製造業DXとは? 課題と事例を踏まえてわかりやすく解説

製造業DXとは? 課題と事例を踏まえてわかりやすく解説

製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)とは、製品・サービスを利用する人々の生活をより良い方向に変化させることです。

データやデジタル技術を活用して、製造プロセスから出荷後のデータまで一元管理し、現場にフィードバックを実施。そのうえで生産性と安全性を高めながら、コストを抑えたものづくりを目指すことが肝心です。

本記事では、単なるデジタル化・IT化に止まらない製造業のDXについてわかりやすく解説します。

製造業DXとは?

製造業においてDXとは、ものづくりの現場でこれまで培ってきたノウハウを個人の経験値として蓄積していくだけでなく、デジタル化により共有しやすくすること。

それを「リードタイム短縮・生産性向上・品質向上」に生かし、日々変動する顧客や社会のニーズに合わせてビジネスモデルに変革をもたらすことが重要です。

そもそもDXとは/DXのビジネスにおける意味

ビジネスにおけるDXとは「データやデジタル技術を駆使して、ビジネスに関わるすべての事象に変革をもたらす」ことであり、経済産業省が発表したDXレポート2でも「素早く変革し続ける能力を身につけること、その中ではITシステムのみならず企業文化(固定概念)・風土を変革する」ことがDXの要と言及されています。

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なぜ製造業でDXが重視されているのか

コロナ禍の影響で、製造業は不確実性にさらされることを余儀なくされています。

経済産業省からも「新型コロナウイルス感染症の感染拡大以外にも、多くの外的要因が我が国製造業の事業判断に影響を及ぼすものと考えられており、かつ、これらは事前に発生や変化を想定することが難しい」(引用:ものづくり白書 2021)と言及されており、顧客や社会のニーズが日々変動していることが大きな要因です。

このような社会背景も後押しとなり、製造業におけるDX推進の重要性は高まりを見せています。

製造業DXにおける課題

DXは情報やシステムなどを扱う業界に限らず、製品を作り出す製造業においても必要とされていますが、推進する過程にはさまざまな障害があります。

経済産業省が発表したレポート『製造業を巡る動向と今後の課題』を紐解くと、製造業のDXにおける2つの主要な課題が浮き彫りになってきます。

課題① 人手不足が顕著で、属人的改善による部分最適が行われている

 

現場に過剰に依存をしている実態

現場に過剰に依存をしている実態(出典:経済産業省|p30

日本では、少子高齢化による人口減少が深刻化しています。働き手が少なくなることは、製造業のようなマンパワーが必要となる業界では無視できない課題です。また、製造業の現場においてある特定の個人に属してしまっているケースが多く見受けられます。

結果的に、人材確保がうまくいかず技術継承が困難な状況の改善が課題となっています。

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課題② 最適なIT投資ができていない

企業のIT投資の主な目的

企業のIT投資の主な目的(出典:経済産業省|p32

IT投資において、与えられた経営資源をより効率的に利用して利益を最大化する「オーディナリー・ケイパビリティ」(ものごとを正しく行う能力)を重視する企業と、環境の変化に合わせて企業を変革する「ダイナミック・ケイパビリティ」(正しいことを行う能力)を重視する企業に分けることができます。

ビジネスにおいて、「オーディナリー・ケイパビリティ」は重要ですが、それを重視する企業は旧来の基幹システムや保守が目的となってしまっており、対して、「ダイナミック・ケイパビリティ」を重視する企業は、ビジネス全体の変革や人材育成、業務効率化が目的となっています。

国内の企業では、前者の取り組みを行っているケースが少なくありません。しかし、市場のニーズも激しく変動する不確実性の高い世の中では、後者のような取り組みが急務となっております。

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製造業DXの進め方:4つのステップ

DX化の成功に大事なことは段階的に取り組んでいくことです。

収益モデルを変革して付加価値の高い製品を市場に出すことがDX推進の1つのゴールになりますが、付加価値創出や新たなビジネスモデルの構築に取り組むことを目的にしてしまうと、コストをかけたにもかかわらず効果を実感できないケースも少なくありません。

その大きな理由が、製造現場で活用するために収集・分析したデータが現実と一致していないこと。まずは精緻なデータ集取を可能にし、それに基づいた対策を現場とコミュニケーションを取りながら進めることが重要です。

最終的に目指すDX後の姿を実現するためのプロセスを、4つのステップにして解説します。

STEP① 現場を理解し、実現イメージを共有

製造業でDXを進める際に取り組むべき最初のステップは、実現したいイメージを社内全体で共有すること。

DXにより実現したいイメージを共有する際は、現場で抱えている課題から考えることが効果的です。具体的な課題の解決方法を考えることで、自社で取り組むべきDXの戦略が導き出せます。

また、DX推進は個々の部門が独立して取り組んでしまうと効率が悪くなる可能性があります。そのため、経営陣が中心となり各部門とコミュニケーションを取り、DX推進への取り組みをまとめる必要があります。

STEP② 人材の確保とデータ収集

DXで実現したいイメージを明確化したあとは、目的達成に必要な人材を確保し、データの収集・分析し、市場のニーズを把握しながら、ものづくりを進めていきます。品質の良さはもちろん重要ですが、「顧客が潜在的に必要としているものは、どういったことなのか」を理解することが大切です。

STEP③ 業務の効率化

データが収集できた段階で業務全体を客観的に見直し、非効率な部分が見つかった場合は自動化などの改善を行います。

DXの推進による業務効率化のポイントは、小さな事柄から始めることが重要。社内の業務全体を突然変更してしまうと、現場が混乱するリスクが高まります。また、失敗した際の負担も大きくなる傾向があります。

各部門でDXの取り組みを始めたあとは、効果検証を行うこと。施策に取り組むたびに効果を検証し、成果を確認したうえで次の業務効率化に移ると、DXをスムーズに推進できます。

STEP④ 顧客を育成する

製品を販売するだけではなく、顧客のニーズの変化に合わせたビジネスモデルの変革を継続的に行い、顧客満足度や更なる要求を確認する必要があります。

また、求められているサービスが次にどのようなに変化しているか察知し、次の価値変化に対応していくためにリアルデータを活用し、価値を生み出すプロセスを構築する必要があります。

製造業におけるDX事例

日本国内の製造業におけるDX推進で、ビジネスに変革をもたらした事例を紹介します。

音声などの非接触操作による玄関ドアの開閉を可能にした新規サービス開発に貢献/株式会社LIXIL

LIXILは、国内最大手の建材・設備機器メーカー。人々が夢見る豊かで快適な住まいの実現を目指し、先進的な技術と製品を開発・提供しているグローバル企業。

音声などの非接触操作による玄関ドアの開閉を可能にした新規サービス『DOAC(ドアック)』をリリース。

音声操作にも対応

DOACアプリは、世界初の音声操作が可能な玄関ドアの自動開閉システムとして、住宅設備機器業界や各種メディアを中心に大きな注目を集めています。

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最新技術を行使した故障診断フローを提供することでダウンタイムを低減/株式会社クボタ

建機・農機などの製品を軸に世界各国にトータルソリューションを提供する株式会社クボタ。

同社が2020年12月にリリースした『Kubota Diagnostics(クボタ ダイアグノスティックス)』は、3Dモデル・AR機能を活用した故障診断ができる革新的なサービスです。

実際にアプリを使用し診断

実際にアプリを使用し診断

本サービスの目的は、経験や知識に頼らない故障診断フローを提供することでダウンタイムによる建機の稼働率低下を抑えること。特に故障診断のニーズが高かった米国市場にスコープを定め、開発されました。

また、サービスエンジニアの教育や人員の確保といった面でも今後の貢献が期待されています。

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グローバルに連携した工場IoTプラットフォーム/ダイキン工業株式会社

世界最大クラスの空調機器メーカーダイキン工業が推進するDXのひとつが『工場Iotプラットフォーム』です。

工場内のIoT活用の全体像

工場内のIoT活用の全体像(出典:製造業DX取組事例集|p41

大阪・堺に新工場(デジタル・ファクトリー)を設立し、

①製造現場データの発掘 

②データの収集と統合 

③データの見える化と分析

④顧客への価値提供(工場運営の高度化と効率化の同時実現)

上記のサイクルを回すことを構想し、工場のすべての設備をネットワークでつなぎ、情報収集の標準化を進めるための情報基盤である『工場IoTプラットフォーム』を整備しました。

日本でベースモデルを確立させ、各海外拠点とも連携し、各拠点でアプリ開発を可能とするなどオープン化を進めることで、グロー バルでの利活用されています。

売上高を約2倍にした『プロセス参照モデル』/株式会社今野製作所

プロセス参照モデル」は、自社の業務プロセスや、エンジニアリングプロセスにおける社内連携体制について可視化したもの。

戦略を反映させたプロセス図

戦略を反映させたプロセス図(出典:製造業DX取組事例集|p4)

外部の専門家の援助を受け、業務プロセスの最適化に必要なシステムツールを小規模な開発で行い、業務改善に活用しています。

現場の課題を洗い出しスモールスタートで成功させた事例のひとつです。

まとめ:ノウハウのデジタル化が製造業DXを推進する

製造業におけるDXは、最終的な姿を目標に丁寧にスモールスタートしていくことが重要です。

顧客の消費行動が変化し、モノを所有することよりもそれに付随して得られる体験に価値を求めるようになりました。ただ製品を作って売るだけではなく、顧客が何を実現したいのか、そのために製品はどうあるべきなのかといった戦略的なマーケティングにDXを連動させる必要があると考えられます。

しかし、むやみに最終的な姿を目指してDXを進めても、社内の混乱を招くことになりかねません。製造業においては現場で培われる経験と勘を、現場が納得できる質を担保しながらデジタル化することが重要となります。

モンスターラボでは、デジタル領域の知見を活かし、企業のDX推進戦略をあらゆる面からサポートいたします。

開発プロジェクトでは、UXリサーチ・設計、UIデザイン、ブランド開発、デジタルプロダクト開発、グロールハックまでの全行程をワンストップで提供。

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記事の作成者・監修者

宇野 智之(株式会社モンスターラボ 上級執行役員 デリバリー統括責任者)

2003年に独立系大手システムインテグレーション企業に入社。エンジニアを経て、PMとして組み込み/MobileApp/Webシステム開発案件を担当。大規模案件のマネジメントやオフショア開発を複数経験する。海外エンジニアとの開発における課題を解決することで、日本のIT人材不足の解決に貢献したいと考え、2015年にモンスターラボへ入社。2015年に豪州Bond University MBA取得。入社後はPM、PMO業務および組織マネジメント業務を担当。 2019年より、執行役員 デジタルコンサルティング事業部副事業部長・開発統括。2021年より上級執行役員 デリバリー統括責任者。 プロフィールはこちら