近年、さまざまな業界においてDX推進が課題とされるなか、不動産業界においてもデジタルを活用した業務効率化やコスト削減、消費者のニーズの変化に合わせた柔軟なサービスの開発が急務となっています。
不動産業界におけるDXの課題として、旧来のレガシーな商習慣から脱却しづらいといった業界特有の問題が指摘されてきましたが、近年はコロナ禍を契機に急速にDX推進の勢いが増しています。
本記事では、不動産業界が抱える課題、DX推進の重要性やメリットを解説。企業の成功事例や不動産テックとの関連性も合わせて紹介します。
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目次
不動産業界におけるDXとは、デジタル技術を活用することで不動産取引全般における業務フローの改善やニーズに合わせたサービス提供を行うだけでなく、ビジネスモデルそのものを変革する取り組みです。
そもそもDX(Digital Transformation)とは、デジタル技術を浸透させて人々の生活をより良いものに変革させていくことです。ビジネスにおいてもDXは急務であり、経済産業省を中心にDXを推進する動きが活発になっています。
不動産業界においても例外ではなく、アナログ業務を効率化させ、時代によって変化する顧客のニーズに応えるためのDXが求められています。
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不動産DXとよく似た言葉に、「不動産テック」という言葉があります。
一般社団法人 不動産テック協会は不動産テックを以下のように定義しています。
◆不動産テックの定義
不動産テックとは、不動産×テクノロジーの略であり、テクノロジーの力によって、不動産に関わる業界課題や従来の商習慣を変えようとする価値や仕組みのこと。
参照:一般社団法人 不動産テック協会
不動産テックの対象とする領域は、単なる業務効率化や人手不足の解消だけでなく、テクノロジーを活用した新たな顧客体験や収益モデル、プラットフォームの創出と多岐に渡ります。
つまり、ひとくちに不動産テックと言ってもサービスは様々な業種・業界に渡ります。不動産テック協会がまとめた「不動産テックカオスマップ」では12のカテゴリーごとに各サービスを紹介しています。
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重要なのは、不動産DXや不動産テックは単なるデジタル化や業務効率化だけを目的としたものではないということ。
DXを成功させ、市場において競合優位性を得るためには、テクノロジーを活用して変化し続けるユーザーニーズに合った新しいビジネスを開発し続けていくことが大切です。
IPAが2023年2月に発表した「DX白書2023」によると、業種別のDX取組状況の調査において、不動産業・物品賃貸業で「DXを実施している」と回答した企業は23.3%でした。
まだ全体的な割合は少ないものの、「2018年から実施している」という回答が4.2%なのに対し、「2019年から実施している」という回答は5.2%であることから、年々DXに取り組む企業が増加していることがわかります。
具体的には不動産DXに取り組む企業の事例として、以下のようなものが挙げられています。
・レンタルスペース管理業務の無人化
・不動産取引プロセスのオンライン化
・入居者専用アプリを活用したスマートマンション
・売主と買取業者をつなぐ不動産仲介オークション・サービス展開
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次に、不動産業界の課題について整理します。
これまで、不動産業界のDXを阻む要因として、業界特有のアナログな業務フローからの脱却が困難である点が指摘されてきました。
実際に、不動産の売買、賃貸物件の契約業務の現場において、紙の書類や資料、電話、FAXなどが頻繁に用いられていることや、物件の内見や来客対応などの対面での業務はデジタル化しづらいことから、現場にアナログかつレガシーな商習慣が根付いているケースが多く見られます。
しかし、コロナ禍を経てテレワークが急速に浸透し、不動産業界においてもDXが推進されつつあります。
令和2年に発表された総務省の通信利用動向調査報告書(企業編)の調査では、令和元年のテレワーク導入率が25.4%であったのに対し、68.1%まで上昇したことが明らかになっています。
従来の不動産探しは、不動産屋を何件も回って物件を吟味するのが一般的でしたが、近年はインターネットで情報収集するのが主流に。
スムーズな物件の情報収集だけでなく、場所や対面・非対面にとらわれない内見及び手続きができるサービスを求められるようになるなど、ユーザーニーズは時代に合わせて変化し続けています。
不動産業界のDXを実現するには、デジタルを活用して変化し続けるユーザーニーズに柔軟に対応できるサービスを開発することが重要です。
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不動産DXを推進することにより、どのようなメリットが得られるのでしょうか。それぞれ詳しく解説します。
アナログ作業をデジタルに移行することにより、業務効率化を図ることが可能です。
例えば、ツールの導入により、手作業の自動化やヒューマンエラーの防止、人件費や工数などのコスト削減にもつながります。
また、情報をデジタルで管理することにより、部署間、社内外での情報共有も容易になります。
デジタルを活用することで従来の手作業や単純作業にかかっていた工数が削減できるため、長時間労働や人手不足などの問題解決にも効果的です。
また、高度なスキルが求められる物件査定などの業務も、ツールを導入することで若手社員でも対応が可能になり、経験値による業務の偏りを減らすことができます。
ユーザーニーズの変化に合わせたサービス開発や改善を繰り返すことは、新規顧客の獲得や顧客満足度の向上につながります。
その際、インターネットでの物件探しが主流になりつつある時代において、AIやビッグデータなどのデジタル技術の活用は必須。
また、新規サービス開発を成功させるには、競合が提供できていない新たな価値を持つビジネスをスピーディーに開発していくことが重要です。
顧客体験とスピード感を重視した注目の開発手法「アジャイル開発」とは?
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では、不動産業界の課題を克服しながらDXを進めるにはどうしたら良いでしょうか。
DXを進めるには、デジタル技術や業務内容に精通しつつ、DXの取り組みをリード・実行するDX人材が欠かせません。しかし、DX人材は日本全体で不足傾向にあるため、外部から確保するのは難しいケースもあるでしょう。この場合、リスキリングによる社内での人材育成も検討すべきです。
また、人材育成支援や内製化支援を行う外部パートナー企業へ依頼するのも有効な手段となります。
★DX人材について詳しくはこちら
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DX人材を揃えたとしても、組織体制が整っていなければDXは実現しません。DXは各部門で実施するものではなく、組織体制全体を変革していく取り組みです。
特に経営層がDXの重要性について深く理解し、積極的に関わってリードしていくことにより組織的なDX推進体制を作ることができます。
DXを実現するには、あらかじめ明確な目的やKPIを設定しておく必要があります。ただなんとなく着手してしまうと、DXの導入自体が目的になってしまいビジネスの結果に結びつかない可能性があります。
まずはDXの推進によって何を実現したいのか、また成否を判断するためのKPI(重要業績評価指標)を具体的に設定することが重要です。
DXが注目されていることもあり、不動産業界向けの業務改善ツールなどもたくさん開発されています。しかし、これらのツールを導入しただけで自社の課題が解決されるわけではありません。ツールの導入自体が目的になってしまわないよう、自社に最適なツールを選択する必要があります。
また、より細かな自社の要件に合わせて、新たなサービスを開発することも有効な手段です。特に開発工程を機能単位の小さいサイクルで繰り返す開発手法であるアジャイル開発は、ニーズに合わせて細かな仕様変更を行いやすく、DXと好相性とされています。
★アジャイル開発について詳しくはこちら
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次に、不動産DXに有効とされる具体的なソリューションについて紹介します。
2022年5月に施行された改正宅地建物取引業法(宅建業法)により、不動産の取引時に必要となる書類の電子化が認められました。契約書類を電子化してすべてオンラインで完結するシステムを導入することで、訪問する労力や時間、紙の書類を管理する手間などを削減できます。
AI査定とは、AIが不動産価格を自動的に計算するシステムのことです。査定に必要なデータを入力すると、AIが学習した膨大な物件取引情報と照らし合わせ、短時間で査定金額を算出します。
これまで数日程度かかっていた不動産査定をAIによって大きく効率化できることは、企業側にも顧客側にも大きなメリットです。
★AIについて詳しくはこちら
VR(Virtual Reality)とは、「仮想現実」とも呼ばれるデジタル世界に没入したような体験ができる技術のことです。このVRを活用して、現地へ足を運ぶことなく仮想空間内で内覧ができるオンライン内覧を実施する企業が増えています。
顧客は手間なくリアルなイメージを持つことができるため、担当者も提案がしやすくなり成約率の向上につながることが期待できます。
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自社のWebサイトなどにチャットボットを導入することにより、24時間365日顧客からの問い合わせに対応できます。不動産業界では顧客が膨大な物件情報の中から好みの物件を探すため、スムーズなカスタマーサポートができる環境を整えておくことが重要です。
最近ではChatGPTをはじめとする対話型AIの発展も目覚ましく、今後より幅広い活用が期待されます。
★ChatGPTについて詳しくはこちら
データ利活用とは、経営課題の解決や新たな価値の創出のためにデータを用いてアプローチすることです。近年あらゆる業界で注目を集め、不動産業界でも欠かせないものとなっています。
たとえばビッグデータの分析による不動産投資の将来予測や、顧客データを活用した営業効率化などが可能です。従来の経験や勘に基づく判断よりも、データドリブンな意思決定が重視されています。
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大手ゼネコンの長谷工コーポレーションは、顧客の新築分譲マンション探しをサポートするための新サービス『マンションFit』を提供。
同社のビジネス戦略上の課題は、「誰に相談して、どのように準備したらいいのかわからない」「住まいの希望条件を尋ねられてもイメージが湧かない」といったマンション購入検討の初期段階にある潜在顧客への新たなアプローチ方法を模索することでした。
LINE上で『マンションFit』の公式アカウントを「友だち」追加して簡単な質問に回答するだけで、購入者データをもとにしたおすすめ物件情報が見られるほか、営業担当者のつかない非対面のモデルルーム見学予約を実現しています。
★事例について詳しくはこちら
三井不動産は、自社のDX推進事例をまとめた「2020 DX白書」を公開するなど、不動産業のイノベーションをリードする企業。
法人向け多拠点型シェアオフィス「ワークスタイリング」の提供やAIカメラ「OPTiM AI Camera」を活用したオンライン内見の導入など、業務効率化や働き方改革だけでなく、ユーザーニーズに合わせた新サービスを開発しています。
野村不動産も、DX推進において自社の業務効率化と新規サービス開発によるユーザーニーズの対応を実施しています。
契約書類手続きの電子化ツール「Musubell(ムスベル)」の導入により、契約手続きにかかる業務コストを削減。また、住宅ローンの業務専用のアプリ「野村の仲介+(プラス)いえーるダンドリ」により顧客の受託ローン業務の効率化に成功しました。
GA technol0giesは、経済産業省と東京証券取引所が実施する「DX調査2020」においてDX銘柄に認定された企業。
AIを活用した中古不動産の総合プラットフォームだけでなく、不動産オーナーの資産管理アプリを提供することでユーザーの利便性を高め、不動産取引プロセスのデジタル化を推進した業務改善にもいち早く取り組むなど、不動産業界のDXを牽引しています。
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不動産業界の現状やDX推進の重要性について解説してきました。
DX成功のポイントは、業務効率化や働き方改善だけにとどまらない、時代の変化に合わせた新規サービスを開発すること。
ユーザーニーズを敏感にキャッチし、競合の提供できていない新たな価値を生み出すビジネスをスピーディに生み出すことが重要です。
不動産DXの鍵を握る不動産テックについては、解説資料をご用意していますので、下記よりダウンロード可能です。
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モンスターラボは、約20年にわたるサービス・プロダクト開発実績から得られたデジタル領域の知見や技術力を活かし、デジタルプロダクト開発事業を展開しています。
先端テクノロジーに対応した高度なIT人材があらゆるプラットフォーム上での開発を支援します。アジャイル開発とDevOpsによる柔軟な開発進行や、国内外のリソースを活用したスケーラブルな開発体制の構築も可能です。 また、リリース後の保守運用や品質向上支援まで伴走可能です。
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