DAO(分散型自律組織)とは?Web3における重要性や事例までわかりやすく解説

DAO(分散型自律組織)とは?Web3における重要性や事例までわかりやすく解説

DAOとは、特定の所有者や管理者が存在せず、参加者同士の投票で意思決定し、事業やプロジェクトを推進する組織を意味します。

DAOは、ブロックチェーン技術を活用した次世代のインターネット、「Web3」を実現する仕組みの1つとして注目されています。DAOの意味や特徴、メリットや問題点、事例について確認していきましょう。

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DAOとは? 伝統的な組織との違い

DAOとは、Decentralized Autonomous Organization(分散型自律組織)の頭文字を取った言葉です。特定の所有者や管理者が存在せず、参加者同士の投票で意思決定し、事業やプロジェクトを推進する組織を意味します。

「ブロックチェーン技術」とは、取引記録を分散的に処理および記録する分散型台帳の一種です。DAOは、ブロックチェーン技術を活用した次世代のインターネット「Web3」を実現する仕組みの1つとして注目されています。

DAOでは、組織の意思決定はメンバーによる投票で行います。投票内容の結果は、ブロックチェーン上のルールであるプログラムに従い、自動的に実行し表示可能です。

ブロックチェーンの多くは、オープンソースとしてプログラムのソースコードが公開されています。つまり、ブロックチェーン上のルールであるプログラムは、誰もが見える状態です。

このような仕組みのため、誰かが途中で投票に対する改ざんや不正を行うことは不可能です。さらに投票結果はブロックチェーンに記録され続けます。

ルールや結果を誰もがいつでも参照できるので、透明性が高いことはDAOの特徴です。

従来の組織と違い、特定の所有者や管理者が存在せずとも、民主的な組織運営を可能にします。

★DAOとは、特定の所有者や管理者が存在せず、参加者同士の投票で意思決定し、事業やプロジェクトを推進する組織
・ブロックチェーン技術を活用した次世代のインターネット「Web3」を実現する仕組みの1つ
・組織の意思決定はメンバーによる投票で実施され、途中で投票に対する改ざんや不正を行うことが不可能
・ルールや結果を誰もがいつでも参照できるので、透明性が高い

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DAOの特徴と仕組み

DAOの特徴として、「ブロックチェーン」、「スマートコントラクト」、「ガバナンストークン」があります。それぞれそのようなものか詳細を確認していきましょう。

ブロックチェーン(管理者がいなくてもセキュリティを保証できる)

ブロックチェーン技術とは、ブロック(取引記録)を分散的に処理および記録する台帳技術の一種です。

データを通信する際に取引データを英数字の羅列に暗号化する技術「ハッシュ」と、本人確認をシステム上で行えるしくみである「電子署名」(デジタル署名)を用いることで、データの改ざんを容易に検出できる仕組みを持っています。

ブロックチェーンでは、すべての参加者が取引履歴をコピーし続ける「自律分散システム」という特徴があります。自律分散システムがブロックチェーンの大きな特徴であり、管理者がいなくとも公正な取引の履歴を安定して記録し続けることが可能です。

スマートコントラクト(管理者がいなくても取引を実行できる)

スマートコントラクトとは、一定のルールを満たす動作が発生した際に、ブロックチェーン上で実施されるプログラム、およびその仕組みを指します。

ブロックチェーンは仕組み上、クローズドソースでの開発が困難であり、基本的にはオープンソースで構築されています。つまり、ルールがソースコードとして誰でも閲覧できる状態です。

このように、あらかじめ誰もが閲覧可能なルールを、自動で実施する仕組みがスマートコントラクトです。

DAOでは、ルール化された貢献に応じた所有権の分配や、取引の実施といった作業を、すべてスマートコントラクトとして記録や履歴を残しながら実施します。

管理者がいなくても、手数料を削減しながら信頼性の高い取引の実施が可能です。

ガバナンストークン(管理者の代わりに組織の管理・運営を行える)

DAOの運営方針といった意思決定に関わるには、「ガバナンストークン」を保有する必要があります。ガバナンストークンとは、DAOで使用される仮想通貨(暗号資産)です。

ガバナンストークンがあれば組織運営の提案や、意思決定の投票に参加できます。イメージとしては企業の株式に近いものです。

株式との大きな違いとしては、ガバナンストークンで決められる範囲があらかじめルールで指定されていることや、発行上限が設定されている点です。

ガバナンストークンを入手するには、他の仮想通貨と同様、仮想通貨取引所で購入するか、もしくは、DAOごとに定められたルールをもとに組織へ貢献を行う、という方法があります。

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DAOが注目されている理由

DAOの考え方は、参加するすべてのメンバーで価値を共有および所有するというものです。これはデジタルコンテンツの所有権が、唯一無二であることを証明する技術「NFT」から生まれました。DAOとNFTは、どちらもブロックチェーン技術で実現されているため、よく関連付けられます。

今後、DAOやNFTが主流になってくると、ユーザーがアバターを使って社会生活を送る「メタバース」にDAOの仕組みをもった組織も生まれるでしょう。そうなると、メタバースで人々が働き、暮らすといった可能性が出てきます。

このようにNFTやメタバースといったワードとの関連性から、DAOは注目を集めています。さらに、インターネットに接続できる環境さえあれば、DAOの構築や参加が可能といった参入障壁の低さも、注目を集める理由の1つといえるでしょう。

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DAOを活用するメリット

DAOを活用するメリットについて、見ていきましょう。

高い透明性をもつプロセス

DAOはブロックチェーン上に構築されており、取引履歴はすべて記録され、誰でも参照可能です。

既存の組織では、不透明な取引記録が存在する可能性もありますが、DAOではそのようなことはありません。

取引のルールは誰もが参照可能な箇所に事前に定義されているため、ルールを理解していなかったとクレームをつける人がいないのは大きなメリットです。

誰でも参加できる

DAOには、そのDAO関連の仮想通貨を保有していれば参加可能です。

そして組織の方向性はガバナンストークンの保有数にのみ応じて決まります。そのため国籍や年齢、人種、性別関係なく、すべての人が組織運営に参加できる可能性をもちます。

メンバーは、魅力のあるルールをもつDAOに貢献が可能であるため、労働意欲も上がるでしょう。

管理コストを削減できる

一般的な組織に存在する、特定の所有者や管理者が存在しないため、管理コストが削減可能です。

組織運営は、そのDAOに魅力を感じるユーザーが実施します。組織構造は既存組織のようなものではなく、フラットな簡略化されたものです。

上司に相談するといったアクションもなくなるため、低コストかつスピード感がある組織体制となるでしょう。

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DAOをめぐる問題

さまざまなメリットをもつDAOですが、重要な問題点もいくつかあります。どのようなものか確認していきましょう。

法整備と補償

DAOに関する法整備は、多くの国や地域において追いついていないのが現状です。
ブロックチェーンを基盤としたシステムの運営は、既存の法律の管轄外でなされています。

日本の仮想通貨取引所の場合、金融庁の認可を受けて営業しています。そのため、ハッキングといった被害が発生した場合、被害に対する措置を受けられる可能性があります。

しかしDAOの場合、ハッキング被害の措置義務はありません。

意思決定に時間がかかる

DAOでの運営方針決定は、ガバナンストークンを用いた投票で行われます。つまり、全員の投票を待たなければならず、時間がかかります。運営方針決定中にハッキングやプログラム上の不具合が発生した場合は、そのような事態が収拾するまで待たなくてはなりません。

このように、DAOは不測の事態の場合、スピーディーな対応が難しい可能性があります。

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世界的なDAOコミュニティ事例

DAOを活用したコミュニティ事例はどのようなものがあるか、確認していきましょう。

金融

DeFi(分散型金融)を代表するプロジェクトとしてMakerDAO(メーカーダオ)があります。

仮想通貨の中でも、米ドルといった法定通貨に紐付けされ、取引価格が安定するよう設計されたものをステーブルコインといいます。分散型ステーブルコインを生み出した最初のコミュニティがMakerDAOです。

MakerDAOはメーカー財団(Maker Foundation)という非営利団体が開発し、DAOによって運営されています。プロジェクトやチーム管理、アップデート、普及といった活動を、すべてDAOで運営していくことを目的としています。

ゲーム

Yield Guild Games(YGG)は、ブロックチェーンゲームプレイヤーを集めたゲームギルドです。ゲーム業界のベテランゲームギルドとは、定期的に一緒にプレイし、相互利益のために協力し合うプレイヤーのコミュニティのことです。

今や、ブロックチェーンやNFTといった仕組みにより、ゲーム内資産といった「デジタル財産」を暗号資産で取引可能となり、ゲームによっては遊んで稼ぐ「Play to Earn」(P2E)が可能です。

YGGは世界中のプレイヤーをコーディネートし、メンバー同士で協力しながらP2Eゲームで暗号資産報酬を獲得していきます。

このYGGのメンバーは、「YGG DAO」と呼ばれるイーサリアム上に構築された、スマートコントラクトに基づいたDAOを用いた意思決定が可能です。今後どのようなゲームをプレイしていくか、どのようなものに投資していくか、そして報酬の発行にもYGG DAOは使われています。

音楽

MODA DAOは、音楽業界をWeb3の世界に橋渡しするために作られた初のDAOです。

MODA DAOは、既存の音楽業界プラットフォームを介さず、アーティストとファンが有意につながり、価値の還元を目的としています。

MODAは、オーストラリアのDeFiプロジェクトSynthetixが以前使用していたスマートコントラクトと、法的枠組みや専門知識を活用したものとなっています。

人材

Braintrustは、DAOを利用した、職業や仕事のマッチングサービスです。

BraintrustのDAOは、人材の紹介や審査、顧客の紹介といった、ユーザーの貢献度に応じてガバナンストークンで所有権を分散します。

この仕組みのため、手数料を削減し、より質の高い人材維持サービスが提供可能です。

クラウドファンディング

ConstitutionDAOは、サザビーズで行われるオークションにおいて、アメリカ合衆国憲法の原本を競り落とす目的で、クラウドファンディング活動のために発足されたDAOです。

ConstitutionDAOの実態は、コミュニケーションツール「Discord」における暗号資産コミュニティメンバーです。

資金調達は仮想通貨イーサリアム(ETH)で実施され、わずか1週間で4700万ドル(当時約54億円)もの資金を集めました。

オークション結果は、他の匿名バイヤーが4317万ドル(約49億円)という、ConstitutionDAOが集めた資金より低い資金で落札することになりました。理由としては、仮に落札できたときに、憲法の原本を適切に管理するための資金がないため、とされています。

この事例は、一般の人々のDAOへの関心を盛り上げ、今後のDAOの発展に寄与するものといえるでしょう。

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DAOの将来性

DAOは透明性が高い仕組みであるため、非営利活動と相性が良く、今後もさまざまな業種でのDAO利用が進んでいくと考えられます。

存在するDAOの数はまだわずかですが、今後さまざまなDAOプロジェクトの活動が人々の注目を集めていくでしょう。

日本においても2022年6月7日、「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太方針2022)が閣議決定されました。

この中で、インターネット上の信頼の仕組みである「トラステッド・ウェブ」(Trusted Web)実現に向けた取り組みや、ブロックチェーン技術を基盤とする、NFTやDAOの利用などのWeb3.0(Web3)に向けた環境整備を進めるとしています。

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まとめ:DAOは未来の働き方を変える可能性をもつ

ブロックチェーン技術はDeFiやNFTを実現し、DAOという概念によって、人が働くためのさまざまなコミュニティを生み出しました。

DAOは、世界各国で法整備が追いついていないといった重要な問題もありますが、透明性が高く、公平な仕組みであることから今後とも注目を集めていくでしょう。

日本でもブロックチェーン技術を基盤とするNFTやDAO利用環境が整備されるに従い、メタバースで人々が働き、暮らしていく未来も考えられます。

DAOやNFT、ブロックチェーンといった用語や技術を理解の上、Web3の動向をしっかりと見定め、組織の方向性をいつでも軌道修正できるよう準備をしていきましょう。

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