ChatGPTの台頭をきっかけに、生成AIへの関心が急速に高まっています。文章や画像、音声など多様なコンテンツを生成できる生成AIの利便性が評価される一方で、その普及に伴うセキュリティリスクも浮上しており、規制や対策の必要性をめぐる議論も活発化しています。
本記事では、生成AIを安全に活用する上で欠かせない、リスクの理解や対策について解説します。
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目次
生成AI活用時のセキュリティリスクとしては、情報漏洩、法令違反、プロンプトインジェクション、著作権侵害、ハルシネーション、マルウェア感染、不正プログラムの混入といったものが挙げられます。
企業が対策を講じずに生成AIを導入・活用すると、機密情報の流出や意図しない虚偽情報の拡散、システムの乗っ取りなどによって、信用を失墜したり多額の損害を被ったりしてしまうおそれがあります。企業が生成AIを導入・活用する際には、これらのリスクへの対策を講じておきましょう。
★まとめ ・生成AIの活用には、情報漏洩、法令違反、プロンプトインジェクション、著作権侵害、ハルシネーション、マルウェア感染、不正プログラムの混入などのリスクがある ・企業がセキュリティリスク対策を講じずに生成AIを導入すると、信用失墜や損害を被るおそれがある ・企業の生成AI導入にはセキュリティ対策が不可欠 |
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生成AIの利用において最も注意すべきセキュリティリスクのひとつが、情報漏洩です。生成AIは、業務効率化の強力なツールとなる一方で、使い方を誤ると、情報漏洩を招きます。
たとえば、生成AIの開発者がAIに学習させるためにソースコードや顧客データを入力した場合、たとえ開発者がそれらの情報を流出させる意図はなくとも、AIとユーザーとのやりとりを介して流出してしまうリスクがあります。
また、ユーザーとして生成AIを搭載したツールを利用する場合にも、情報漏洩に注意が必要です。たとえば、生成AIを使って議事録を作成するような場合、会議で交わされた機密情報データをAIに入力したために、意図せず内容が流出してしまうようなケースが考えられます。
生成AIの導入を検討する際は、このような具体的なリスクと深刻度を理解し、対策を講じる必要があります。
生成AIは、リアルな画像や動画、音声を簡単に生成できるため、虚偽情報の流布や詐欺行為に悪用されるリスクをはらんでいます。実際に、生成AIを用いて捏造した偽情報がSNSで拡散されたり、生体認証や本人確認をすり抜ける高度ななりすましによる詐欺事件が発生したりしています。
企業が不用意に偽情報を拡散すれば、会社の信用失墜や、場合によっては他者に対する名誉棄損にもつながります。また、意図せず詐欺行為に加担してしまうリスクもあります。
生成AIの導入・活用を検討する際は、自社が意図せず偽情報を流布したり犯罪行為に利用されたりするリスクを考慮して、対策を講じましょう。
生成AIのセキュリティリスクとして、プロンプトインジェクションの脅威も現実化しています。プロンプトインジェクションとは、悪意のあるユーザーがAIに対して特殊な指示や質問(プロンプト)を入力することで、AIの制御を乗っ取り、機密情報などを引き出す攻撃手法です。
2023年2月には、実際に米国の大学生がマイクロソフト社の検索エンジン「Bing」に搭載された生成AIに対してプロンプトインジェクションを仕掛け、非公開の指示や開発コードネームなどの機密情報を入手した事例が報告されています。
巧妙化するプロンプトインジェクションは、生成AIの脆弱性を突く攻撃として、企業にとって看過できないセキュリティリスクといえるでしょう。
生成AIが学習するデータのなかには、文芸作品や絵画、音楽などの著作物も含まれます。このため、生成AIによって生成されるコンテンツが著作権を侵害してしまうリスクがあります。
AIに既存の著作物を学習させること自体は、通常、著作権者の許諾なく認められています。しかしながら、生成されたコンテンツを公開・販売する場合、既存の著作物との類似性や依拠性が認められれば、著作権侵害として損害賠償請求や差止請求、刑事罰の対象となる可能性があります。
生成AIでコンテンツを作成し、公開・販売する際には、著作権侵害に問われるリスクがないか確認を徹底しておきましょう。
生成AIは、ハルシネーションと呼ばれる現象を起こすことがあります。生成AIのハルシネーションとは、生成AIが、学習したデータとは異なるデータを出力したり、存在しない事実を事実であるかのように生成したりしてしまう現象です。
ハルシネーションの原因は、AIが学習データのパターンをつなぎ合わせて文章や画像などを生成する過程で、文脈を正しく理解できず、不自然な内容や虚偽の内容を生成してしまうためといわれています。とくに、高度な専門知識を要する分野や数値データの処理などで発生しやすい傾向にあります。
企業が生成AIのアウトプットを検証することなく、誤った情報に基づいた意思決定をしてしまうと、損失を被るだけでなく、企業の信頼を失墜させるリスクもはらんでいます。
ChatGPTなどの生成AIには、新たに外部サービスと連携できるプラグイン機能が導入されました。プラグイン機能で利便性が向上した一方で、この機能を介して特定のウェブサイトへのアクセスを誘導し、マルウェアに感染させるような新たなサイバー攻撃も登場しています。
生成AIを利用する企業としては、このような生成AIの進化がもたらす新たなセキュリティリスクを認識し、対策を講じておくべきでしょう。
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生成AIは、開発段階からセキュリティリスクにさらされています。とくに、オープンソースのソフトウェアやライブラリを組み合わせて開発が行われる場合、悪意のあるコードが紛れ込む可能性も否定できません。
万が一、生成AIに不正プログラムが仕込まれていた場合、企業が機密情報を入力したとたんにその情報が外部へと漏洩したり、システムが乗っ取られてしまったりと、深刻な被害が生じる可能性があります。
開発元が不明なプログラムや、セキュリティ対策が十分でないプログラムは利用を控えるなど、慎重な判断が必要です。
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生成AIを安全に導入し、活用するには、「生成AI活用のリスク評価と活用範囲の設定」から「生成AI活用方法の定期的な見直し」まで、7つのステップがあります。
生成AIの導入に先立ち、まずは生成AI活用にともなうセキュリティリスクを適切に評価し、活用を許可するかどうか、許可するのであればどの範囲での利用を許可するのかを明確にしておかなくてはなりません。
リスク評価と活用範囲を設定するには、過去の情報漏洩事例などを参考に、自社で生成AIを活用した場合の具体的なリスクとその深刻度を評価するとよいでしょう。
具体的には、個人情報を含むデータや機密性の高い業務については慎重に利用の可否を検討し、適切な範囲を設定しておくことで、情報漏洩やコンプライアンス違反のリスクを抑制できます。
生成AIを安全に活用するには、自社の状況や目的に沿った最適なAIツールを選定することが重要です。
ツール選定においては、機能や性能だけでなく、データの暗号化やアクセス制御、プライバシー保護といったセキュリティ面の充実度にも注目しましょう。また、導入時にユーザーが入力したデータを学習データとして使用しない「オプトアウト」の選択肢があるかどうかも、重要なチェックポイントです。
最適なAIツールを選定し、適切な設定を行うことで、セキュリティリスクを最小限に抑えましょう。
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生成AIのアウトプットは、入力されるデータに大きく左右されます。このため、セキュリティ対策の観点からも、正確性、公平性、機密性を担保したデータマネジメントが重要になります。
生成AIを活用できる範囲や、入力が禁止される機密情報の範囲を明確にルール化し、適切なデータ管理体制を構築することで、情報漏洩や不正確な情報生成のリスクを最小化しましょう。
従業員が不用意に機密情報を生成AIに入力し、機密情報や秘匿すべき情報が流出してしまうような事態を防ぐには、明確な運用ルールを定め、ガイドラインやルール、マニュアルといった形で文書化し、周知しておくことが不可欠です。
具体的には、ガイドラインの策定目的や前提事項、対象とする生成AI、データ入力に関する事項、生成物利用に関する事項などを規定し、従業員が遵守すべき基準を明確にしましょう。
生成AIの導入・運用に関しては、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)などがガイドラインを公開しています。このような公開のガイドラインを参考にしながら、自社の状況に適したガイドライン、ルール、マニュアルを策定するとよいでしょう。
ガイドラインやルール、マニュアルを策定したら、ユーザーである従業員のセキュリティ意識とAIリテラシーの向上に取り組みましょう。
セキュリティリスクを低減するには、ユーザーである従業員にガイドラインなどを周知すべきことは、言うまでもありません。加えて、具体的なケーススタディや注意点を含めた実践的な従業員教育も欠かせません。たとえば、情報漏洩のリスクや、誤った情報の生成を防ぐための適切な入力方法、アウトプットの確認方法などの指導が効果的です。
従業員が生成AIのリスクと可能性を正しく理解し、責任ある行動を取れるよう、継続的な教育と啓蒙活動が重要です。
生成AIのセキュリティ対策は、導入時だけでなく、運用開始後も継続的に見直し、改善していかなくてはなりません。利用ルールが守られているかを定期的に監査し、違反があれば適切な措置を講じる必要があります。
生成AIは、試行錯誤を繰り返しながら、段階的に精度を高めていくものです。
定期的な監査で問題点や改善点を洗い出し、ルールやシステムを見直すことで、より安全で効果的に生成AIを活用できるでしょう。
生成AIの技術は、日進月歩で進化しています。新たな機能やサービスが登場する一方で、未知のセキュリティリスクが発生する可能性もはらんでいます。テクノロジーの進化と新たな脅威の出現に応じて、セキュリティ対策もアップデートしていきましょう。
生成AIは、導入して終わりではありません。変化するリスクに対応し、安全性を確保しながらより良い活用方法を探り続けることが、生成AIを企業活動に役立てる鍵となります。最新の技術動向やセキュリティに関する情報にアンテナを張り、自社の利用状況に合わせて定期的に生成AIの活用方法を見直しましょう。
ゼロトラストセキュリティとは、「何も信頼しない」を前提に、すべてのアクセスを検証するセキュリティモデルです。
従来のセキュリティは、社内と外部のネットワークを区別し、社内を信頼する考え方でした。しかし、クラウドの普及によって社内外のネットワークの境界が曖昧になり、従来型のセキュリティは限界を迎えつつあります。
ゼロトラストセキュリティでは、通信経路の暗号化、多要素認証の強化、すべてのアクセス元の検証を通じて、外部からの脅威だけでなく、内部からの情報漏洩も防ぎます。生成AIではクラウド利用が主流であるため、ゼロトラストセキュリティの導入が有効です。
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生成AIは、利便性の高いツールである一方、情報漏洩、法令違反、プロンプトインジェクション、著作権侵害、ハルシネーション、マルウェア感染、不正プログラムの混入など、企業の信用失墜や損害につながるセキュリティリスクをはらんでいます。
したがって、生成AIを安全に導入・活用するには、リスクを把握したうえでセキュリティ対策を徹底しなくてはなりません。まずはリスク評価を行い、生成AIの活用範囲を明確化します。そのうえで、最適なAIツールを選定し、データマネジメントできるよう、ガイドラインやルールを策定します。ガイドラインなどを周知徹底するには、実践的な従業員教育が欠かせません。また、定期的な監査と活用方法の見直しも求められます。
生成AIがはらむリスクへのセキュリティ対策を徹底し、安全かつ効果的に生成AIを活用しましょう。
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