近年、グローバル化が進む中で、バングラデシュがオフショア開発の新たな拠点として注目を集めています。本記事では、バングラデシュでのオフショア開発について、そのメリットやデメリット、成功のポイントなどを詳しく解説していきます。
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目次
バングラデシュは、人口約1億6,500万人を抱える南アジアの新興国です。
IT産業は同国の重要な成長分野として位置づけられており、政府主導で「デジタル・バングラデシュ」構想を推進しています。
毎年約3万人のIT人材を輩出し、オフショア開発市場は年率20%以上で成長を続けています。近年、アジア地域を中心にオフショア開発の市場が拡大しており、バングラデシュもその一翼を担う国として注目されています。
バングラデシュ政府が掲げる「デジタル・バングラデシュ」構想が、オフショア開発市場の成長を大きく後押ししています。この構想は2009年から始まり、2041年までにデジタル社会の実現を目指す国家戦略です。
具体的には、ICTインフラの整備、デジタル人材の育成、電子政府の推進など、包括的なデジタル化を進めています。また、毎年約3万人のIT人材を輩出する教育システムを確立し、市場に若く優秀なエンジニアを輩出しています。このような政府主導のデジタル化推進により、バングラデシュは新興のオフショア開発拠点として注目を集めています。
コスト面での優位性から充実した人材育成まで、バングラデシュでのオフショア開発には多くのメリットがあります。ここでは、主要な5つのメリットについて詳しく説明します。
人件費は日本の約3分の1から4分の1程度で、大幅なコスト削減が可能です。また、政府による税制優遇措置もあり、総合的なコストメリットは非常に高いと言えます。
バングラデシュ政府は、「デジタル・バングラデシュ」構想をはじめとしたIT産業を重要な成長分野と位置づけ、様々な支援策を実施しています。税制優遇や補助金制度、IT特区の設置など、包括的なサポート体制が整っています。
バングラデシュでは、理工系教育に力を入れており、毎年多くの優秀なエンジニアが輩出されています。特に、数学や論理的思考力が高く評価されており、プログラミングスキルも高水準です。
バングラデシュの公用語はベンガル語ですが、インドやパキスタンと同様にイギリスの植民地であった歴史背景から英語が広く使用されています。
したがって多くのエンジニアが英語でのコミュニケーションに支障がありません。
国を跨いだ他拠点間のグローバルプロジェクトでも円滑な意思疎通が可能なため、たとえば日本側にPMを置き、インドの開発会社が上流工程を担い、下流工程をバングラデシュが行うといったプロジェクトで強みを発揮できるでしょう。
バングラデシュは伝統的に親日国として知られており、日本企業との協力に積極的です。
バングラデシュ独立後、先進国としていち早く国家承認した国が日本であり、ODA(政府開発援助)などによるインフラ整備や教育援助を継続的に行っているためです。
もちろんアニメなどの文化的な理解も深く、両国の友好を築いています。
バングラデシュでオフショア開発を検討する際には、課題や懸念点も把握しておく必要があります。インフラ整備や文化的な違いなど、主要な課題について解説します。
バングラデシュは急速に発展している国ではありますが、まだまだインフラ整備が他のオフショア開発国に比べると遅れています。首都ダッカ以外の地方ではこれらの問題が顕著です。特に電力供給や通信インフラの安定性には課題があり、システム運用や開発中に予期せぬトラブルが発生する可能性もあります。
複数開発拠点での分散開発体制の構築やマイルストーンごとのバッファ期間を設定し、余裕のあるスケジュールを設定するなど対策を検討することをお勧めします。
イスラム教が主要な宗教であり、祝日や労働時間などで日本との違いがあります。たとえば金曜日が休日となることも、スケジュール調整の際に考慮が必要です。
したがって、ビジネスシーンにおいて日本企業との文化的な摩擦が生じることもあるかもしれません。あらかじめこれらを理解し、尊重することが重要です。
政治的な不安定さや、ストライキ(ハルタル)の発生など、ビジネスに影響を及ぼす可能性のある要因が存在します。
独立後も複数回のクーデターや大規模抗議活動が発生しており、直近では2024年ハシナ首相が辞任し、グラミン銀行(マイクロクレジット)創設者のモハマド・ユヌス氏を首席顧問とする暫定政権が樹立しています。
このように時折、政治的な緊張が高まることがあります。そのため、最新の情報を入手しビジネス上のリスクを低減できるよう注視する必要があります。
英語でのコミュニケーションは問題ありませんが、日本語対応が必要なプロジェクトでは課題となる場合があります。
JICAなどの取り組みにより、徐々に日本語話者は増えていますが、他のアジア諸国と比べるとまだまだ少ないのが現状です。
日本法人の現地拠点などでは、日本語が堪能なバングラデシュ人が在籍している場合もあるので、ベンダー選定の際に日本語話者の有無を確認すると良いでしょう。
オフショア開発を実現するためには、適切な準備と管理が不可欠です。ここでは、バングラデシュにもオフショア拠点を持つ、弊社の実務経験に基づく重要な成功のポイントをご紹介します。
バングラデシュのオフショア開発を成功させるためには、コミュニケーションを密に行うことが重要です。日本とバングラデシュは文化や商習慣が異なるため、明確な意思疎通が求められます。定期的なミーティングや進捗報告を通じて、遅延などのトラブルを未然に防ぎましょう。
また、オフショア拠点とのコミュニケーションにブリッジSEを手配することも良いでしょう。ブリッジSEは、クライアントとオフショア開発チームの橋渡し役を担い、要件や仕様だけでなく、ビジネス上の要望や期待についても共有します。
バングラデシュの文化や宗教的慣習を把握し、相互理解を深めることで、より良い協力関係を構築できます。
ビジネスにおけるエチケットやマナー、働き方に違いがあるため、事前にリサーチしておくと円滑なプロジェクト運営が可能になります。
要件定義や仕様書は可能な限り詳細に作成し、認識の齟齬を防ぐことが重要です。
バングラデシュの開発チームにとって、明確な仕様書があることは業務を進める上での指針となります。曖昧な部分がないように、細かく詳細な仕様書を準備しましょう。
オフショア開発では、コストを抑え、クイックに納品したい案件が多いため、納期の遅れが致命的な問題となり得ます。
大きなマイルストーンを細かく分割し、こまめな進捗確認を行うことで、プロジェクトの遅延リスクを軽減できます。
金曜日が休みであることやラマダン期間があることも考慮し、スケジューリングすることが重要です。
バングラデシュのIT人材は、特定の分野で高い専門性を持っています。どのような案件や開発分野が適しているのか、具体的に見ていきましょう。
バングラデシュではPCよりスマートフォンが主要なデバイスであり、政府としてもモバイルアプリ開発企業への税制優遇などに力を入れています。
したがって、モバイルアプリケーション開発の経験が豊富で、Javaプログラミングの教育が充実している背景からも、特にAndroidアプリの開発に強みがあります。コストを抑えつつ高品質なアプリを開発できます。
ちなみに弊社バングラデシュ拠点では、主に中東向けにウェブ開発を担うことが多く、サイト構築のスキルセットのある人材が多いです。最近は新たな技術習得のため生成AIを活用した開発にも力を入れています。
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バングラデシュでは、若いエンジニアが多く、新しい技術への適応力が高いため、最新技術を活用したプロジェクトに適しています。これにより、AIやブロックチェーンなどの最新技術の開発に対応できる人材が豊富です。
というのも、バングラデシュでは数学教育が充実しているため数学的素養が高く、コンピュータサイエンス教育では機械学習やAI分野を重視しています。また、政府によるフィンテック促進の政策やブロックチェーン技術の研究支援などの取り組みはブロックチェーン技術の開発を後押ししています。
コストパフォーマンスの高さを活かし、予算制約のある開発プロジェクトに適しています。バングラデシュは、コストの安さが大きなメリットであり、システム開発にかかるコストを抑えたい場合に非常に有効です。低価格で高品質な開発を提供できるため、コスト重視の企業には最適な選択肢となります。
ここではインド、ベトナム、フィリピンなど、アジアの主要なオフショア開発拠点と比較しながら、バングラデシュの特徴を分析します。
バングラデシュは、インドやフィリピンなどのアジア諸国と同様に英語力が高く、国際的なコミュニケーションの障壁が低い点が特徴です。また、英語の発音もイギリス英語の影響を受けているため、比較的聞き取りやすいです。ただし、日本語対応については、ベトナムやフィリピンと比べると課題があります。
タイやベトナムと比べるとYes/Noの意思表示は明確で質問や確認も積極的に行うコミュニケーションスタイルが特徴です。
文化的価値観や慣習を理解し尊重するためにも積極的なコミュニケーションで相互理解を深めましょう。
バングラデシュは技術力において、特に数学的思考力を活かしたAI開発やデータ分析分野で高い評価を得ています。インドに近い技術水準を持ちながら、コストは比較的低く抑えられます。
フィリピンやタイと比べるとUI/UXデザインの面では劣るものの、システム設計の基礎力が高いためバックエンド開発は得意です。
また、ベトナムと比べて大規模システム開発の経験は少ないものの、ブロックチェーン技術などの技術革新への対応力は高評価のため、AI・機械学習機能の実装など先端技術を活用した開発プロジェクトや、データ分析基盤構築のプロジェクトなどとの相性が良いでしょう。
バングラデシュの人件費はベトナムと同程度か、やや低めです。インド、フィリピンと比較すると約20%程度低いコスト水準です。中国と比較すると約50%程度のコストで発注が可能です。
政府の取り組みにより年間約3万人のIT人材を輩出しているので、若手人材の供給が豊富で、人材市場の成長性も高いと評価されています。一方、経験豊富なPMはまだまだ不足しているため、日本側で手配することや若手とシニアのバランスの取れたチーム構成とするなど考慮する必要があります。
バングラデシュと日本との時差は3時間でインドとほぼ同等のため、フィリピンやベトナムと比べると時差がありますが、日本との業務遂行が十分可能です。
イスラム教国であることから、独自の文化的特徴や就業習慣があります。金曜日が週末である点や、ラマダン期間中の就業時間の変更など、他のアジア諸国とは異なる配慮が必要です。
一方で、親日的な国民性と、長年の経済協力関係により、日本企業との協業がスムーズです。地理的には、自然災害のリスクや電力インフラの課題はあるものの、光ファイバー網の整備やIT特区の設置により、開発環境は着実に改善しています。
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バングラデシュのオフショア開発は、コスト面での優位性、豊富な若手人材、政府のサポート体制など、多くの魅力的な要素を備えています。
一方で、インフラ整備や文化的な違いといった課題も存在します。これらの特徴を十分に理解し、適切な対策を講じることで、希望に沿ったオフショア開発が実現できます。
特に、最新技術を活用したプロジェクトや、コスト効率を重視する開発において、バングラデシュは有力な開発委託国になります。
日本企業にとって、バングラデシュはこれからさらに注目すべき国となるでしょう。
モンスターラボは、約20年にわたるサービス・プロダクト開発の実績から得られたデジタル領域の知見や技術力を活かし、デジタルプロダクト開発事業を展開しています。
弊社オフショア開発拠点では約700人の開発人材が所属しております。エンジニアの採用・育成が追い付かず、開発のリソースが足りない、そもそも開発組織の立ち上げ方がわからないといった課題や将来的な内製化まで伴走支援が可能です。
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