ビジネスモデルキャンバスとは? 事例をもとに書き方を解説<テンプレート付き>

ビジネスモデルキャンバスとは? 事例をもとに書き方を解説<テンプレート付き>

ビジネスモデルキャンバスはビジネスの構造を可視化したフレームワーク。

自社のビジネスモデルの優位性や競合に劣る要素、弱点などを洗い出し、より強固なビジネスモデルを創出するために活用されます。

本記事では、ビジネスモデルキャンバスの基礎知識や書き方、活用事例をわかりやすく紹介しています。テンプレートもご用意していますので、ぜひダウンロードしてご活用ください。

➡︎ビジネスモデルキャンバステンプレートのダウンロードはこちら

★あなたの組織のデータ利活用レベルは?簡単診断はこちら

ビジネスモデルキャンバスとは

ビジネスモデルキャンバスとは、ビジネスの構造を整理して設計図のような状態にするフレームワーク。アレックス・オスターワルダーとイヴ・ピニュールによって開発されました。

複雑な要素が多いビジネスの構造をわかりやすく可視化することができるため、ビジネスモデルを表現する際のツールとしてさまざまな企業や組織で活用されています。

ビジネスモデルキャンバスが用いられるケースとしてよくあるのが、既存ビジネスの改善を行う場合。フレームワークを作成して現状のビジネスモデルの優位性や課題を洗い出し、競合に勝てるビジネスへと昇華させていくことができます。

また、新規事業を創出する際に用いられるケースもあります。ビジネスモデルキャンバスを活用して説得力のあるビジネスモデルを表記することで、社内外のステークホルダーから理解を得るのにも役立ちます。

➡︎ビジネスモデルキャンバステンプレートのダウンロードはこちら

ビジネスモデルキャンバスを作るメリット

ビジネスモデルキャンバスを活用することで得られる主なメリットには以下のようなものがあります。

ビジネスの全体像を把握できる

ビジネスには多くの要素が絡み合うため、複雑な構造になりがちです。ビジネスモデルキャンバスを作ることで、複雑な構成要素を明確に可視化できるようになり、ビジネスの全体像を把握しやすくなります

コミュニケーションをスムーズにする

チーム内でビジネスモデルキャンバスを共有することにより、ビジネスモデルについて共通のイメージを持つことができます。認識のズレを防ぐことで、議論や提案をスムーズに行いやすくなるでしょう。

競合他社の分析に役立つ

ビジネスモデルキャンバスは自社だけでなく、他社の分析にも効果的です。競合他社と自社のビジネスモデルキャンバスを作り、違いや特徴を比較することで自社の商品開発やビジネスモデルの改善に役立てることができます。

➡︎ビジネスモデルキャンバステンプレートのダウンロードはこちら

ビジネスモデルキャンバスの構成要素と書き方のコツ

ビジネスモデルキャンバスは9つの要素から構成されています。

ビジネスモデルキャンバステンプレート

ビジネスモデルキャンバスのテンプレート

ビジネスモデルキャンバスの作成において重要なのは、まず「顧客セグメント」や「価値提案」を明確にすることです。これらが確定することで、ほかの要素を検討しやすくなります。

今回は一人暮らし向けの栄養やカロリーに配慮した食事配達サービスを例に挙げ、それぞれの要素の書き方の手順について具体例を交じえつつ解説します。

テンプレートのダウンロードはこちら

① 顧客セグメント

価値を創造し届けたい人は誰か、ターゲット記入します。メインのターゲットだけでなく、多様でニッチなターゲットまで具体的に書き出しましょう。

例:

仕事が忙しく自炊をする時間がない、あるいは自炊を面倒だと思っている人
フルタイム勤務をしている一人暮らしの20~30代の男女

② バリュープロポジション(価値提案)

顧客にどんな価値を届けているのか、顧客の抱えるどのような問題を解決しているかを書き出します。

この際、以下のリストを参考にして顧客にとっての価値を確認しましょう。

  • 新規性
  • 効率性
  • 最適性
  • 設計
  • ブランドやステータス
  • コスト
  • リスク低減
  • 簡単さ、使いやすさ

例:

自炊のために必要な手間や時間を省ける
決済が簡単
栄養面が配慮されている(健康診断の結果に合わせたメニューが届く)

③キーリソース

価値を顧客に提供し続けるために必ず必要とされるリソースを書き出します。ビジネスのステークホルダーとなるすべての要素が含まれます。

例:

食品製造担当者、サービスの運営担当者、インフラ(食品加工工場、オフィス)、運営ノウハウ、ブランド、管理栄養士、マーケター

④キーアクティビティ

価値提供のために組織が実行しなければならない重要なアクションを書き出します。

例:

美味しくて栄養豊富かつ低カロリーなメニューの開発
マーケティング(新規ユーザー、既存ユーザー)
食品の製造

⑤主なパートナー

事業の外部リソースと活動を担うサプライヤーを書き出します。記入する際は以下のリスト内容を確認しましょう。

  • リソースの中でパートナーがいないか?
  • アクティビティの中で必要とされているパートナーは?
  • パートナーシップによって実現されていること(最適化、経済効率、リスク低減など)は?

例:

運送業者、食材販売業者、梱包材の販売業者etc…

⑥ 顧客との関係

顧客が確立・維持することを期待している関係性を書き出します。以下のリスト内容を確認しましょう。

  • 書き出された関係性が確立できていると言えるか
  • 顧客がコストを負担するか

例:

ユーザーが配達するタイミング・量・種類を自由に決めて食事が自宅に届く
健康面に配慮した栄養価の高い食事が食べられる
ユーザーからのフィードバックを反映した改善が期待できる

⑦チャネル

顧客に事業の価値を届けるために必要なチャネル。以下のリスト内容を確認しましょう。

  • 顧客はどうやって 自社のサービスにリーチするか?
  • サービス利用後にどのようなチャネルでユーザーとつながるか?
  • 顧客に自社のサービスの評価方法を与えているか?
  • 決済は簡易か?
  • 顧客対応はスピーディーか?
  • アフターフォローは?
  • コストも考慮しどのアプローチがベストか?

例:

<サービス利用前>Webサイト、SNS
<サービス利用後>アプリ etc…

⑧ コスト構造

ビジネスモデルの運用で発生するすべてのコストを書き出します。以下のリスト内容を確認しましょう。

  • おおよその事業のインフラコスト、マーケティングコスト、運用コスト
  • おおよその事業の人件費、経費
  • キーリソースやキーアクティビティで大きなコストになっているものは?
  • コスト優先か、価値提供優先か?

例:

インフラコスト:〇〇千円/年
人件費(食品製造、サービス運):〇〇千円/年
運送費用:〇〇千円/年
マーケティング、PR費用:〇〇千円/年

⑨ 収益の流れ

顧客に提供する価値が受け入れられた結果生まれるもの。収益ポイントを書き出し、流れがわかるように書くのがポイントです。以下のリスト内容を確認しましょう。

  • どんな価値のためにお金を払ってくれるのだろうか?
  • どんな支払い形式でお金を払ってくれているか?

例:

1食につき600円均一。送料一律1,000円。注文一口ごとにユーザーに請求。
オンライン決済に対応、口座引き落とし可能、決済手数料無料

テンプレートのダウンロードはこちら

ビジネスモデルキャンバス作成のコツ

次に、ビジネスモデルキャンバスをより効果的なものにするための書き方のコツについて解説します。

シンプルにまとめる

各要素はなるべくシンプルにまとめるように意識します。あまりに複雑すぎると、せっかく完成したビジネスモデルキャンバスを社内へ共有しても、理解を得るのに時間がかかってしまうからです。

初めから完全なものを目指さない

ビジネスモデルキャンバスを作成する際は、初めからビジネス全体を網羅した完全なものを作る必要はありません。書けない項目があっても先へ進み、要素の繋がりを確認しながらブラッシュアップしていきます。ビジネスの価値をどのように提供していくかを少しずつ整理していくことが大切です。

各要素を検証する

ビジネスモデルキャンバスを作成した後は、実際に各要素を検証してみることが重要です。特に「顧客セグメント」や「価値提案」は、実際に顧客へインタビューやアンケートを行い、ギャップが生じないように修正していく必要があります。

定期的に更新する

ビジネス環境は常に変化しているため、ビジネスモデルキャンバスを一度作成しても、最新の状況に合わせて定期的に更新する必要があります。更新のタイミングとしては、新製品の開発や収益の変化、競合他社・マーケットに変化があった時などが多いです。

➡︎ビジネスモデルキャンバステンプレートのダウンロードはこちら

リーンキャンバスとの違い

リーンキャンバスとは、ビジネスモデルを9つの要素に分けて考えるフレームワークで、新規ビジネスを企画する際に最適な手法とされています。

簡潔にサービスの本質的価値をまとめることができ、新規事業を始める際に周囲の理解を得るのに役立てられています。

ビジネスモデルキャンバスとよく似ていますが、リーンキャンバスはあくまで新規ビジネスにおける仮説検証を実施するためのもの。つまり、スタートアップに特化したフレームワークといえます。

★リーンキャンバスの解説はこちら

➡︎【無料】リーンキャンバステンプレートのダウンロード

バリュープロポジションキャンバスとの併用

バリュープロポジションキャンバスとは、「顧客のニーズが高く、かつ競合他社が提供できていない独自の価値」を明らかにするフレームワーク。

ビジネスモデルキャンバスの要素である①顧客セグメントと②バリュープロポジション(価値提案)はバリュープロポジションキャンバスで埋める「顧客プロフィール」「バリューマップ」なので、そのままビジネスモデルキャンバスの中に組み込むことができます。

★バリュープロポジションの解説はこちら

➡︎【無料】バリュープロポジションキャンバステンプレートのダウンロード

企業のビジネスモデルキャンバス事例

最後に、世界的に有名な企業を例として、ビジネスモデルキャンバスの9つの要素を考えてみます。ぜひ自社のビジネスモデルを分析する際の参考にしてください。

Netflix

アメリカに本社を置くNetflixは、インターネット上で映画やドラマなどが見放題になる動画配信サービスを提供する企業です。

  1. 1. 顧客セグメント:映画やドラマに関心がある人、オンラインストリーミングを利用したい人
  2. 2. バリュープロポジション:コンテンツをいつでもどこでも視聴できる、オリジナルコンテンツの提供、視聴履歴に基づくレコメンデーション
  3. 3. キーリソース:既存コンテンツの配信権、オリジナルコンテンツ、Webサイト、アプリケーション、ITインフラ
  4. 4. キーアクティビティ:映画・ドラマのオンラインストリーミング配信、オリジナルコンテンツの制作
  5. 5. 主なパートナー:コンテンツ制作会社、インターネットプロパイダ、デバイスメーカー
  6. 6. 顧客との関係:オンラインサポート、ユーザーフィードバックに基づく改善
  7. 7. チャネル:Webサイト、アプリケーション、SNS、口コミ
  8. 8. コスト構造:コンテンツ取得・制作費、システム運用費
  9. 9. 収益の流れ:契約者から受け取る月額料金

Uber

Uberは、ユーザー同士のライドシェアを仲介するサービスを提供する企業です。ユーザーとドライバーをマッチングすることで、ユーザーには手頃な価格での移動、ドライバーには柔軟な働き方を提供しています。

  1. 1. 顧客セグメント:車を所有しているドライバー、車を所有していない人、旅行者
  2. 2. バリュープロポジション:ドライバーへの柔軟な働き方の提供、ユーザーへのタクシーよりも手頃な料金・キャッシュレス・少ない待ち時間での移動の提供
  3. 3. キーリソース:オンラインプラットフォーム、ドライバー
  4. 4. キーアクティビティ:プラットフォーム・マッチングアルゴリズムの開発、セキュリティの確保、ドライバー選定、支払い処理
  5. 5. 主なパートナー:ドライバー、支払い処理システムベンダー、スケール事業(Uber Eatsなど)
  6. 6. 顧客との関係:カスタマーサポート、レビューによるシステム・機能改善
  7. 7. チャネル:Webサイト、アプリケーション、SNS、口コミ
  8. 8. コスト構造:ドライバーへの支払い、プラットフォーム運用費
  9. 9. 収益の流れ:サービス利用手数料、広告

まとめ:ビジネスの成功に欠かせないフレームワーク

ビジネスモデルキャンバスは、現状のビジネスの構造を洗い出し、より強固なモデルへと導くフレームワーク。リーンキャンバスやバリュープロポジションキャンバスと併用することもできるので、自社のビジネスのフェーズや目的に合わせて使い分けましょう。
➡︎ビジネスモデルキャンバステンプレートのダウンロードはこちら

企業の事業開発をビジネスの上流からワンストップで支援

モンスターラボでは、2200件を超えるサービス開発のノウハウを活かし、UXデザイナーと開発経験豊富なエンジニアが1つのチームとなり、ビジネスの上流からデザイン、開発までワンストップで対応いたします。

モンスターラボが提供するサポートの詳しい概要は、下記のボタンから資料をダウンロードしてください。
DX支援サービス紹介資料ダウンロード

直近のイベント

記事の作成者・監修者

川北奈津 (株式会社モンスターラボ デザイングループ 副グループ長 UXディレクター)

川北奈津 (株式会社モンスターラボ デザイングループ 副グループ長 UXディレクター)

メディアアート作品制作・国内外での展示活動、広告制作会社勤務を経て、2008年、A.C.O.にプランナーとして入社、アプリやサービスの情報設計を多く手掛ける。UXデザインと情報設計を強化するため専門チーム、UX/IA部を2017年1月に立ち上げ。サービスの開発やブランド開発プロジェクトのUXデザインプロセスのリードを担当している。静岡大学情報学部卒。情報科学芸術大学院大学(IAMAS) メディア表現研究科修士課程修了。