、卸売店における負担の軽減にもつながりました。

出典:日本アクセス

トヨタ

「トヨタ自動車株式会社」は、「お客様にご注文いただいたクルマを、より早くお届けするために、最も短い時間で効率的に造る」を目標に生産管理システムの構築を目指していました。

「異常が発生したら機械がただちに停止して、不良品を造らない」と「各工程が必要なものだけを、流れるように停滞なく生産する」という2つの考え方を軸に構築をすすめ、以下のルールを定めました。

・お客様からクルマの注文を受けたら、なるべく早く自動車生産ラインの先頭に生産指示を出す。
・組立ラインは、どんな注文がきても造れるように、全ての種類の部品を少しずつ取りそろえておく。
・組立ラインは、使用した部品を使用した分だけ、その部品を造る工程(前工程)に引き取りに行く。
・前工程では、全ての種類の部品を少しずつ取りそろえておき、後工程に引き取られた分だけ生産する。

※引用:トヨタ生産方式

これらのルールにより、リードタイムの短縮および生産性が向上し、顧客ごとの要望に合わせた車両をできるだけ早く納車できるようになりました。

出典:トヨタ生産方式

DXとの関連性

近年、物流や製造業における「DX」がサプライチェーンマネジメントにおいて注目されています。DXとは、「デジタルトランスフォーメーション」の略で、急速に進化するデジタル技術を最適化させ、よりよい環境づくりに取り組むことをいいます。DXがサプライチェーンマネジメントに対しどのように関係してくるのか「物流DX」と「製造業DX」それぞれの観点から説明します。

物流DXとサプライチェーン

「物流DX」とは、サプライチェーンにデジタル技術を最適化させ、効率化やコスト削減などの改善に努める取り組みのことをいいます。

物流業界では人材不足と負担過多が大きな課題となっており、新型コロナウイルスの影響によりますます深刻化しています。そこで「物流DX」の取り組みを見直すことで、これらの課題を解決に導きます。

「国土交通省」によれば、具体的には以下2つを積極的に推進することをすすめています。

・物流分野における機械化
・物流のデジタル化

物流における機械化とは、実際に倉庫内作業の自動化や自動配送ロボの活用などの取り組みが検討または実行されています。物流のデジタル化においては、手続きの自動化や配車・在庫管理のデジタル化に取り組んでいる企業があります。

このように物流の機械化やデジタル化を進めることで、サプライチェーンに大きな変革をもたらすことが期待できます。

★物流DXについて詳しくはこちら

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製造業DXとサプライチェーン

「製造業DX」とは、製品・サービスを利用する消費者の生活をよりよくするための取り組みのことです。

サプライチェーンにおける製造から先の工程および製品・サービスを利用した消費者のデータをデジタル技術を用いて一括管理します。管理したデータを使用し、リードタイムの短縮や顧客分析に役立て、日々変動する顧客のニーズに対応させることが目的です。

「製造業DX」をすすめるには、以下4つのステップを踏むことが大切です。

・製造現場で実現させたいイメージを社内で共有する
・データを駆使して顧客の潜在ニーズを理解する
・採用した施策に取り組みつつ効果を検証し改善を繰り返す
・顧客満足度を向上させる

自社が抱える課題と、課題を解決した後のゴールイメージを社内で共有します。共有できれば課題解決のための戦略を立て、企業内でのコミュニケーションを円滑にすすめやすくなるでしょう。

またDX化をすすめることで、サプライチェーンにおけるデータを取得し管理しやすくなります。集めたデータを分析すれば顧客の潜在ニーズの把握や製造現場における課題点が把握しやすくなります。

把握した課題点を解決するためには、施策を打ち出す必要があります。施策は、実行して終わりにするのではなく都度、効果の検証と改善を繰り返すことが大切です。最終的には顧客満足度が向上し売上の向上につながります。

★製造業DXについて詳しくはこちら

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まとめ:サプライチェーンにDXを推進し人材・リソースの適切な配分を

サプライチェーンとサプライチェーンマネジメントの概要やメリット、先行事例について解説しました。物流および製造業界では長い間、人材不足や適切でない在庫管理に悩まされていました。

進歩したデジタル技術をサプライチェーンに最適化させることで、これまでの課題を解決に導き、企業内の連携や顧客満足度の向上につながることが期待できます。他社の事例を参考に、自社でもDX化をすすめてサプライチェーンへの最適化を図りましょう。

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デジタルトランスフォーメーションを検討している企業ご担当者様へ

モンスターラボでは、世界各国のスペシャリストがチームを組み、さまざまな業界・業種のデジタルサービス/プロダクト開発から、UX/UIデザイン、ブランド開発、グロースハックまで幅広く支援しています。

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記事の作成者・監修者

宇野 智之(株式会社モンスターラボ 常務執行役員)

宇野 智之(株式会社モンスターラボ 常務執行役員)

2003年に独立系大手システムインテグレーション企業に入社。エンジニアを経て、PMとして組み込み/MobileApp/Webシステム開発案件を担当。大規模案件のマネジメントやオフショア開発を複数経験する。海外エンジニアとの開発における課題を解決することで、日本のIT人材不足の解決に貢献したいと考え、2015年にモンスターラボへ入社。2015年に豪州Bond University MBA取得。入社後はPM、PMO業務および組織マネジメント業務を担当。 2019年より、執行役員 デジタルコンサルティング事業部副事業部長・開発統括。2021年より上級執行役員 デリバリー統括責任者。プロフィールはこちら