ジェネレーティブAIとは、まったく新しいコンテンツを生み出すことのできる機械学習手法です。本記事では、今後幅広いビジネスシーンで大きな影響を及ぼす可能性があるジェネレーティブAIについて、基礎知識や先進的な活用事例を解説します。
目次
生成AIとは、与えられたデータをもとに画像や文章、コードといった新しいコンテンツを生成する技術のことです。ジェネレーティブAI(Generative AI)とも呼ばれます。
米国Gartner社によると「コンテンツやモノについてデータから学習し、それを使用して創造的かつ現実的な、まったく新しいアウトプットを生み出す機械学習手法」と定義されています。
人間のようにクリエイティブなアウトプットを生み出せる点が従来のAIとは異なる点です。画期的な技術として注目を集め、さまざまな分野での活用が始まっています。
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生成AIは、「ディープラーニング(深層学習)」を用いて構築された機械学習モデルです。ディープラーニングとは、AIが自動的に大量のデータを解析してデータの特徴を抽出する技術のことを指します。
生成AIは、画像・音声・動画・テキストなどさまざまなコンテンツを生成することができますが、それぞれの性質に応じて適した学習モデルが使用されています。
たとえば画像生成には、GAN(Generative Adversarial Networks:敵対的生成ネットワーク)というモデルが用いられることが多いです。
GANとは、用意されたデータから特徴を学習し、擬似的なデータを生成することができる生成モデルです。これによって、実在しないデータを生成したり、存在するデータの特徴に沿って変換したりすることができます。
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従来のAIは、識別したり予測したりすることが主な用途でした。こうした識別系AIは、AIにあらかじめデータを与えて「答え」を学習させ、入力されたデータに対して正解もしくは不正解を識別させる仕組みです。そのため、従来のAIは人間が行う業務の自動化や効率化などを目的に使われてきました。
一方、生成AIの一番の特徴は、従来のAIと違い学習したデータの予測の範囲のみならず、より創造的でクリエイティブなコンテンツを生成できる点にあります。
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生成AIには画像生成、テキスト生成、動画生成、音楽生成など、さまざまな種類があります。ここでは、それぞれの詳細を紹介します。
テキスト生成AIは、自然言語処理技術を応用したAIの一種で、ユーザーの入力に対して回答となるテキストを自動生成します。過去の内容を記憶して文脈を理解し、まるで人間のように自然な対話ができることが特徴です。
代表的なテキスト生成AIとして挙げられる米Open AIの「ChatGPT」は世界中で大きな話題となり、生成AIがより注目されるきっかけにもなりました。
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画像生成AIは、ユーザーが生成したいイメージをテキストで入力すると、その内容に応じてAIが自動で画像を生成します。わずか数秒たらずで、人間が制作したような新たな画像を生成できることが大きなメリットです。
代表的な画像生成AIとして、英Stability AI社の「Stable Diffusion」や米Open AI社の「DALL・E2」、米Midjourney社の「Midjourney」などがあります。
生成AIの中では技術的にもっとも難しいとされてきた動画生成ですが、画像生成AIの発展形として近年はさまざまなツールが登場しています。
Runway Research社が2023年3月にリリースした「Gen-2」は、テキストからリアルな動画を生成することができます。現状Gen-2で生成される映像は無音ですが、音声も生成できるシステムを目指して研究が行われています。
音声生成AIは、音声データを入力することによって、音声の特徴を理解し、新たな音声データを生成します。
Microsoft社による「VALL-E」は、まず喋らせたいテキストと3秒間のサンプル音声データを入力します。するとAIがサンプルデータの分析を行い、サンプル以外のフレーズを喋っている音声を再生することが可能です。
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では、生成AIを活用するメリットにはどのようなものがあるでしょうか?ここでは作業の効率化、アイデア創出のサポート、コストを抑えられるという3つの観点で紹介します。
生成AIの大きなメリットは作業の効率化です。たとえばデザインや設計の制作現場において、これまではさまざまな制約条件を満たすものを生み出すには、時間と手間がかかっていました。
生成AIを活用することにより、条件に基づいたデザイン案を短時間で数多く生み出すことができます。条件を変更してAIに再検討してもらうことも可能です。人間が0からデザインを生み出すよりも、大幅に作業を効率化できます。
たとえば人間がデザインやコピーを作成する場合、どうしても先入観などの影響で、革新的なアイデアを生み出すことが難しい場合があります。
生成AIなら、固定概念にとらわれず人間では思いつかないような創造性を発揮することがあります。また、短時間で膨大なコンテンツを生成するため、たくさんのバリエーションの中から人間がアイデアのヒントを得ることもできるでしょう。
生成AIを活用することでコンテンツ生成の手間や時間を減らすことができれば、コスト削減にもつながります。従来必要であった外注費を削減したり、社内のリソースをよりコアな業務へ集中したりといったことが可能になるでしょう。
低コストで従来のコンテンツを生み出せるようになれば、より品質を高めたり、新たな施策を実行したりといった予算の使い方ができるかもしれません。
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一方で、生成AIには懸念されるデメリットもあります。しっかりと把握したうえで、最適な活用方法を見出しましょう。
生成AIのデメリットとして懸念されているのが、フェイクコンテンツが作成され悪用されることです。生成AIによって誰でも簡単に本物と見分けがつかない画像やフェイクニュース、詐欺サイトなどが作成できてしまうことから、これらが悪用され社会的混乱を招く可能性があります。
意図して悪用するケースだけでなく、真偽が不明な生成物を利用することで意図せず誤った情報を拡散してしまう場合もあるため、注意しましょう。
生成AIは学習したデータをもとにコンテンツを生成するため、元のデータの著作権などの権利問題が発生する恐れがあります。また、生成されたコンテンツの著作権や商標権も明確ではないため、海外では訴訟にまで発展したケースもあります。
そのため生成AIを使用する際には権利問題に十分注意し、状況によっては専門家にアドバイスを求める必要があるかもしれません。
生成AIは迅速に大量のコンテンツを生成することができますが、優れた品質を維持し続けることは簡単ではありません。生成されたコンテンツには、学習データと同じような作品や、非常識な作品、不自然な形状や間違った色使いの作品などが含まれることがあります。
優れたコンテンツを生み出すには、適切な学習データや指示、繰り返しブラッシュアップしていく工夫が必要です。
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次に、生成AIを上手に活用するポイントについて解説します。
プロンプトとは、ユーザーがAIに対して行う入力や指示のことを指します。プロンプトはAIが生成するコンテンツの方向性や内容を制御します。人間が作りたいコンテンツのイメージをAIに伝えるには、プロンプトを明確に書くことが重要です。
プロンプトを書く際には、以下のようなポイントに注意しましょう。
・内容と目的を明確に書く
・細かく具体的に書く
・曖昧な言葉は使わず、明確に書く
・コンテキスト(文章の前後関係)を書く
・長すぎず、短すぎない文章にする
生成AIは自動的にコンテンツを生み出しますが、生成されたコンテンツを検証し、評価するのは人間の役割です。生成された結果が予想と異なるときは、プロンプトを調整し、再度生成させることでブラッシュアップしていきます。
生成AIを業務に導入しても、すぐに効果を発揮できない場合もあります。検証と評価を繰り返し、活用方法を模索していくことが大切です。
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最後に、実際にビジネスの現場で生成AIが活用されている事例を紹介します。
Turning(チューリング)株式会社は、完全自動運転車両の開発・販売に取り組む企業です。同社は2023年3月、画像生成AI「Stable Diffusion」をフル活用してデザインした「完全自動運転EV」のコンセプトカーを公開しました。
自動車デザインのプロセスで「Stable Diffusion」を活用し、平面的デザインのみならず、デジタルモデリング、CGレンダリングを実施。さらにフルカラー3Dプリントによるスケールモデル、走行アニメーションやARデータまで製作しました。
また、自社工場のネーミングにはChatGPTを活用するなど、業務の多くの分野でAIネイティブな事業推進を行っています。
出典:【世界初】自動運転EV開発のチューリング、画像生成AIでデザインした「完全自動運転EV」コンセプトカー公開 エンブレムにも生成系AIを活用 – ロボスタ
NVIDIA Corporationは、米国カリフォルニアにある半導体メーカーです。同社は、2023年3月に生成AIサービスをクラウドで提供する「NVIDIA AI Foundations」を発表しました。
「NVIDIA AI Foundations」では、大規模言語モデルを「Nemo」、画像生成AIを「Picasso」、医療分野の生成系AIを「Bionemo」というサービスで提供。それぞれの生成AIをエンタープライズ品質に進化させました。企業向け生成AIとして今後の動向が注目されています。
出典:NVIDIA、大規模言語モデルおよびビジュアル モデルを作成するためのクラウド サービスにより生成 AI を世界中の企業にもたらす|NVIDIAのプレスリリース
本記事では、生成AIとは何か、その種類やメリット、活用事例を解説しました。
Open AI社が2022年11月にChatGPTを公開して以来、その注目度が加速している生成AI。従来のAIのように、大量のデータから特徴を学んで予測するものとは異なり、クリエイティブな成果物を生み出すことができます。
これまで人間にしか不可能と思われてきたクリエイティブな分野でも、その存在感が高まっていくことでしょう。
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