「DX化」という表現は誤り? IT化・デジタル化とDXの違いを解説

「DX化」という表現は誤り? IT化・デジタル化とDXの違いを解説

DXとは、デジタル技術を用いて人々の生活をより豊かにすることをいいます。

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DXは稀に「DX化」と表現されることもあり、「IT化」や「デジタル化」と意味を混同して認識されがちです。DXはしばしば便利なワードのように用いられていますが、正しい意味を理解せずに使用していると、デジタルオーバーロード(過不足)や不必要なシステムの導入につながりかねません。

DXの意味を理解し、IT化やデジタル化と明確な区別をつけ、企業および顧客のためになるDX推進を図りましょう。

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「DX化」は正しい表現? そもそもDXとは

「DX」はデジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略で、デジタル技術を駆使し生活がより豊かになるよう変革を起こすことです。英語のTransには交差するという意味が含まれているため、「T」ではなく「X」が略語として用いられています。

★まとめ
・DXとは何か?DX化という言い方が正しいのかが理解できる
・DXとIT化とデジタル化の明確な違いがわかる
・DXを推進するためのポイントが理解できる

DXの意味

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、高速インターネット技術や人工知能などのデジタル技術を駆使し、生活および業務の質を高めることを指します。

DXは2004年にスウェーデンのウメオ大学「エリック・ストルターマン氏」らにより提唱されたのが始まりだといわれており、DXが上手に推進されている例には以下が挙げられます。

・通信販売会社が顧客の購買データを分析し、ターゲットにすべき顧客層の把握やニーズが把握できるようになった
・コンビニが「販売自転情報管理(POS)」を利用し、必要な商品を必要な数だけ仕入れ、食品ロスの削減につながった
・食料品メーカーが毎日の献立を提案するAI機能付きアプリを開発したことで、食材の売り上げアップにつながった

DXは契約書のクラウド化やハンコのデジタル化のように、業務の効率化のみを指しているのではありません。上記で述べた例のように、デジタル技術を活用して膨大なデータを収集し、新規事業への取り組みや、顧客満足度の向上につながる大きな変革を指しています。

DXに「化」はいらない?

ビジネスシーンにおいては「DX化」という表現がしばしば見受けられますが、DX化はDXに成功し変革した状態を表す造語です。これから取り組むのであれば「DX」と表現した方が適しています。そもそもDXのなかに、すでに「変革」という意味が含まれているため、あえて「化」をつける必要はありません

【DXとは何か?】
・DXはデジタルトランスフォーメーションの略語
・DXは高度なデジタル技術を用いて生活がよりよくなるよう変革を起こすこと
・DXを推進しなければ、他社に追い抜かれて大きな経済損失につながる可能性がある

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DXとIT化/デジタル化の違い

DXと意味が混同されることが多い用語が「IT化」と「デジタル化」です。それぞれの言葉の立ち位置としては、IT化とデジタル化はDXのための手段であるということです。

IT化とデジタル化それぞれの意味を知り、DXとの違いについて理解しましょう。

「IT化」とは?

デジタル化と同様に、DXと混同されることが多いのが「IT化」です。ちなみにITとはInformation Technologyの略であり、コンピューターとネットワーク技術の総称です。
インターネットやデジタルテクノロジーの進化に伴い、「旧来のアナログな作業をデジタル化して便利にする」意味合いでIT化という言葉が使われるようになりました。

DXが社会や組織・ビジネスの仕組みそのものを変革することなのに対し、IT化は既存の業務プロセスのまま業務効率化と生産性向上を図るという非常に限定的な言葉です。デジタル化と同様に、IT化もDX推進に向けた手段の1つでしかありません。

「デジタル化」とは?

デジタル化は「デジタイゼーション(Digitization)」および「デジタライゼーション(Digitalization)」を日本語に直訳した言葉です。デジタイゼーションとデジタライゼーションはどちらもDX推進の手段ですが、それぞれが持つ言葉の意味が異なります。

デジタイゼーションは、これまでアナログで行っていた一部の業務をデジタル化して効率化を図ることを指します。例えば書類を電子化しペーパーレスにする、対面で行っていた会議をWeb上で行うなどが挙げられます。

一方、デジタライゼーションは効率化を図るために、自社の業務フロー全体または他社などの外部要因を含めた広い範囲におけるデジタル化のことをいいます。例えば、部署全体のテレワークの推進や、AIを用いて収集したデータの活用などです。

つまり業務における一部分をデジタル化(デジタイゼーション)し、そのうえでさらに業務全体または他社を含むプロジェクト全体をデジタル化(デジタライゼーション)することで、業務や顧客の生活に変革をもたらしDX(デジタルトランスフォーメーション)の成功へ近づくという関係性があるのです。

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「IT化」「デジタル化」だけでは、DXを実現できない

IT化およびデジタル化は、あくまでDXを実現するための1つの手段であることを覚えておきましょう。

ペーパーレスや電子化を推進しても、対象の業務などのIT化やデジタル化を進めただけに過ぎません。「書類のやりとりがなくなったことで顧客がネット上から操作できる設定が増え、顧客満足度が向上した」「効率的にデータの収集が行えるようになったため、重視すべき顧客のターゲット層や売れ筋の商品が予想しやすくなった」といった結果まで視野を広げて初めてDXの成功に近づけるのです。

DX       企業および企業とつながりのある顧客全体に変革がもたらされること
デジタル化 業務の一部または部署全体など広域にわたる範囲で業務プロセスをデジタル化し効率化を図るが、必要があれば業務プロセスに変化を加えることもある
IT化 既存の業務プロセスのまま情報を整理し、活用しやすい状態にする

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DXの現状と課題

IPAが2023年2月に発表した「DX白書2023」によると、日本において「DXに取組んでいる」と回答した企業の割合は2021年度の55.8%に対して2022年度は69.3%であり、この一年で増加しています。

しかし企業規模が小さいほどDXに取り組む割合が低いという調査結果も出ています。中小企業を中心に、予算の確保やDXを推進するDX人材の不足が日本企業におけるDX推進の大きな課題です。

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DXと混同されやすいビジネス・IT用語

IT化やデジタル化のほかに、言葉が似ていることから意味を混同して使用されることが多いビジネス・IT用語について解説します。

BX

「BX」は、「ビジネス オブ エクスペリエンス」または「ビジネストランスフォーメーション」のどちらかの意味で使用されます。

「ビジネス オブ エクスペリエンス(Business of Experience)」は、直訳すると「ブランド体験創出ビジネス」という意味になり、企業全体が顧客を起点または中心としてビジネスを展開することを指します。

例えば顧客が口座開設から入金・振り込みまでをスマホのみで完結できる、ふくおかフィナンシャルグループ「みんなの銀行」や、ポイントを貯めれば自販機にスマートフォンをかざすだけで購入できる「Coke ON」などが挙げられます。
一方で「ビジネストランスフォーメーション」とは、ビジネスに変革をもたらすことを指し、例えばビジネスモデルの転換や新規事業の立ち上げなどが挙げられます。

どちらもDXを推進させるために必要な前提条件なため、BXについて理解を深めることは非常に重要です。

株式会社「モンスターラボ」では、BXにまつわる以下を目的とした「BX Camp」の資料を公開しております。

① 新規事業の創出や既存事業のイノベーションに関する課題の解決策
② サービスの存在意義や競合との差別化を明確化する方法
③ デジタル領域におけるブランド開発の考え方や手法、プロジェクトの進め方

新規事業の立ち上げに携わる方や既存サービスの変革を考えている方におすすめです。

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CX

CX」はカスタマーエクスペリエンスの略語で、顧客が企業の商品またはサービスを利用して企業に対して感じた価値を表しています。

商品またはサービスを利用してから利用後まで、顧客と企業との間には複数回タッチポイントがあります。ここでいう価値とは、複数回のタッチポイントを経て顧客が企業へ感じた評価やブランド力を指します。

CXは顧客満足度と顧客ロイヤルティの向上のために意識すべき重要な要素です。

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UX

UX」はユーザーエクスペリエンスの略語で、顧客が商品またはサービスを利用してから利用後までの過程における、顧客が得る体験すべてを指します。

CXと意味合いが似ていますが、違いはCXは企業とのタッチポイントにおける顧客から企業への評価であるのに対し、UXは顧客が商品またはサービスを利用してから利用後までの体験すべてを指します。

つまりCXを見直すことでUXの改善につながり、顧客満足度または顧客ロイヤルティの向上につながります。完成されたUXを意識することで企業が取り組むべき商品やサービスの方向性がわかるため、UXはDX推進のための道標であるといえるでしょう。

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DX推進のポイント

IT化やデジタル化にとどまらずDXの成功を実現させるには、経営層がDXを正しく認識しDX戦略を確立させることが大切です。さらにDXを全社的な取組として推進するためには、経営、IT 部門、事業部門など全社で危機意識や取組指針に対する共通認識を持つ必要があります。

経営層のコミット

初めに経営者自身がデジタルの意味を率先して理解し、自分は何のため誰のためにビジネスをしているかという覚悟とビジョンを提示する必要があるでしょう。提示したビジョンを実現するためには、デジタルの力でビジネス価値をできるだけ直接的に届ける「顧客志向」が重要です。

そして経営戦略をはじめ、IT戦略や事業戦略を含んだDX戦略を策定し、経営のコミットメントのもと変革を推進することが一般的です。

人材の育成

DX戦略を実現するための経営資源として、DX戦略を推進するリーダーに望まれる資質/デジタル時代の人材に何が必要かを学び直す(リスキリングを行う)必要があるでしょう。DX戦略の実現は経営層だけで実現できる内容ではないため、経営層以外のメンバーも問題を発見し自ら動けるようマインドを変えていく必要があります。

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データ利活用

顧客に関わるデータを整備すれば、顧客と直接つながるための現状の課題や改善点が見えやすくなります。それを実現させる方法としてIoTAIアジャイル開発などがあります。

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アジャイルマインドを持つ

アジャイルマインドとは、顧客価値を高めるために企画、実行、学習のサイクルを継続的かつスピード感をもって反復することです。

デジタル技術の進歩により変化し続ける顧客のニーズや市場に対応し続けるには、スピード感のあるアジャイルマインドを継続して持つことが大切です。技術が進歩するほどサイクルの間隔は短くなるため、アジャイルマインドを企業に取り入れる体制を早急に整える必要があるでしょう。

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AIの活用

ディープラーニングを中心としたAI技術の進展により、ビジネスの課題解決のためのAI活用が拡大しています。さらにChatGPTに代表される大規模言語モデルなど、最先端技術の実用性も期待されています。今後ますますAI活用の幅は広がり、大きな変革が期待できるでしょう。

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デザイン思考

デザイン思考とは、ユーザー視点に立ってサービスやプロダクトの本質的な課題・ニーズを発見し、ビジネス上の課題を解決するための思考法です。変化が激しい市場環境の中で柔軟で迅速な変革が求められるDXへの取り組みにおいて、有益な思考法とされています。

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DXを推進するメリット

DXの目的の一つに他社との差別化がありますが、それ以外にもDX推進には以下のようなメリットがあります。

働き方改革の実現

デジタル技術の活用により、ルーティン業務の自動化・効率化が可能になり従業員の負担を軽減できます。またリモートワークなどの柔軟な勤務体系を実現することにより、従業員のワークライフバランスの改善も期待されます。

業務効率化・生産性向上

DXを推進することで、データ活用による業務改善や自動化、情報共有の迅速化などが可能になります。これらにより業務を効率化することで、生産性の向上が期待できます。また、少子高齢化により深刻な問題となっている労働力不足も、デジタル技術の活用で改善することが可能です。

新規事業や新サービスのスムーズな開発

DXによってさまざまなデータを取得したり、業務改革によって顧客との新たな接点を創出することにより、今まで取得できなかったニーズを発見できるケースもあります。ニーズに応えることで顧客体験価値を向上させたり、新たな事業を創出したりすることもできるでしょう。

しかし、DXはあくまで「メリットがあるからやる」のではなく「必要性があるからやる」取り組みです。メリットのみに注目し無理に推進すれば、余分な出費がかさむだけでなく企業全体が混乱する可能性があります。

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DXの成功事例

では、実際にDX推進に成功した企業の事例を紹介します。

クボタ

建機・農機などの製品を軸に世界各国にトータルソリューションを提供する株式会社クボタ。同社は建機の修理対応において、各担当者の経験・スキルにばらつきがあることを課題としていました。

そこで、3Dモデル・ARを活用した故障診断アプリ『Kubota Diagnostics(クボタ ダイアグノスティックス)』を開発。スマートフォンをかざすことで建機内部の故障箇所や対象部品の特定をビジュアルで認識できる機能により、各サービスエンジニアの知識・経験に関係なく故障箇所を迅速に割り出すことに成功しました。

結果、アプリの開発により効率的な修理が行えるようになったことで、業務効率化と顧客満足度の向上に貢献。さらにサービスエンジニアの教育や人員の確保といった面でも今後の活用が期待されています。

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角上魚類ホールディングス

角上魚類ホールディングスは、鮮魚専門店「角上魚類」を展開する企業です。同社はこれまで市場での買い付け業務において、手書きの受注明細やセリ原票を使用しており、発注・買い付けミスや誤配送、紙を使用することによる事務作業の負荷が課題となっていました。

そこで、仕入れ業務をデジタル化した『セリ原票アプリ』を開発しました。アプリ開発でポイントとなったのが、市場特有の買い付け業務のフローを崩さずに効率化することです。現地調査をもとに現場担当者への導入負荷を最低限に抑えるUX/UIデザインを模索し、不具合やユーザビリティを損なう箇所を割り出しては改善を繰り返しました。

結果、現場担当者にも使い勝手の良さが評価され広く受け入れられると同時に、買い付け・配送業務の効率化、ペーパーレス化を実現。リアルタイムで情報が連携できるようになったことで、基幹システムへの二重入力などの業務負荷も大きく改善されました。

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ガーデンズバイザベイ

2012年にオープンしたシンガポールの観光施設Gardens by the Bayは、近未来をテーマにした大型の植物園です。

同施設の既存の公式アプリでは、情報や案内が不足し、コンテンツが整理されていませんでした。このような状況下で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的なパンデミックが到来。そこで、コロナ禍に対応した公式アプリのフルリニューアルを実施しました。

「現地に行きたくなるようなUXを生み出す」ことを目標に、ユーザータッチポイントごとにUX/UIの改善を実施。オンラインチケットシステムや予約整理券発行システム、ARを活用した道案内機能などを搭載し、利便性を高めました。また、予定表機能やGPS連動ゲームなどの搭載により来場への期待感や施設内でのユーザー体験を高め、UXの改善に成功しています。

こうした快適なデジタル体験の提供により課題解決を行い、同時に社会情勢の変化への対応や顧客満足度の向上につなげています。

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DXという言葉の正しい意味を理解しましょう

DXの意味、DXと意味が混同されやすいビジネス用語・IT用語について解説しました。

DXは、デジタル技術を駆使し人々の生活に変革をもたらすことです。言葉の意味を正しく認識することは、DXを推進する目的と目的達成に必要な目標、解決すべき課題を把握するうえで欠かせません。

DXを推進するには、まず経営層がDXの意味と推進する必要性を理解し、目的達成のためのビジョンと覚悟を従業員へ提示する必要があるでしょう。それから問題解決のために自分自身で動ける人材を育成し、アジャイルマインドを持ちデータの利活用が効率的に行える体制づくりが必要です。

経営層だけでなく企業全体でDXを意識した戦略・体制づくりを行いましょう。

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モンスターラボは、約20年にわたるサービス・プロダクト開発実績から得られたデジタル領域の知見や技術力を活かし、デジタルプロダクト開発事業を展開しています。

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記事の作成者・監修者

宇野 智之(株式会社モンスターラボ 常務執行役員)

宇野 智之(株式会社モンスターラボ 常務執行役員)

2003年に独立系大手システムインテグレーション企業に入社。エンジニアを経て、PMとして組み込み/MobileApp/Webシステム開発案件を担当。大規模案件のマネジメントやオフショア開発を複数経験する。海外エンジニアとの開発における課題を解決することで、日本のIT人材不足の解決に貢献したいと考え、2015年にモンスターラボへ入社。2015年に豪州Bond University MBA取得。入社後はPM、PMO業務および組織マネジメント業務を担当。 2019年より、執行役員 デジタルコンサルティング事業部副事業部長・開発統括。2021年より上級執行役員 デリバリー統括責任者。プロフィールはこちら