汎用人工知能(AGI)とは?現状や可能性、特化型との違い、研究事例を解説

汎用人工知能(AGI)とは?現状や可能性、特化型との違い、研究事例を解説

汎用人工知能(AGI)とは、人間と同じようにさまざまな課題を処理することができる人工知能です。人工知能の中でも、特化型人工知能と異なり汎用性と自律性を持つことが特徴とされています。

現在、汎用人工知能には多くの関心が集まり、OpenAIやGoogle Deepmindなど、さまざまな企業・組織がその実現に力を入れています。

本記事では、汎用人工知能とは何か、現状や可能性、特化型との違い、研究事例について解説します。

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汎用人工知能(AGI)とは

汎用人工知能(AGI)とは、想定外の状況でも自ら学習し、能力を応用して処理することができる、人間に近い知能を持つ人工知能を指します。Artificial General Intelligenceの頭文字から、AGIと呼ばれます。

汎用人工知能(AGI)は、従来のAIよりも汎用性、自律性に富むことが特徴です。プログラムされた特定の状況以外の課題に対しても問題解決を図ることができます。

人工知能研究の最終的な目標として、汎用人工知能の実用化には高い期待が寄せられています。数多くの企業・研究機関が実現に向けて取り組んでいますが、未だ実現はされていません。

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汎用人工知能が実現したら起きること

多くの期待が寄せられる汎用人工知能ですが、もし実現したらどのようなことが起こるのでしょうか。

まず、コールセンターを例に挙げます。自然言語処理が得意な人工知能が、人間からのさまざまな問い合わせの文脈を理解し、人間の発話に近い音声で応答します。まるで人間が問い合わせに対応しているように、人工知能が自然な対応を行う日がくるかもしれません。

ビジネスの分野だけでなく、例えば芸術の分野での活躍も考えられます。音楽の分野では、汎用人工知能が複数の人間とアレンジも含めたジャズのライブ演奏ができるかもしれません。文学の分野でも、文学賞をとるような長編小説が書ける人工知能が登場する可能性があります。

これまでSFの映画で描かれてきた夢のような技術が、現実になる日がくるかもしれません

汎用人工知能と特化型人工知能の違い

汎用人工知能は、人工知能の種類の1つです。よく用いられる人工知能の分類として、「汎用型・特化型」と、「強いAI・弱いAI」があります。それぞれの分類方法についてみていきましょう。

まず、汎用人工知能と特化型人工知能は、主にその『対象の幅広さ』により区分されます。

汎用人工知能

汎用人工知能は、人間のように想定外の事象も含めて幅広い対象に推論が行える人工知能です。これまでみてきたように、自ら学習して進化する能力を兼ね備えています。

特化型人工知能

特化型人工知能とは、数的処理や論理的処理、言語処理などをはじめとする特定の分野でのみ能力を発揮できる人工知能です。特定の分野に対して、膨大なデータに基づいた確度の高い返答ができることが特徴とされます。

画像や音声認識、チェスや囲碁、将棋などの対戦、法律や医療、故障診断などの専門分野に特化したものなどが挙げられます。

ただし近年では、テキストや画像、音声、動画などの複数の種類の情報を一度に処理することが可能なマルチモーダルAIも登場しています。たとえばOpenAI社のGPT-4は、テキストと画像の入力が可能で、画像の内容を説明するテキストなどが生成可能です。

このようなマルチモーダルAIの延長線として、汎用人工知能が実現される可能性もあるかもしれません。

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強いAIと弱いAIの違い

一方、強いAIと弱いAIは『人間のように知的であるか(真の推論と問題解決の能力を身に付けられるか)』どうかにより分類されます。哲学者のジョン・サールによって考案された用語です。

汎用人工知能と強いAIの違いは、どの観点でAIを区分するかという点です。「対象の幅広さ」によって区分する汎用型人工知能に対して、強いAIは「知性があるかどうか」で区分します。

強いAI

強いAIとは、人間のような知能や行動、そして「自意識」を持つ人工知能です。自発的に学習や行動を重ねて知能を蓄積します。

たとえば表情から人間の感情を読み取り、一緒に笑ったり涙を流したりするような感情を持つ可能性も考えられています。

まさしく、アニメのドラえもんが強いAIの姿に近いと考えられます。

弱いAI

一方、弱いAIとは現在すでに実現されている、問題解決や推論を行う人工知能を指します。強いAIとは異なり、AIが自意識を持つことや人間のような幅広い認知能力を示すことはありません。

代表的な例として、『ディープ・ブルー』のようなチェス専用プログラムなどが挙げられます。
また、ビジネスで業務の一部が円滑に運ぶよう人間の能力をバックアップするようなシステムも弱いAIといえるでしょう。

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汎用人工知能はいつ実現するのか

ここまで解説してきた汎用人工知能は、いつ実現するのでしょうか。そもそも、本当に実現できるのでしょうか。これには諸説あり、見解が分かれています。

米国の未来学者レイ・カーツワイルは、著書「The singularity is near」にて、2029年に汎用型AIが誕生すると述べています。

一方で、ロボット研究者として有名なロドニー・ブルックスは、未来学者のマーティン・フォードの著書「Architects of Intelligence」のインタビューで、「2200年までに、汎用型AIが50%の確率で実現される」と述べています。

研究者の間でも、汎用人工知能の実現時期については大きく見解が分かれていると言えます。

現状のAI活用例

これまでみてきたように、汎用人工知能の研究は進んでいますが、現在の世界で実際に活用されているのは特化型人工知能です。

特化型人工知能は、現在どのように使われているのでしょうか。代表的な例として、以下のようなものが挙げられます。

ChatGPTと汎用人工知能の関係性

ChatGPTは、OpenAI社が開発した最新の対話型AIです。大量のデータを学習し、入力に対して人間のように自然な回答を生成する、大規模な自然言語処理モデルです。2022年11月のリリース以降、世界中で大きな話題となっており、既に利用されている方も多いでしょう。

2023年3月に発表されたより高性能な大規模言語モデルGPT-4に対して「汎用人工知能の初期バージョンである」という意見もありますが、現時点ではあくまでも自然言語処理能力と学習能力を掛け合わせた優秀なソフトであるという意見が主流です。汎用的な知能とは少し異なるとして、汎用人工知能とするには否定的な意見も多くみられます。

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AIの進化で仕事はなくなる?

AIの進化によって、人間の仕事がなくなるのではないかとよく言われていますが、本当に人間の仕事をAIが代替できるのでしょうか?

これまで解説したように、現在のAIは特化型人工知能が主流です。まだ「自意識」を持つことはできず、特定の領域において膨大なデータに基づいた確度の高い応答ができるといったレベルにとどまっています。人間の持つ『感覚』や『好み』、『プライバシー(個人情報)』を持つことはできません。これらの得意・不得意領域に基づき、AIによって「なくなる仕事」と「なくならない仕事」は明確に分かれると言えます。

また、OpenAI社のCEOサム・アルトマン氏は「(AIの雇用に関する)ほとんどの予測は間違っている。人々が想像するより雇用へのインパクトはなく、生産性が向上しても時間と共にまったく新しい仕事が生まれるだろう」と述べています。

出典:OpenAIのサム・アルトマンCEO「AIはさらに賢く」 慶応大学で意見交換 – 日本経済新聞

★AIの進化で「なくなる仕事」と「残る仕事」について詳しくはこちら

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汎用人工知能(AGI)の研究・開発に取り組む企業例

汎用人工知能(AGI)の研究・開発に取り組む企業、そしてその取り組みには、どのようなものがあるのでしょうか。代表的な企業として、OpenAI、Google DeepMind、全脳アーキテクチャ・イニシアティブの3社の取り組みを紹介します。

OpenAI

対話型AIサービスChatGPTを手掛けるOpenAI社CEOのサム・アルトマン氏は、汎用人工知能(AGI)の開発はリスクを伴う恐ろしいプロジェクトであるとしながらも、「一般的に人間より賢いAIシステム」と定義し、AGIの開発を人類史上最重要事項と語っています。

同社は、AGI実現への短期および長期のロードマップを発表しました。短期計画としては、以下の3つを挙げています。

  • AIモデルの現実世界への展開では、ユーザーとユースケースを注意深く監視し、維持する
  • AIモデルの展開で、「初期設定」は制限し、各ユーザーによる調整を可能にしていく
  • システムの管理方法やシステムが生み出す利益を分配する方法、システムへのアクセスを公平に共有する方法という3つの問題についてグローバルな対話を行う

AGI開発の進捗が現在のペースで続けば、大きな変化が驚くほど早く起こる可能性があると述べています。

出典:OpenAI、AGI(人間より賢いAI)へのロードマップを公表 「世界に深刻な害を及ぼす可能性」回避のために – ITmedia NEWS

Google DeepMind

2014年にグーグルに買収されたDeepMindは、2023年4月にGoogle ResearchのBrainチームと統合し、新たにGoogle DeepMindという組織としてAI分野の研究・開発に注力すると発表しました。

2010年創業のDeepMind社は、AIとしてはじめてプロ棋士を破った「AlphaGo」や、深層学習を用いた音声合成技術の「WaveNet」などのプロジェクトで知られています。一方Google ResearchのBrainチームは、現在の自然言語処理研究の礎となる「Transformers」モデルを開発し、現在のAI研究の最前線を走っています。

新組織Google DeepMindのデミス・ハサビスCEOは「AIそしてAGIは、歴史上最大の社会的、経済的、科学的変革を推進する可能性を秘めている」とし、「Google DeepMindの設立により、その未来により早く到達できると信じている」と語っています。

出典:ASCII.jp:グーグルのAIチームとDeepMindが合併、新組織「Google DeepMind」でAGI開発を目指すGoogle、AGIのある未来を目指しGoogle DeepMind立ち上げ – ITmedia NEWS

全脳アーキテクチャ・イニシアティブ

日本でもさまざまなAIに関するプロジェクトが進められています。そのひとつが、東京大学大学院 医学系研究科 脳神経医学専攻の山川宏客員研究員が代表を務める、NPO法人全脳アーキテクチャ・イニシアティブです。

データが少ない領域への対応能力が問われる汎用人工知能を実現するには、獲得した知識を再利用して未知領域にも対応する技術が必要です。そのため、同法人は「脳全体のアーキテクチャに学び、人間のようなAGIを創る」アプローチ(=全脳アーキテクチャ)に注力しています。

人の認知機能を脳全体の神経回路を参照しながら再現する人工知能ソフトウェアを実装する際の仕様情報となる「脳参照アーキテクチャ」データ形式と、それを用いた開発方法論を標準化するなど、研究を続けています。

出典:脳のように振る舞う汎用人工知能を実装するための開発方法論を東大が標準化 | TECH+(テックプラス)

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まとめ:汎用人工知能は、夢の技術からいよいよ現実のものへ

本記事では、汎用人工知能とは何か、現状や可能性、特化型との違い、研究事例を解説してきました。

汎用人工知能が実現するかはまだ不明ですが、現在のAI技術はビデオ、オーディオ、画像、テキストなどを一度に処理するマルチモーダルAIの方向へ進化しています。マルチモーダルAIがさらに発展すれば、人と同じように抽象的な概念を理解し、より人に近い考えや行動ができるようになる可能性があります。

今後さらにAIが賢くなることで、夢の技術であった汎用人工知能が実現する日は来るかもしれません。

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記事の作成者・監修者

平田 大祐(株式会社モンスターラボ 常務執行役員)

平田 大祐(株式会社モンスターラボ 常務執行役員)

2004年IBMグループに入社し、IBM ITスペシャリストとしてシステム開発に従事。 2009年からベンチャー企業にて受託開発、コンテナ型無人データセンターの管理システム、ドローン開発などソフトウェアからハードウェア開発まで幅広く関わる。チーフテクノロジストとして2015年にモンスターラボへ入社し、2018年4月より最高技術責任者であるCTOに就任。 プロフィールはこちら