タイのオフショア開発のメリット、デメリットについて解説

タイのオフショア開発のメリット、デメリットについて解説

近年、グローバル化とデジタルトランスフォーメーションの進展により、オフショア開発の重要性が増しています。その中でも、タイは新興のオフショア開発拠点として注目を集めています。本記事では、タイのオフショア開発について、そのメリットとデメリットを詳しく解説していきます。

オフショア開発とは

オフショア開発とは、自国以外の海外企業や現地法人の開発者にソフトウェア開発を委託することを指します。
“offshore”とは「岸から離れて」という意味で、これが転じてビジネス用語では「自国から離れた」つまり「海外」を表しています。
コスト削減や専門知識の活用、開発スピードの向上などを目的として、多くの企業がオフショア開発を採用しています。特にアジア諸国では、豊富な人材と比較的低いコストを活かしたオフショア開発が盛んに行われています。

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タイについての基礎知識

タイは東南アジアの中心に位置し、人口約7,000万人を擁する新興国です。首都バンコクは、東南アジアの主要なビジネスハブの一つとして知られています。
タイの公用語はタイ語のみです。同じ東南アジア諸国のフィリピンやシンガポールは公用語に英語が含まれるため、英語のスキルが高いですが、タイの英語力は若干劣る傾向にあります。

近年、デジタル産業の発展に力を入れており、政府主導で「Thailand 4.0」という経済発展戦略を推進しています。
「Thailand 4.0」とは、タイ政府が2015年に発表した経済発展戦略で、デジタル技術を活用した産業高度化と経済構造の転換を目指す国家ビジョンです。
「Thailand 4.0」は、イノベーション、生産性、サービス貿易をキーワードとし、「持続的な付加価値を創造できる経済社会」を目指すとされており、最終年にあたる2036年までに高所得国入りすることを目標としています。

タイのオフショア開発の得意領域

タイでは主にデザインの領域に強みをもった人材が多い点が特徴です。

デザイン関連業務

タイではデザイナーの育成に力を入れており、伝統的なタイの美意識とモダンなデザイントレンドを融合させる能力が高く、優秀なデザイナーが多いです。
特にUIデザインでは、顧客の要望を理解し、ユーザーフレンドリーなインターフェースと視覚的な魅力を両立させた独創的かつ洗練された成果物を生み出すことに長けています。

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Webサイト開発

タイのWeb開発チームは、最新のフレームワークやツールを活用した効率的な開発が特徴です。
特にWordPress、Shopify、Wixなどの一般的なCMSプラットフォームでの開発経験が豊富で、カスタマイズ性の高いWebサイトを構築できます。レスポンシブデザインの実装やパフォーマンス最適化にも注力しており、SEOを考慮したサイト構築も得意としています。
また、ECサイトの開発では、決済システムの実装からユーザー管理機能まで、包括的なソリューションを提供できます。

モバイルアプリ開発

タイ国内でのスマートフォン普及率の高さを背景に、モバイルアプリ開発の専門性が著しく向上しています。iOS、Androidの両プラットフォームに対応したネイティブアプリ開発はもちろん、React NativeやFlutterなどのクロスプラットフォーム開発フレームワークの活用も進んでいます。
特にフィンテック、eコマース、エンターテインメント分野のアプリ開発で実績があり、ユーザー体験を重視した直感的なインターフェース設計と、安定したパフォーマンスの両立を実現しています。

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タイのオフショア開発のメリット

タイへオフショア開発を依頼するメリットとしては以下の4つが挙げられます。

時差が2時間と少ない

日本とタイの時差は2時間で、リアルタイムでコミュニケーションが可能です。
また、日本からタイへの渡航時間は約6時間と比較的短いため、現地視察やプロジェクトのキックオフを行うなど対面でのコミュニケーションも取りやすい立地といえます。

日本人と親和性の高い国民性

タイ人特有の精神性である「サバーイ」(心にストレスがかかっていない状態)な国民性は、柔軟な対応と良好な人間関係の構築に役立ちます。
また、日本のアニメやJPOPなどのカルチャーが好まれ、台湾やベトナムと並び親日家が多いという特徴があります。仏教徒が大半だという点も文化的に親和性が高いと言えるでしょう。

クリエイティブスキルが高い

タイのデザイナーたちは、創造性と細やかな感性でビジュアル面での表現力に優れており、高い評価を得ています。
これはタイの伝統芸術や仏教建築が日常生活に根付いており、幼少期から美的感覚を養う環境があり、デザインや色彩に対する感性が培われていると言えます。
また、政府による「Thailand 4.0」政策において、デジタルクリエイティブ産業への投資が盛んで、バンコクを中心にデザインを実践的に学べる専門学校や大学が充実しています。

インフラ環境の整備

主要都市部を中心に高速インターネット網が整備されており、特にバンコクでは5Gサービスも展開されています。
電力インフラも比較的安定しており、雨季の停電を回避するバックアップ電源設備を備えたオフィスビルも増加傾向にあり、開発に必要なインフラが整備されています。

タイのオフショア開発のデメリット

タイのオフショア開発には魅力的な面もありますが、課題もいくつか存在します。これらのデメリットを理解し、依頼を検討する必要があります。

エンジニア不足

タイでは他のASEAN諸国に比べると少子高齢化が進んでおり、エンジニアの絶対数が需要に追いついていない状況があります。
特にIT人材の育成には時間がかかるため、人口動態の変化による若年層の労働力の減少は、エンジニア不足をさらに深刻化させる要因となっています。
タイへオフショア開発を委託する際は、開発パートナーの人材確保体制や離職率、人材育成プログラムなどを事前に確認し、プロジェクトの継続性を担保することが重要です。

英語や日本語が苦手

タイの公用語はタイ語のため、フィリピンやシンガポール等と比べると英語を話せる人が多くはありません。したがって大規模開発案件などで、複数国をまたいで日本国内から案件をコントロールする場合は注意が必要です。
日本語でやり取りしたい場合も同様、日本語ができる人は少ないですが、日系企業の進出も多く、通訳を探すことは比較的容易です。オフショア開発を委託する際に、ブリッジSEが在籍しているなど、日本語でのコミュニケーションに支障がないか確認すると良いでしょう。

政情の不安定さ

タイは過去に複数回のクーデターを経験しており、政治的な不安定さがビジネス環境に影響を及ぼす可能性があります。
たとえば、新たに発足した政権により、法改正や規制強化が行われプロジェクトの進行に支障が出てしまうリスクがあります。
しかし、近年は比較的安定した状況が続いています。
他のオフショア委託先国もリスクが全くないわけではないので、こういった外的要因も考慮した上で委託先を検討しましょう。

他のアジア諸国とタイのオフショア開発を比較

オフショア開発を検討する際、それぞれの国の特徴を理解することが重要です。
自社の開発体制、案件の内容、英語使用の有無やブリッジSEの要否などの条件と照らし合わせて、相性の良い国、オフショア開発チームに依頼できるよう情報を整理しましょう。

言語とコミュニケーションスキル

タイのエンジニアは、フィリピンやシンガポールと比較すると英語力で劣る傾向にあります。
一方、インドや中国と比べて日本企業との文化的な親和性が高く、非言語コミュニケーションでの理解が得られやすい特徴があります。
ベトナムと同様、日本語学習者は多いものの、ビジネスレベルでの運用には課題があります。特に要件定義や詳細な仕様の理解については、言語面での支援が必要となることが多いでしょう。

技術力と得意領域

フィリピンは英語力を活かしたBPO(Business Process Outsourcing)産業が発達しており、Webアプリケーション開発やカスタマーサポート系システムの開発に強みを持っています。
インドは大規模システム開発やエンタープライズ向けソリューションで優位性を持ち、中国は先端技術開発で強みを持つのに対し、タイはデザイン思考を活かした開発や中小規模のプロジェクトに競争力があります。タイの特徴としては、UIデザインやモバイルアプリ開発において、ユーザー体験を重視した開発が得意です。

コストと人材市場

タイの人件費は、インドやベトナムと比べると20-30%程度高めですが、シンガポールやマレーシアと比べると競争力のある水準を維持し、日本と比較すると依然として3分の1から2分の1程度のコストで開発が可能です。
とはいえ、少子高齢化の影響で人材の確保が徐々に困難になってきています。しかし、人材の定着率は比較的高く、長期的な開発パートナーシップを築きやすい特徴があります。
一方、フィリピンは、BPO産業の発展に伴い人材の需要が高く、近年は人件費が上昇傾向にありますが、毎年IT関連の卒業生を多く輩出しており、人材の供給が比較的安定しています。

地政学的・文化的要因

バンコクは東南アジアのハブとして機能しており、日本からのアクセスが良好です。飛行時間は約6時間で、時差も2時間と小さく、ベトナムやフィリピンと同様、リアルタイムでのコミュニケーションが取りやすい環境です。
文化面では、タイは仏教文化を基盤とした価値観を持ち、日本との親和性が高く、インドや中国と比べてビジネス習慣の違いによる摩擦が少ないのが特徴です。
一方、フィリピンはアメリカの影響を強く受けた文化を持ち、欧米的なビジネス習慣が浸透しています。また、キリスト教国でありながら、アジア的な価値観も併せ持つことから、日本企業との協業でも大きな文化的衝突は少ない傾向にあります。
ただし、タイでは政治的な不安定さ、フィリピンでは自然災害のリスクなど、それぞれの国固有のリスク要因についても認識しておく必要があります。

まとめ

これまでタイのオフショア開発のメリット、デメリットを解説してきました。

タイはクリエイティブスキルが高いのでデザインなどのクリエイティブ業務を委託したい際に向いていると言えます。
また、時差も少なく、文化的に親和性も高いため、言語の問題をクリアできればコミュニケーションの面では、ギャップを感じにくくプロジェクトをスムーズに進めやすいのではないでしょうか。
タイでのオフショア開発を成功させるためには、これらの特徴を十分に理解し、プロジェクトの性質や規模に応じて適切な判断を行うことが重要です。
特に、デザイン重視のプロジェクトや、密なコミュニケーションが必要な開発案件において、タイは魅力的な選択肢となるでしょう。

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