Web3は、パブリック型のブロックチェーンを基盤としたインターネットの概念です。情報の流れの中にユーザーなどが自発的に参加できるWeb2.0がより進化した考え方であり、ブロックチェーン業界やメタバース業界を中心に広がりを見せています。
それでも、一般にはなじみがなく、知らない人も多いでしょう。
そこで、本記事では、Web3が普及するメリットや著名なユースケースのほか、Web3の今後の展望について解説します。
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目次
Web3(Web3.0)が登場する前段階で、インターネットの世界は、Web1.0、そしてWeb.2.0という変化を遂げてきました。
Web1.0とWeb2.0、次世代のWeb3.0は何を意味し、内容や形態、目的はどのようなものなのでしょうか。
それぞれについて詳しく解説します。
Web1.0は、Windows 95が発売された1995年ごろから、Web2.0が現れるまでの10年間、Web上で提供されてきた、インターネット初期の技術やサービス、Webに対する捉え方を指します。
Web1.0はユーザーのデバイスがパソコンであるほか、コンテンツはテキスト、静止画像であるのが特徴です。SNSやブログなどのように双方向性の機能はありません。
Web1.0的な事例には、バナー広告やドメイン名売買、ページビューなどがあります。いずれも旧来的なWebサービス、ビジネスの産物と言えますが、現在もWebサービスの中核を担うサービスとして残り、企業成長に貢献しているものが少なくありません。
Web 2.0は、単にインターネットの技術的進歩に留まらず、ユーザーや企業を巻き込んだ、インターネット関連の技術やサービス、ビジネスモデルの総称です。主に2005年ごろから、2020年ごろまでに登場したWebのサービスなどに対して使われました。
Web2.0は、テキストと画像が中心だったWeb1.0と異なり、音声や映像などのマルチメディアコンテンツが主流なのが特徴です。
また、利用者の自発的な参加が可能だったり、サービス提供者とユーザーのコミュニケーションが双方向だったりするなど、技術やサービスが流動的であるという特徴も備えています。
代表的なWeb2.0的事例には、Googleアドセンスやウィキペディア、ブログ、SNS、SEOなどがあります。
明確な定義は確立されていませんが、Web3は、開かれたパブリック型のブロックチェーンを使うことで、中央集権的な管理組織を必要としない分散型インターネットを基盤とした技術やサービスだと言われています。
Web3という言葉は、2014年に暗号資産イーサリアムの共同創設者であるギャビン・ウッドによって作られました。
その後、仮想世界のメタバースや非代替性トークン「NFT」といった次世代の新技術の登場を受け、2020年と2021年に暗号資産に熱狂する人やIT企業、ベンチャーキャピタルから関心を集めています。
Web3は、インフラストラクチャーという側面で、大きく2つの特徴を備えています。
1つはブロックチェーンにより性能とセキュリティが強化されており、検証可能なコンピューティングになっていること、もう1つは検証可能な状態を公開することで、中央集権型のプラットフォームと同等の機能を担保していることです。
こうした特徴を持つWeb3が、私たちにもたらすメリットについては、下記で紹介します。
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コミュニケーションの双方向性など、さまざまな面でメリットがあったWeb2.0ですが、いくつかの問題を抱えていました。代表的なのは、特定の大企業に個人情報が集中するプライバシーの問題、中央集権型のサーバーに依存しているセキュリティの問題です。
前者は、GAFAMと呼ばれるビッグ・テックに代表されるIT大企業が、個人情報を含めて大量情報を取得することから発生する問題です。
これらの大企業はユーザーの住所や年齢、性別といった個人情報だけでなく、個人の嗜好や行動履歴などあらゆる情報を集めるため、個人のプライバシーが失われるのではないかと多方面から指摘されています。
後者は、システム運用を中央集権型のサーバーに依存することで、システムが脆弱化するのではないかという問題です。
多くの情報を集める中央集権型のサーバーはシステム依存度が高いことから、サイバー攻撃によって、個人情報の流出や不正アクセス、データの改ざんが起きやすいと言われています。
つまり、単一のネットワーク経路に全てを委ねており、問題対応能力という点で、常に危機にさらされているのです。
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Web3が普及するメリットは、主に下記の5点だと言われています。
ここからは、それぞれのメリットを詳細に解説します。
Web3は、各自がブロックチェーンのウォレットアドレスを保有し、必要な場合に都度ウォレットのIDでログインするため、個人情報の自己管理ができるメリットがあります。
これは、ユーザーが氏名や住所など、さまざまな個人情報を登録という行為を通じてテック系企業に渡していたWeb2.0とは大きな違いです。
個人情報を自己管理できるメリットは、テック系企業による情報搾取を防ぐだけではありません。サイトに訪れたユーザーの情報を一時的にユーザーのブラウザに保存するCookieなどによって、情報を追跡されるのを回避できるようになるのです。
企業やシステムによる個人情報の搾取、追跡行為がなくなると、リマーケティング広告など、購買意欲をかき立てる広告を配信させないといったことが可能になります。
Web3は、サービスを制御する中央集権的な組織が存在しないため、アクセス制限がありません。
専門的には、アクセス制限がないことを検閲耐性があると表現します。
検閲耐性があると、SNSの運営企業が自社プラットフォームに書き込める内容に制限を設けたり、国や政府が閲覧できるWebサイトを制限したりする行為がなくなります。インターネット上での自由度が格段に向上するのが、メリットと言えるでしょう。
Web3は、不特定多数の端末が、サーバーを介さずに、端末同士で直接データをやり取りできるP2Pによるネットワーク接続を基本としています。
このため、Web3は、サーバーを管理する仲介組織を排除するほか、サーバーのアクセス集中を防ぐことが可能です。
仲介組織を排除すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。それは、Web2.0の問題点でも指摘のあった単一のネットワーク経路に依存するという問題の解消です。
仮に悪意のある第三者がハッキング行為を試みたとしても、Web3はデータの分散配置を可能にしているため、データの流出や改ざんといった被害を最小限に抑えられるでしょう。
Web3を導入すると、現行のアプリケーションは、OSやデバイスに依存しないアプリケーションであるDApps(Decentralized Applications:分散型アプリケーション)に代替されると言われています。
例えば、ネット検索に用いるブラウザであれば、Google ChromeからBrave、データを保存、管理するストレージであれば、Google DriveからIPFS(Interplanetary File System)といった具合にです。
DAppsの大きな特徴は、ブロックチェーン上に構築され、データの分散配置やシステムの分散統治を基本としている点です。このため、情報漏えいのリスクが少ないほか、個人情報を不当に利用されないといったメリットを有しており、ユーザーはそれらのメリットを享受できるでしょう。
Web3は、中央集権型のデータ管理の課題をブロックチェーンによる分散化によって解決する分散型ストレージの実現など、ストレージサービスの変化を促します。
分散型ストレージは、中央集権型のストレージと違い、データ基盤が分散化されるため、ハッキングによるデータの改ざんや流出といった問題に高い対応能力を発揮します。
そのほか、分散型ストレージは、自身の持つデバイスの空き容量を他者に貸し出す仕組みを備えていることから、価格競争を発生させ、現在のクラウドストレージ市場に価格破壊をもたらす可能性があります。
市場の価格は、一般的に供給量が多くなると、低くなりやすいです。このため、ストレージ市場における価格競争は、ストレージの借り手がより安い価格で、ストレージを借りられるようになると考えられます。
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Web3は、メタバースとNFTに深く関わっていると言われています。
なぜなら、ブロックチェーンで管理されるNFT(非代替性トークン)は、メタバース上で取引される土地やアイテムに姿に変え、メタバースの世界観を支えているからです。
実際、現実に近い世界観を仮想空間上に構築するメタバースは、The SandboxやDecentralandなど、ブロックチェーンを用いたサービスが続々と登場しています。
メタバースをブロックチェーン上に構築すると、仮想世界を歩き回る仮想のキャラクター(アバター)を他者が乗っ取ることが不可能になり、メタバースの信用性担保につながります。
さらに、メタバース上で売買される仮想のアイテムや土地、武器をNFT化することで、これらの商品が本物であると証明可能になります。NFT化をすると、それらの商品にそれぞれ固有のIDや情報が付帯され、「非代替性トークン」と言われる通り、唯一無二の固有データとなるからです。
以上のように、メタバースとNFTは、Web3を代表するプラットフォームや仕組みとして、Web3と強く結びついていると言えるでしょう。
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ここからは、著名なユースケースについて紹介します。ユースケースは検索ブラウザやストレージ、ブロックチェーンゲームなど、多種多様であるため、興味を持ったものを利用してみるとよいでしょう。
Braveは、個人情報を自己管理できるWeb3のメリットがフル活用された検索プラットフォームです。
代表する機能が、「Brave Shields」と呼ばれる広告ブロック機能です。この機能により、個人データを収集する広告がブロックされ、行動履歴に基づく広告が表示されることがありません。
また、Braveでは、広告表示を許可することが可能です。この場合、ユーザーは、視聴した広告の数に応じ、Basic Attention Token(BAT)という暗号資産を報酬として獲得できます。
IPFSは、P2Pネットワークを活用し、データそのものを分散管理するサービスです。
Filecoinと呼ばれる分散型のファイルシステムにより運用され、現在のWebサイトの閲覧などに使われるプロトコルであるHTTP(Hyper Text Transfer Protocol)を補完、あるいは置換するプロトコルになるのではないかと言われています。
IPFSの最大の特徴は、ユーザーがコンテンツ識別子(CID)と呼ばれるIDを用いて情報の要求を行い、ネットワーク内キャッシュ(保存)から情報を取得するコンテンツ指向型プロトコルになっている点です。
これにより、IDを指定すれば、複数の場所から同時に分割されたファイルをダウンロードすることが可能になります。
このような形でデータが分散管理されているため、特定の管理者を必要としません。このため、特定のデータサーバーに情報、データが集約される従来型のWebの問題を解消する解決策になるのではないかと期待を集めています。
My Crypto Heroesは、歴史上のヒーロー(NFT)とともに、マイクリワールドの制覇を目指す日本発祥のブロックチェーンゲームです。
My Crypto Heroes内でのゲームプレイは、クエストとプレイヤー対戦の2種類に分かれます。
クエストでは、プレイヤーが経験値とレアアイテムを入手するために、ノードと呼ばれるダンジョンに入り、エネミーと戦います。エネミーを全滅させると、クリプトエナジーと呼ばれると呼ばれる経験値と、デジタルアイテムのNFTであるエクステンション(武器)が手に入ります。
一方、プレイヤー対戦は、大会を通じて他のプレイヤーと戦います。対戦を繰り返し一番になると、プレイヤーは、トッププレイヤーの称号を手にし、NFTやデジタルアセットといったアイテムを手中に収めます。
My Crypto Heroesは、以上のゲームプレイを通じ、自分の資産となるNFTを収集し、最終的には換金するのが醍醐味となっています。
The Sandboxは、イーサリアム・ブロックチェーンを基盤にしたNFTゲームです。
Sandboxは直訳すると砂場ですが、定められた目的やゴールがなく、仮想世界の中を自由に行動できることから、命名されました。
その理念通り、The Sandboxでは、ユーザーが、水や稲妻、砂などの資源のほか、人間や野生生物といった複雑な要素を組み合わせ、独自の世界を構築し、構築した世界の上を自由自在に移動します。
世界を構成する要素だけでなく、世界を構築する方法も多様性に満ちているのも特徴の1つです。例えば、VoxEditやGame Makerなど、キャラクターやアイテムといったアセットや、ゲーム自体をユーザーの手で作るための無料ツールが公開されています。作成したアセットは、NFTとして販売することもできます。
Web3は徐々に利用が広がってきたと言っても、ゲーム市場やブロックチェーン市場など、ほんの一部の市場に過ぎません。社会に浸透するには、政府の後押しが不可欠となるでしょう。
そうした中、自民党デジタル社会推進本部直下のNFT政策検討PTは2022年3月30日、会議を開き、Web3時代を見据えた、新たなデジタル戦略に関する提言案を取りまとめました。
提言案では、Web3やNFTを新しい資本主義の成長の柱に位置付け、Web3担当大臣を置き、経済政策の推進を図るべきとしています。
このような動きは、Web3の推進において、大きな動機づけになりうると考えられます。
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Web3は、ブロックチェーンを基盤としたDApps(分散型アプリケーション)がその実体であり、サービスの中には、契約が自動履行されるスマートコントラクトが搭載されているものも少なくありません。
こうした自動実行システムは、Web2.0にはない画期的な仕組みです。この点、Web3は、多くの人の稼ぎ方を変え、ビジネスモデルを変え、組織の在り方を変えるポテンシャルを持っていると言えるでしょう。
本記事を通じてWeb3を新たなデジタルトランスフォーメーション(DX)施策と捉え、導入に取り組んでいただけますと幸いです。
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