DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を用いて業務プロセスやビジネスモデルそのものを変革する取り組みです。
中小企業では人材不足や資金力の問題によりなかなかDXが進んでいない現状があります。市場の急速な変化によってビジネスの不確実性が高まる今、中小企業にこそDXが必要です。
本記事では中小企業にDXが必要な理由やメリットから、中小企業が抱える課題、効果的な進め方、先行企業の事例まで詳しく解説します。
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目次
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、企業がデータやデジタル技術を活用して旧来の基盤システムや企業風土から脱却し、業務フローの改善や新たなビジネスモデルの創出を実現することです。
市場での競争優位性を確立するために欠かせない取り組みであり、重要性が高まっています。
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2022年に経済産業省が中小企業のDX推進に活用できる手引き書として発表した『中堅・中小企業等向け「デジタルガバナンス・コード」実践の手引き』によると、DXは以下のように定義されています。
・デジタル技術やツールを導入すること自体ではなく、データやデジタル技術を使って、顧客目線で新たな価値を創出していくこと。
出典 : 中堅・中小企業等向け「デジタルガバナンス・コード」実践の手引き
・また、そのためにビジネスモデルや企業文化等の変革に取り組むことが重要となる。
つまりデジタル技術を使って「何ができるか」ではなく、「どのような価値を創出するか」を考え、そのために変革に取り組むことがDXの本質とされています。
DXと混同されがちなのが「IT化」という言葉です。IT化とは、情報技術(IT)を活用して業務プロセスなどを効率化することを指します。
IT化がアナログ作業をデジタル化して便利にするという限定的な意味であるのに対し、DXは社会や組織、ビジネスそのものなど、より広範囲に改革することを表します。そのため、IT化はDXの一つの手段に過ぎないという違いがあります。
★DXとIT化の違いについて詳しくはこちら
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では、中小企業においてDXが必要とされる理由からみていきましょう。
「2025年の崖」とは、経済産業省が2018年に発表した『DXレポート』において提示された言葉です。2025年には現在多くの日本企業が抱えるレガシーシステムの諸問題が顕在化し、大きな経済的損失になると予測されています。これはもちろん中小企業も例外ではなく、回避するには2025年までに複雑化・ブラックボックス化したレガシーシステムを刷新し、DXを実現しなければなりません。
もし2025年までにDXを実現できない場合、以下のようなシナリオが想定されます。
・最新技術や膨大なデータをビジネスに活用できず、デジタル競争から取り残されてしまう
・レガシーシステムを扱う技術を持つ人材の不足や保守コストの増大などにより、業務基盤の維持や継承が困難になる
・最新のセキュリティ対策が導入できず、サイバー攻撃や災害によるデータ流出・損失のリスクが高まる
(出典)経済産業省「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」
DXレポートでは2021年〜2025年のまさに今がシステム刷新集中期間(DXファースト期間)とされ、経営における最優先課題となっています。
人口減少による労働人材不足や、2020年以降の新型コロナウイルス感染拡大の影響により社会情勢は大きく変化しました。変化に対応しきれず、経営難に陥っている中小企業は少なくありません。
時代に即したニューノーマルな働き方を実現するには、テレワークやオンラインの活用だけでなく、ビジネスモデルそのものを見直す必要があります。つまりDXは企業が存続するために欠かせない取り組みと言えます。
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では、現在の中小企業におけるDXの取り組み状況についてみていきましょう。
IPAが2023年2月に発表した「DX白書2023」では、従業員規模別のDXへの取り組み状況の調査において以下のような結果となっています。
(出典)IPA「DX白書2023」
日本では従業員数が1,001人以上の大企業の94.8%がDXに取り組んでいると回答しているのに対し、100人以下の企業では39.6%と、従業員数が少ない中小企業ほどDXの取り組みの遅れが顕著であることがわかります。
また総務省が発表した『令和3年版情報通信白書』では、各企業の本社所在地を東京23区、政令指定都市、中核市及びその他の市町村に分けて調査しています。
(出典)総務省(2021)「デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究」
東京23区の大企業が最もDXへの取り組みを実施している割合が高く、その他の市町村の中小企業が最も低い結果となりました。
これらの結果から中小企業全体、特に大・中都市以外の地域に所在する中小企業が最もDXへの取り組みが遅れており、意欲も低いということがわかります。
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では、なぜ中小企業ではDXが進まないのでしょうか。理由として考えられる3つのポイントについて解説します。
DX人材とは、デジタル技術やデータ活用に精通し、DXの取り組みをリード・実行できる人材を指します。DX推進には、知見を持つ人材の働きが必要不可欠です。しかし需要に反してDX人材は不足しており、市場価値が高くなっています。特に中小企業でDX人材を獲得するのは容易ではありません。社内で育成するにも、ノウハウが少なく難しいのが現状です。
★DX人材について詳しくはこちら
DX推進には市場価値の高いDX人材の獲得やシステムの開発、ツールの導入などの費用を捻出する必要があります。しかし中小企業にとっては大きな予算を追加することが難しい場合が多く、大きな課題となっています。
そもそも企業内でDXへの理解が進んでいないケースも多くあります。特に経営層などの意思決定者がDXの重要性を理解しておらず、急務であることを認識していない場合は実現が困難です。DXを成功させるにはリーダーが課題解決のための明確なビジョンを持ち、社内体制を改革する必要があります。
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中小企業でDXが進むと、どのようなメリットがあるのでしょうか?具体的に解説していきます。
DXによってレガシーなシステムや企業風土が刷新されることにより、業務が効率化され生産性の向上が期待できます。従業員は今までより少ない時間と労力で多くのアウトプットができるため、現状課題とされる人手不足の解消にもつながるでしょう。またヒューマンエラーの削減も期待できるため、品質が向上し競争優位性を確保できます。
日々進化するIT技術やグローバル化などによって激化する市場競争に打ち勝つには、スピーディな現状把握や意思決定が必要です。DXは社内外のあらゆるデータを収集してビジネスへ活用するため、データに基づいた確実でスピーディな意思決定や施策立案が可能になります。
特にビッグデータ時代と言われる近年、「データ利活用」や「データドリブン経営」の重要性が注目されています。
★データドリブン経営について詳しくはこちら
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社会情勢の変化に伴い、ユーザーニーズは多様化し消費行動も変化しています。DXを実現することで、企業は意思決定や業務フローにおける俊敏性を得られます。つまり、変化を迅速にキャッチし、ニーズにマッチした新たな製品やサービス、顧客体験をスムーズに提供できるようになります。
また業務効率化やデータ活用によってビジネスの確実性が増すことで、中小企業でも新たな市場開拓を行いやすくなるでしょう。
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多くの中小企業がDX推進に苦戦しているのが現状ですが、政府も支援を強化しています。『中堅・中小企業向け デジタルガバナンス・コード実践の手引き』では、中堅・中小企業等版のDX実現に向けたプロセスとして、以下のように提示しています。
(出典):経済産業省「中堅・中小企業向け デジタルガバナンス・コード実践の手引き」
まずは企業のパーパス(存在意義)を明確にした上で、5年後・10年後にどのような企業を目指すのか、経営ビジョンを描き現状との差を埋めるための課題を整理して戦略を策定します。これに伴い、DX推進チームの設置や推進体制の整備を行います。
次に、一部社員ではなく全社を巻き込んだ変革準備を行います。個別業務等のデジタル化や、既存データ・公表データの活用などの取り掛かりやすいところから着手し、ノウハウの蓄積や人材確保・育成を進めながら徐々に取組を拡大していきます。
データ分析の前提となる業務プロセスの見直しなどを行い、社内のデータ分析・活用を本格的に推進します。また、新たな価値の提供を行うためのデータ活用やシステム構築にも着手します。
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顧客への新たな価値の提供を実現し、社内だけでなくサプライチェーン全体へDXを展開します。大胆な意思決定や投資を行い、DXを拡大させるフェーズです。中長期的に社会の変化や顧客のニーズに対応し、素早く変わり続けることができる企業を目指します。
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この4つのプロセスは大企業でも中堅・中小企業でも同様です。ただし中小企業の場合はプロセスごとに専門人材を内部で雇用するハードルが高いケースも多くあります。そのため経営者や従業員が一人で多くの役割を担う、もしくは外部人材の活用により人員を確保する必要があります。
さらにDXは短期間ですぐに効果が得られるものではありません。中長期的な取り組みが必要であるため、内部人材の育成や組織文化の醸成も求められます。
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課題の多い中小企業のDXですが、実現するにはどうしたら良いでしょうか。成功させるための4つのポイントについて具体的にみていきましょう。
いきなり大きな改革に着手するよりも、まずは身近で取り掛かりやすいところから始めましょう。個別業務のデジタル化や既存データの活用から着手し、試行錯誤を繰り返しノウハウを蓄積して徐々に拡大していきます。
ステップアップする中でツールの導入やサービスの利用だけにとどまらず、自社の要件に合わせたサービス開発も視野に入れるとより大きな効果が期待できます。
内製化とは、外部に委託していたサービス開発などの業務を自社のリソースで行うことです。DX推進において内製化することはコストの削減や自社へのノウハウの蓄積、またDX人材の育成にもつながります。
現状で社内に内製化や人材育成を行うリソースやノウハウが不足している場合は、開発支援や人材育成支援を行う協業パートナー企業を探すことも有効な手段です。
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DX推進によって新たなビジネスモデルを展開し、ユーザーへ提供する価値を最大化するにはサービス開発の適切な手法を活用することが重要です。
たとえば「デザイン思考」は、ユーザー視点で製品やサービスに対する課題やニーズを発見し、最適な解決方法を探索し創出する思考法です。ユーザーへ新たな価値提供を行うために有効な手法と考えられています。
またデザイン思考はユーザーからフィードバックを受けて修正を繰り返す仮説検証型です。そのため小さなサイクルで開発工程を繰り返す手法である「アジャイル開発」や、開発チームと運用チームが連携・協力し品質とスピードの向上を目指す「DevOps」の考え方と相性が良いとされています。
『DX白書2021』では、DXにおいてデザイン思考・アジャイル開発・DevOpsをあわせて導入することでより大きな価値を提供できると示しています。新たな開発手法を社内に取り入れることも、DXを成功させる重要なポイントと言えるでしょう。
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資金力が課題となっている中小企業にとって、補助金を活用してDXを実現することも有効な手段です。政府はDX関連の補助金を多数用意しており、これらを上手に活用することで比較的少ないコストでもDXを推進できます。
代表的なものとして「IT導入補助金」や「ものづくり補助金」などがあります。経営戦略やビジョンを明確にした上で、こうした制度への申請を検討することもおすすめです。
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モンスターラボではデジタル領域の知見を活かし、さまざまな企業のDX推進戦略をサポートしています。ここではDX推進を成功させた企業の事例を紹介します。
鹿児島銀行は、鹿児島県鹿児島市に本店を置く地方銀行。同行は地域の方々の利便性を向上させるキャッシュレス決済サービス『Payどん』の開発と同時に、行内にモバイルアプリの開発体制を構築したいという意向がありました。
モンスターラボは経験豊富なプロジェクトマネージャーとエンジニアをアサインし、鹿児島銀行の開発担当者に向けた勉強会を実施。習熟度と難易度を考慮したうえで、機能ごとに担当を分担して開発を進めました。
これにより同行は計画通りにアプリのローンチを成功させ、同時に開発ノウハウも獲得しました。内製化・人材育成を実現し、現在も鹿児島銀行が主体となって追加機能の開発を続けています。
アプリは地域のあらゆる年齢層の方々に利用され、DXによる地域貢献を実現しました。
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九州デジタルソリューションズ株式会社は、多様なデジタル技術で地域企業のDX推進をサポートする企業。モバイルアプリを作りたいという顧客のニーズが増えるなか、同社ではWebシステム開発のノウハウはあるものの、アプリ開発のノウハウがないという課題を抱えていました。
そこでアプリ開発と内製化に向けたOJTを目的として、協業パートナーにモンスターラボを選択。アジャイルの原則に則ったアプリ開発のスキルトランスファー型支援を受け、訪問者の入館予定を事前に登録するスマートフォン用アプリ『Toruto』と、エントランスに設置して訪問者が受付をするためのタブレット用アプリ『Kuruke』の開発に成功しました。
受付担当の方からも「業務が楽になった」と好評で、アプリ開発による業務効率化に貢献。社内のモバイルアプリ開発体制の構築にも成功しました。プロジェクトで得たノウハウはこれから地域企業のDX推進に役立てられる予定で、新たなビジネスモデルの創出にもつながっています。
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株式会社ユニメイトは、レンタルユニフォーム事業を主軸に各種ユニフォームの企画・生産・販売やクリーニングまでを手がけるユニフォーム企業のパイオニア。同社はサイズ申請時のヒューマンエラーによる返品・交換で発生する多大な労力とコスト、廃棄品による環境面への配慮を課題としていました。
モンスターラボはオリジナルのAIエンジン開発に着手し、画像から3Dモデルを作成し実際のサイズを導き出すマッチングロジックを創出。画像認識の精度を高め、正確なサイズ判断が可能な自動採寸アプリ『AI×R Tailor(エアテイラー)』の開発に成功しました。
課題であったサイズ申請ミスによる返品・交換が減少することにより業務効率化を実現。さらにお客様の手間が減ることによる顧客満足度の向上、環境への貢献まで実現し、DX推進に成功しています。
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DX推進はすべての企業にとって急務とされていますが、大企業に比べて中小企業では遅れている傾向があります。人材や資金力不足、社内理解などの課題を抱えている中小企業は少なくありません。
しかし技術やトレンドの移り変わりが早い現在の市場でビジネスを存続させるには、中小企業にこそDXが必要です。大企業と違いリソースが不足しがちな中小企業では、人材育成や内製化、外部人材の活用なども視野に入れ中長期的に取り組むことが求められます。
DXを実現できれば、業務効率化にとどまらず新たなビジネスモデル創出による事業拡大も期待できます。まずはしっかりと自社の現状と課題を把握し、DXに取り組んでみてはいかがでしょうか。
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モンスターラボは、約20年にわたるサービス・プロダクト開発実績から得られたデジタル領域の知見や技術力を活かし、デジタルプロダクト開発事業を展開しています。
先端テクノロジーに対応した高度なIT人材があらゆるプラットフォーム上での開発を支援します。アジャイル開発とDevOpsによる柔軟な開発進行や、国内外のリソースを活用したスケーラブルな開発体制の構築も可能です。 また、リリース後の保守運用や品質向上支援まで伴走可能です。
モンスターラボが提供するサポートの詳しい概要は以下リンクをご確認ください。