スクラムとは、短い期間で計画と実装を繰り返す、アジャイル開発のフレームワークです。実践と経験による知識を重要視し、プロダクト価値の最大化に重点を置いています。本記事ではスクラムの意味やメリット、特徴や価値基準についてわかりやすく解説します。
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目次
スクラムとは、短い期間でのシステム開発を意味する「アジャイル開発」のフレームワークの1つです。具体的な手順やプロセスといったものが定義されているわけではありませんが、ソフトウェア開発に共通して適応できるフレームワークとなっています。
スクラムのフレームワークは、3つの役割をもつチームが5つのイベントに参加し、3つの成果物を作成するというシンプルなものです。
最大10人までのチームである「スクラムチーム」で構成され、一か月以内の期間である「スプリント」という単位で計画と実装を反復的に繰り返し、少しずつプロダクトの完成度を高めていきます。
近年の変化のスピードや複雑性に対応するため、スクラムは、物事を経験に基づいて考えようとする「経験主義」と、ムダを最小限に抑えつつ顧客価値を最大化する「リーン思考」を特徴としており、実践と経験による知識を重要視しています。
★スクラムとは、短い期間でのシステム開発を意味する「アジャイル開発」のフレームワークの1つ
・3つの役割をもつチームが5つのイベントに参加し、3つの成果物を作成する
・最大10人までのチーム、一か月以内の期間で計画と実装を反復的に繰り返す
・「経験主義」と「リーン思考」を特徴とし、実践と経験による知識を重要視している
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アジャイル(Agile)とは、「素早い」「機敏な」「頭の回転が速い」という意味です。
アジャイル開発は、現在主流になっているソフトウェア開発手法の1つであり、プロダクトの価値を最大化することに重点を置いています。「プロジェクトに変化はつきもの」という前提で、優先度の高い要件から順に開発を進めていくので仕様変更に強いのが特徴です。
『計画→設計→実装→テスト』といった開発工程を、機能単位の小さいサイクルで繰り返すため、素早くリリースしてからブラッシュアップができます。つまり、サービスインまでの期間を短縮でき、ビジネスのスタートを早められます。
★アジャイル開発について詳しくはこちら
スクラムという言葉は、1986年に竹内弘高氏と野中郁次郎氏によるハーバード・ビジネス・レビューの記事『The New New Product Development Game』ではじめて紹介されました。
その後Ken Schwaber氏と、Jeff Sutherland氏によってさらに発展し、2010年にスクラムの公式ガイドである「スクラムガイド」にまとめられ、スクラムの理論を実践するために必要な実践者の関係性や相互作⽤が書かれています。
スクラムガイドでは、「スクラムとは、複雑な問題に対応する適応型のソリューションを通じて、人々、チーム、組織が価値を生み出すための軽量級フレームワークである」と定義しています。
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スクラムを取り入れるメリットを確認していきましょう。
スクラムでは、ユーザーの要望をベースとし、開発工程を機能単位の小さいサイクルで繰り返します。具体的なイメージをユーザーに提示し、認識のズレをなくしながら開発を進めるので、効率を上げられます。
スクラムを導入した開発では、スプリント単位で開発を行う機能の見積もりをするため、作業工数の想定が比較的容易であり、精度の高い工数見積もりが可能となります。
スクラムではスプリントの終わりに必ず振り返りを行い、現状認識を共有します。共有された課題や改善案を次のスプリントで活かせるため、改善を何度も繰り返し適応できます。
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スクラムには、「透明性」「検査」「適応」という3本柱があり、これらを実現する枠組みとなっています。それぞれどのようなことを意味するか、確認していきましょう。
透明性とは、事実から状況がわかるようになっていることです。
よい事実も悪い事実もどちらとも、発生していることを見えるようにすることが大事です。
ここでいう透明性は、プロセスや作業状況といった仕事の内容とともに、個人の状況といった、表面に現れない広い範囲を対象とします。
検査とは、チーム全員が進捗状況やプロセスなどに問題がないかどうかを確認することです。検査は透明性の上に成り立ち、望ましくない状況や問題に気づくために積極的に行う必要があります。
適応とは、検査の結果に基づき、プロセスやプロダクトの軌道修正を行うことです。
チーム全員が、前より良くなっているかを問いかけながら、プロセスの改善やプロダクトの軌道修正をできるだけ早く行うことが重要です。
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スクラムの成否は、チームの作業、⾏動、振る舞いを⽰す5つの価値基準を実践できるかどうか、にかかっています。5つの価値基準とは、「確約」「勇気」「尊敬」「公開」「集中」です。それぞれ、どのようなものか確認していきましょう。
確約とは、「スクラムチームは、ゴールを達成し、お互いにサポートすることを確約する」ことです。チームメンバーはお互いを信頼しながら、一致団結していきます。
集中とは、「スクラムチームは、ゴールに向けて可能な限り進捗できるように、スプリントの作業に集中する」ことです。過去や未来の不安にとらわれず、今のスプリントと目の前の重要な作業に集中します。
公開とは、「スクラムチームとステークホルダーは、作業や課題を公開する」ことであり、さまざまなものに対するオープンマインドのあり方です。よい状況や悪い状況を認め、意見や変化を受け入れていきます。
尊敬とは、「スクラムチームのメンバーは、お互いに能力のある独立した個人として尊敬し、一緒に働く人たちからも同じように尊敬される」ことです。お互いに対する尊敬は、信頼となり、コラボレーションの促進へとつながります。
勇気とは、「スクラムチームのメンバーは、正しいことをする勇気や困難な問題に取り組む勇気を持つ」ことです。開発中、さまざまな不安や恐怖、恥ずかしいと感じることがあったとしても、自分やチームメンバーを信じて積極的に向かっていくことが大事です。
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スクラムチームのメンバーには、プロダクトオーナー、開発者、スクラムマスターという3つの役割があります。
プロダクトオーナーの責任は、スクラムチームが生み出すプロダクト価値の最大化です。顧客の要望をもとにシステムの機能や要件を管理し、プロダクトゴールの策定を行います。状況を見える化し、ステークホルダー全体に伝える責任もあります。
開発者は、スクラムチーム内で、利用可能な成果物である「インクリメント」のあらゆる側面を作成することに従事するメンバーのことです。
スクラムチームの開発者が必要とするスキルは広範囲であり、ソフトウェア開発者のみとは限りません。開発者はお互いに責任を持って支援をし、毎日問題や課題を共有します。
スクラムマスターは、スクラム確立の責任を持ち、プロダクトオーナーを支援する役割です。スクラムチームと組織の両方において、すべての人の、スクラムの理論と実践の理解を手助けします。
スクラムマスターはチームの進捗を妨げる障害物を取り除き、ステークホルダーと協力して作業負荷の再分配を行うといった、チームがタスクに集中できるよう支援することが重要です。
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スクラムは、スプリントという期間で、スプリントプランニング、デイリースクラム、スプリントレビュー、スプリントレトロスペクティブといったイベントを行いながら開発を進めます。それぞれの用語について確認していきましょう。
スプリントは、一か月以内の期間で終了するイベントです。スプリントの期間が一か月以上になると複雑さが増し、リスク増大の可能性があります。
新しいスプリントは、前のスプリントの終了後すぐに開始されます。スプリント中は、目標のリスクを高める変更は行わず、品質を低下させないことに注意しましょう。
スプリントプランニングは、各スプリント開始時に行われ、スプリントで行うべき作業を明確にし、計画を作成します。
スプリントプランニングでは、以下のトピックを扱います。
トピック1:なぜこのスプリントは価値があるのか?(why)
プロダクトオーナーは、現在のスプリントでどのように製品の価値と実用性を高められるかを提案し、スプリントがステークホルダーにとって価値がある理由を伝える「スプリントゴール」を定義します。
トピック2:このスプリントで何ができるのか?(what)
現在のスプリントで開発する項目を、顧客要望の一覧「プロダクトバックログ」から選択します。スプリント内で完了させる項目の選択は困難ですが、スプリントを重ねるごとに選択の精度は高まっていきます。
トピック 3: 選択した作業をどのように完了させるか?(how)
開発者は、選択した各項目の「完了の定義」を満たすインクリメント作成の計画を行います。
これらのトピックを通して得られる計画が「スプリントバックログ」です。
デイリースクラムとは、毎日同じ時間に行う15分程度のミーティングです。前回からの進捗や、現状の課題、次回までに行うことをチーム内で確認し、共有を行います。
デイリースクラムの目的は、スプリントゴールへの進捗を確認し、必要に応じてスプリントバックログを修正し、今後の予定作業を調整することです。
複雑さを軽減するために、スプリント期間中、毎日、同じ時間と場所で開催します。プロダクトオーナーやスクラムマスター自身が、スプリントバックログのアイテムに積極的に取り組んでいる場合は、開発者として参加します。
スプリントレビューはスプリント期間の終盤に行う、スプリントで実装した機能について行うレビューです。スプリントの成果を確認し、今後の対応を決定します。スクラムチームは主要なステークホルダーに作業結果を提示し、プロダクトゴールに対する進捗を議論します。
1か月のスプリントの場合、スプリントレビューの時間は最大4時間程度です。
レトロスペクティブとは「振り返り」という意味で、スプリントの最後に行う振り返りがスプリントレトロスペクティブです。
チームメンバー個人や相互作用、プロセスやツールといったプロダクト以外の要素に関してどのようであったかを検査します。検査の結果得られた改善点は次のスプリントで活かしていきましょう。
1か月のスプリントの場合、スプリントレトロスペクティブは最大3時間程度となります。
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スクラムの重要な決定は、3つの成果物の状態認識に基づいています。3つの成果物について詳しく見ていきましょう。
プロダクトバックログは、プロダクト実現に必要な、優先順位をつけたリストです。
アジャイル開発のプロダクトバックログの一般的な各リスト項目としては、ユーザーの要望である「ユーザーストーリー」の形式があります。これはユーザーの視点から語られる望ましい機能の短くシンプルな説明です。
スプリントバックログは、スプリントゴール(why)、スプリントで選択されたプロダクトバックログアイテム(what)、インクリメントを提供するための実行計画(how)で構成されたものです。
実行計画に落とし込む前に、プロダクトバックログ項目を分解し、1日以内の作業項目に分配していきます。スプリントバックログはスプリント期間中に更新され、進捗状況を確認できるほど詳細である必要があります。
インクリメントとは、開発者が作成する成果物のことです。以前のスプリントで作ったものに加え、最新のスプリントで完成した新しいインクリメントを統合してテストし、納品やデプロイできる状態にします。そのため、「増分」を意味するインクリメントという名前になっています。
すべてのインクリメントが正しく機能し、価値の提供を保証するために、開発者はインクリメントを徹底的に検証します。
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アジャイル開発を採用して成功を納めた開発事例を紹介していきます。
「Payどん」は、鹿児島銀行に口座を保有する顧客が利用できるキャッシュレス決済サービス。2019年6月に開業した完全キャッシュレス商業施設「よかど鹿児島」内の14店舗からスタートし、サービスを順次拡大させています。
商業施設のオープンに合わせることがビジネスロードマップ上の絶対条件であったため、開発プロジェクトは一切の遅延が許されない状況下で行われました。タイトなスケジュールのなかでも素早いリリースを可能にするため、弊社ではアジャイル開発を提案。設計〜実装〜テスト〜リリースまでのあらゆる工程をサポートし、適切なタイミングでのサービスリリースを実現しました。
★詳しくはこちら:
鹿児島銀行|スマートフォン決済アプリのアジャイル開発成功事例
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「釣りドコ」は、海底地形マップが見られる釣り人向けのメディアサービス。水中の地形データを測量できるALB(航空レーザ測深機材)を用いた新しいビジネスモデルの創出を模索されていた空間情報コンサルタント企業・アジア航測社とモンスターラボで共同企画開発を行いました。
アジア航測社のアイデアをベースに、入念なリサーチを実施。その結果を基に競合分析、ペルソナ設計、画面イメージを作成するなど、アジア航測社と伴走して約1ヵ月で新規ビジネスモデルおよびサービスの基本設計を行いました。
海底地形データとともに、釣果を記録できるログ機能、ユーザ同士で釣果を共有できるコミュニケーション機能などのさまざまなコンテンツを搭載した釣り向けのメディアサービスをPWAで開発することを提案。開発手法にはアジャイル開発を採用し、ビジネスロードマップに合わせたサービスリリースを実現しました。
★詳しくはこちら:
アジア航測|釣り人向けメディアサービスのアジャイル開発成功事例
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スクラムのフレームワークは、3つの役割をもつチームが、5つのイベントに参加し、3つの成果物を作成するというシンプルなものです。
スクラムでは、重要な決定は、3つの成果物の状態認識に基づくため、透明性が非常に重要となります。透明性の低い成果物は、価値を低下させ、リスクを増大させる意思決定につながる可能性があります。
スクラムを導入して、チームや組織内の人々の間でより大きな信頼につながる、透明性の高い成果物の作成を意識し、生産的かつ創造的に顧客価値の高い製品を提供していきましょう。
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