小売業界のDXとは?課題や先行事例を解説

小売業界のDXとは?課題や先行事例を解説

小売業DXとは小売に関わる業務プロセスやサービスをAIやIoTなどを駆使し、新たな仕組みを実現させることです。小売業は現在、店舗とECサイトに分断され、顧客にシームレスな顧客体験を提供できなくなってきています。

関連商品をECサイトで訴求したり、ECサイトで近隣店舗の在庫を共有させたりするためには小売業DXの推進が欠かせません。当記事では、小売業の現状と課題や小売業DXでできること、OMO(Online Merges with Offlineの略でオンラインとオフラインの統合の意味)で解決できる課題について解説します。

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小売業界の現状と課題

まずは小売業界の現状と課題について解説します。

①既存システムの老朽化

古いシステムを使用している企業にありがちなのが「既存システムの老朽化」です。老朽化であれば新しいシステムと入れ替えるだけで解決を図れます。

本質的な問題は、社内の誰も仕組みを理解していない古いシステムが存在し、システムが不透明化している場合です。このような状態だと、新しいシステムを導入してもデータ共有に莫大なコストと時間がかかります。

日本企業はITに関する予算を既存システムの維持に割きがちです。そのため、小売業DXを推進するには投資と捉え、既存システムを刷新していかなければなりません。

②人材不足

株式会社帝国データバンクが公表した「人手不足に対する企業の動向調査(2022年4月)」の非正社員の人手不足割合は次のとおりです。

・各種商品小売:約52%
・飲食料小売:約48%
・繊維・繊維製品・服飾品小売:約42%

この調査からもわかるように、多くの小売業企業で人材不足が深刻化しています。

また、パーソナル総合研究所と中央大学が2018年発表した「労働市場の未来推計」によれば、2030年には卸売・小売業で約60万人の人材が不足すると予測されています。少子高齢化によって働き手が減少しつつある中、人材不足がより深刻化している状況です。

さらに、人材不足の解消に向けて小売業DXを推進していく中で問題となっているのが、DX人材の不足です。現在、システム管理を外部に委託している企業は多いでしょう。ただ、外部委託のままだと社内でノウハウを蓄積できなくなります。したがって、DXを推進していくにはIT人材の確保が欠かせません。

しかし、多くの企業がDXに注力しはじめたこともあって、DX人材の確保は難しい状況です。 総務省が2022年7月に公表した「令和4年版情報通信白書」によると、日本企業の約7割がDXの課題として人材不足を挙げています。

みずほ情報総研株式会社が2019年3月に公表した「IT人材需給に関する調査」によると、2030年にはIT人材が16万〜79万人程度不足すると予測しています。

参考:人手不足に対する企業の動向調査(2022年4月)
   労働市場の未来推計 2030 – パーソル総合研究所
   総務省|令和4年版 情報通信白書|PDF版

③経営判断材料となる有効データの取得不足

購買・閲覧といったさまざまなデータを収集し、マーケティング施策に反映させることで、各顧客のニーズにマッチした商品紹介が可能です。年代の傾向も把握できるようになるため、顧客ニーズに適した商品・サービスを開発できるでしょう。

ただし、老朽化した既存システムでは有効データを正しく取得できないため、データ不足などの課題に直面する可能性があります。

また、ITツールを導入しても、経営戦略が曖昧だと部署同士の足並みが乱れ、経営判断の材料となる有効データを取得できません。有効データの取得不足を解消するためには、経営戦略を立案しておく必要があります。

さらに、仮にデータを取得してもデータ分析できる人材が社内にいなければ、有効活用できません。外部に依頼する方法もありますが前述のとおり、丸投げしていては自社にスキルやノウハウが蓄積されないため迅速な変革は難しくなるでしょう。

有効データの取得不足解消と並行し、自社ビジネスを理解したうえでデータを活用できる人材の育成にも注力する必要があります。

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小売業DXでできること

小売業DXでできることとして次の5つを紹介します。

・オフライン(店舗)
・オンライン(ECサイト)
・物流
・マーケティング
・オンラインとオフラインの統合=OMO

それぞれの詳しい内容をみていきましょう。

オフライン(店舗)

オフライン(店舗)でも小売業DXは効果を発揮します。例えば、AIによって在庫管理を自動化すれば、業務負担を減らせるだけでなく売れ残りや過剰発注を防げます

無人レジやキャッシュレス決済を導入すればスムーズな決済が可能となり、顧客ストレスを軽減することが可能です。近年では、無人店舗も導入されはじめており、一般化されれば小売業界の人手不足解消にもつなげられるでしょう。

オンライン(ECサイト)

オンライン(ECサイト)も小売業DXの要素の1つです。ECサイト上の購買・閲覧データを活用すれば、各顧客のニーズに合わせた商品を提案できます。

例えば、ユニクロはECサイト上に顧客が書き込めるレビュー機能を実装し、顧客が使用感などを記載できるようにして、ECサイトの使用感や雰囲気が分からないという弱点を補っています。

参考:「商品レビュー」について | ユニクロ

物流

倉庫内業務をロボットが担うことで、人手不足の解消や業務効率化が可能です。人が行うよりも正確かつ迅速なため、発注ミスを削減できるメリットがあります。

また、近年は配送の一部をドローンで行う実証実験も進められています。実用化されれば、物流がさらに自動化されていくでしょう。

マーケティング

小売業DXを推進すれば、購買情報や顧客情報といった経営判断の材料となる有効データを取得しやすくなります。

取得したデータはマーケティング戦略の立案の一助となるでしょう。また、近年は性別や年代といった顧客属性を正確に取得できる、AIエンジン搭載のネットワークカメラの導入も進んでいます。POSレジよりもより精度の高いデータを取得したい場合は、導入を検討してみてください。

オンラインとオフラインの統合=OMO

スマホやタブレットが普及した現代、顧客は常にオンライン上でつながっている状態です。オフラインである店舗に足を運んでいても、オンラインでつながっている状態は変わりません。

そこで生まれた概念が「OMO(Online Merges with Offline)」です。OMOとは、オンラインとオフラインの境界をなくし、シームレスな購買体験を顧客に提供する考え方です。

例えば、顧客が店舗で商品を購入したとします。この時、クレジットカードやスマホ決済で商品を購入した場合、取得した購入データとECサイトの顧客IDとを紐づけて、関連商品をオンライン上で訴求できるようになります。OMOを実現できれば、このような訴求が可能です。

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OMOで解決できる課題

OMOで解決できる課題として次の4つが挙げられます。

・オムニチャネル
・データの取得・連携
・マーケティング
・ユーザビリティの向上

課題ごとの特徴を詳しく解説します。

オムニチャネル

オムニチャネルとは店舗(オフライン)、ECサイトやSNS(オンライン)のいずれの接点からでも顧客が同じレベルで顧客体験できることを目指す経営戦略です。

OMOと似た概念ですが、OMOのオフラインとオンラインの境界をなくして、シームレスな顧客体験を目指します。一方、オムニチャネルはオンラインとオフラインをシームレスに統合し、どのチャネルからでも顧客がスムーズに商品購入できることを目指す考え方です。

オムニチャネルを実現できれば、顧客の利便性が高まるため、顧客満足度を向上させやすくなります。また、各チャネルをシームレスにつなげられるため、機会損失を減らせる他、顧客分析もしやすくなるでしょう。

データの取得・連携

ECサイトと店舗で取得したデータを連携させることで、シームレスな顧客体験を実現できます。代表的な事例は次のとおりです。

・店舗で確認した商品をECサイトで閲覧できる
・店舗で購入した商品の関連情報を訴求する
・ECサイトで購入した商品を店舗で受け取れる

また、データを統合することで「どの顧客層が」「どの商品を」「店舗とECサイトどちらで購入しているか」といった傾向も把握できます。オンラインで店舗の混雑具合を確認できるれば、顧客満足度のアップも期待できるでしょう。

マーケティング

マーケティングに効果的な施策として次の2つが挙げられます。

・オンライン接客
・SNS集客

「オンライン接客」は、インターネットを介して販売員がオンライン上で接客することです。店舗に足を運ばなくてもプロの接客を受けられるため「顧客接点を増やせる」や「人件費を削減できる」といったメリットがあります。

また、もう1つの効果的な施策として「SNS集客」が挙げられます。アプリやLINEなどを活用してメルマガを配信し、オンラインで店舗のキャンペーンを告知できます。すでに浸透している手法ですがOMOを組み合わせれば、店舗で購入した商品の関連商品をアプリで訴求も可能です。

LINEメルマガは高い開封率が特長です。LINEトーク画面のメニューを設定しておけば、ECサイトや予約画面にアクセスできるため、オムニチャネルも実現できます。

ユーザビリティの向上

株式会社インフキュリオンが全国の16〜69歳男女5,000人を対象に行った「決済動向2021年12月調査」によれば、クレジットカードは約78%、電子マネーは約58%、QRコード決済アプリは約56%の利用率でした。

以上の点から、ユーザーの利便性および購買意欲を逃さないためには「決済の多様化への対応」が欠かせません。また、スマホ決済の導入は、ユーザビリティの向上だけでなく、決済データの取得・分析も行えるため、顧客ニーズの割り出しにもつなげられます。

参考:QRコード決済の利用率が56%と過去最高を更新 注目を集めるBNPL(後払い決済サービス)の利用者は約7割が女性 | インフキュリオン – Infcurion, Inc.

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モンスターラボの小売業DX事例

小売DXの事例を詳しくみていきましょう。

ABinBev

Anheuser-Busch InBev(以下、AB InBev)は、Budweiserなどのブランドで知られる世界最大手のビールメーカー。グローバルで事業を展開する同社は約500ブランドのビールを製造・販売しており、世界各国で11万人を超える営業マンが活動しています。

モンスターラボの北米拠点は、同社が提供する酒類の発注プラットフォーム「Tapwiser」の開発に企画段階から参画。リサーチから企画、UX/UIデザイン、プロダクト開発までの全工程を担当しました。

★事例について詳しくはこちら:

ユニメイト

ユニメイト社は、レンタルユニフォーム事業を主軸に各種ユニフォームの企画・生産・販売やクリーニングまでを手がけるユニフォーム企業のパイオニア。「ユニフォーム・テクノロジー・オペレーション」といった3つの要素を融合させ、新たな価値の創出に取り組んでいます。

モンスターラボは、同社のユニフォーム事業で活用するAI画像認識を活用した自動採寸PWA『AI×R Tailor(エアテイラー)』に企画段階から参画し、プロダクト開発の全工程を担当しました。

★事例について詳しくはこちら:

キャッシュビーデータ

『CASHb』アプリは、キャッシュビーが提供するレシート内の購買データを収集する日本初のキャッシュバックサービス。食品・日用品などの消費財メーカーに新たなダイレクトマーケティングの機会を創出。キャッシュビーのパートナー会社であるキャッシュビーデータは、ユーザーが送付したレシート画像から生活者購買データを取得・活用し、B2C企業にデータを活用する機会を提供しています。

モンスターラボは、レシート画像データを効率的に取り込み、有効データとして活用するための画像処理技術の改善を担当しました。

★事例について詳しくはこちら:

Wing Stop

Wingstopはアメリカで1200か所ものクイックサービスレストランを運営する企業。Wingstopは顧客の約40%が事前に注文して店舗で支払うスタイルをとっており、キオスク、POSシステム、保温ロッカーという3つの要素をつなぐ独自のピックアップエクスペリエンスの実装を検討していました。

モンスターラボは、実現可能性を検証するため 2週間のプロトタイプ開発スプリントを実施。検証後、バックエンドの開発と並行してUX/UI設計を行いました。その結果、注文から支払いまでのフローをシームレス化し、顧客と従業員両方の店内動線を改善することができました。

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まとめ:小売業DXを推進するにはオンラインとオフラインの融合が大切

オフラインである店舗が主流だった小売業。しかし、オンラインであるECサイトも登場した結果、オフラインとオンラインが分断され、シームレスな顧客体験を提供しづらい状態となっています。

シームレスな顧客体験を実現するには店舗とECサイトの境界をなくし、オンラインとオフラインで取得したデータの連携が欠かせません。ただし、多くの企業は業務効率化のためにITツールを導入したり、既存システムの維持に予算をかけたりしているのが実情です。

オンラインとオフラインを融合させて小売業DXを推進するには、小売業務を深く理解しているDX人材が必要不可欠です。DX人材を早急に育成し、推進の原動力となる人材を確保できるかが小売業の未来を決めるといっても過言ではありません。

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