AIOpsとは?ユースケースや活用事例を詳しく解説

AIOpsとは?ユースケースや活用事例を詳しく解説

AIOpsとは、ビッグデータや機械学習などの技術を用いてIT運用の自動化・効率化を目指す手法です。企業が扱うデータの量が絶えず増え続け、そのソースも種類も多様化している今、安定的なシステム監視と高精度のデータ分析を可能にするAIOpsの重要度が高まっています。

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AIOpsとは

AIOpsとは、“Artificial Intelligence for IT Operations”の略語で、人工知能(AI)と運用(Operations)を組み合わせた造語です。2017年にガートナー社によって提唱されました。AIOpsでは、企業が保有するビッグデータや機械学習、その他高度な分析技術を用いることで、IT運用の自動化・効率化を図ります。

★まとめ
・AIOpsは“Artificial Intelligence for IT Operations”の略語であり、人工知能(AI)と運用(Operations)を組み合わせた造語。
・AIOpsは、ビッグデータや機械学習などの高度な技術を用いて、IT運用の自動化・効率化を図る手法。

AIOpsプラットフォームとは

ガートナー社は、AIOpsプラットフォームはDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するうえで重要なツールであると指摘しています。

AIOpsプラットフォームとは、AIOpsを実現するためのシステムです。ビッグデータや機械学習を組み合わせて大量かつ多様なデータを取り込み、総合的に分析することで、IT運用を支援します。

AIOpsを導入することで、複数のデータソースや収集手法、分析技術、提供技術の同時利用が可能となり、効率的なデータ収集・管理と高精度のデータ分析・活用を実現できます。

AIOpsが注目される理由

IT運用の複雑化でAIOpsの必要性が増すとともに、技術革新によってデータを取得・分析するためのインフラが追い付いてきたことが、AIOpsが注目を集めている理由です。

情報化が進んだ現代、生成されるデータの量は増加の一途をたどり、その種類も様々です。企業で使われる情報システムやツールも多様化しており、部門間で異なるツールを使うケースも珍しくありません。

さらには、ビジネス環境の変化に応じて情報システムやアプリケーションに頻繁に変更が加えられ、構成要素や構成要素間の依存関係は複雑さを増しています。このように、IT運用はもはや人間の手には負えないほど複雑化しています。

一方で、ビッグデータやAIといった領域に技術革新がもたらされたことで、複雑化したIT運用に対応できる土壌が整ってきました。データ連携ツールが進化し、クラウドが普及したことで、ビッグデータを一元的に蓄積・分析できるようになりました。また、機械学習やディープラーニングの活用により、AIは大量のデータをもとに予測・検知・原因判断を行えるレベルにまで進化を遂げました。

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AIOpsのユースケース

ガートナー社によると、AIOpsは「パフォーマンス監視・分析」「異常検知」「根本原因の特定・分析」「ITサービス管理」などに活用できます。

パフォーマンス監視・分析

ソースや種類が多様化した膨大なデータを管理・分析するには、人間の手や個々の機械学習技術を搭載したシステムだけでは不十分です。

AIOpsでは、多種多様なビッグデータに一貫性をもたせながら、IT運用システムを一元管理します。このため、安定的にシステム全体のパフォーマンスを監視し、高い精度でデータを分析することができます。

高精度のデータ分析によってパフォーマンス監視能力が一層高まり、障害やトラブルの未然防止にもつながります。

異常検知

IT運用システムのデータ内で突出したイベントやアクティビティがあれば、それは「異常イベント」として検出されます。ただ、システムが複雑化すると、IT担当者が異常イベントを検出することは難しくなり、アラートを設定する人的・時間的コストも膨らみます

機械学習を活用するAIOpsでは、「トレンド分析アルゴリズム」や「凝集分析アルゴリズム」などのアルゴリズムに基づき、自動で異常イベントを検出し、アラートを生成します。しかもシステム全体を俯瞰した膨大なデータをもとに異常を検知しているため、迅速かつ効果的に異常を検出することができるのです。

根本原因の特定・分析

システムが複雑化するにつれ、異常イベントのアラートが頻発するようになります。そうすると、IT運用チームはアラート対応に追われて疲弊し、対応済のアラートの根本にある原因を見逃すリスクが高まります

AIOpsは、イベントのソースや形式を問わず、IT運用システム内の重要なイベントを自動的に分類します。そのうえで、「重複イベントの統合」「アラートの抑制」「重要イベントの解決」といったアクションを自動で実行します。

その結果、IT運用チームはいわゆる「アラート疲れ」から解放され、ノイズが除去された情報をもとに、より効果的に原因を究明できるようになります。

ITサービス管理

ITサービス管理とは、組織内のITサービスの設計から構築、提供、サポートまで、管理に関する全作業を包括する言葉です。

AIOpsでは組織内のデータを一元管理するため、運用担当者はサービス全体を俯瞰して閾値と自動対応を定義できるようになります。

このため、例えば「キャパシティプランニングで予測精度を上げる」「ニーズ予測に基づきキャパシティを自動調整してストレージリソースの可用性を最大限に高める」「複雑なネットワークで接続されたデバイスを管理する」といったことが可能になります。

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AIOpsを構成するテクノロジー

AIOpsを構成する主なテクノロジーは、「AI(人工知能)」「ML(機械学習)」「ビッグデータ分析」「自動化」です。AIOpsプラットフォームは、これらのテクノロジーを駆使して高度かつ効率的なIT運用を実現しています。

AI(人工知能)

第三次AIブームにおけるAIは、ディープラーニングや自然言語処理を活用しています。これにより、原因判断、イベント予測・検知、傾向の特定など、ITを運用するうえで必要とされる課題解決に役立つインサイトを提供します。

★AI(人工知能)について詳しくはこちら

ML(機械学習)

ML(機械学習)は、データのパターンやルールを発見するだけでなく、学習成果をもとにした予測・判断までを行います。アルゴリズムの自動変更や新たなアルゴリズムの構築まで行うMLは、膨大なデータを分析し、関連性をスピーディーに明らかにするうえで不可欠なテクノロジーです。

★ML(機械学習)について詳しくはこちら

ビッグデータ分析

組織が保有する膨大なデータ群をリアルタイムに分析し、部門を問わず必要な人が必要なときにアクセスできる状態を整えるには、ビッグデータ分析の技術も欠かせません。具体的なビッグデータ分析ツールとしては、「Elastic Stack」や「Hadoop 2.0」などが挙げられます。

★ビッグデータについて詳しくはこちら

自動化

AI、ML、ビッグデータ分析などを使ってデータの信頼性と関連性が確保されれば、特定の問題や状況に自動で応答し、修正できるようになります。IT運用の速度と精度を大幅に向上させる自動化は、AIOpsを構成する重要なテクノロジーです。

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AIOpsの仕組み・プロセス

AIOpsの仕組みは、サイロ化された膨大なITデータや運用ツールを集約して一元管理し、焦点を絞った対象に分析機能と機械学習機能を適用して有益な情報を取得するというものです。具体的には、データ収集・選択からパターン検出・ソリューション提案、自動応答、継続的学習まで、人間の認知機能に似たプロセスを踏みます。

データ収集・選択

最初のプロセスは、データの収集と選択です。IT運用システム全体に蓄積されたデータは膨大です。このIT運用データの山からノイズを除去し、事前に定義された測定基準に基づいて「重要な異常のイベント・アラート」(シグナル)を選択します。

パターン検出・ソリューション提案

次に、IT運用システムの環境全体のイベントデータを相互に関連づけることで、異常イベントのパターンを検出します。こうして障害やパフォーマンス問題の原因を特定したうえで、詳細な分析により問題を修復するためのソリューションを提案します。

自動応答

さらには、機械学習の結果に基づき問題を自動応答で処理します。具体的には、アラートや解決策の推奨を自動送信したり、ユーザーに先回りして問題を処理したりすることで、リアルタイムに問題を解決します。

継続的学習

AIOpsは、継続的学習によってアルゴリズムを改良したり新たなアルゴリズムを作成したりします。変化に対応しながら自動応答とパターン検出・ソリューション提案を繰り返し、将来に向けて対応を改善し続けます。

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AIOpsのメリット

IT運用を自動化・効率化するAIOpsは、生産性の向上やコスト削減をはじめとする様々なメリットを組織にもたらします。

生産性の向上

AIOpsプラットフォームでは、IT運用における監視・トラブル対応・診断などを自動化します。複雑化したIT運用システムの監視やノイズ除去を手動で行おうとすると、それだけで途方もない時間が奪われてしまいます。自動化によってIT運用を迅速かつ効率的に行うことで、AIOpsチームメンバーがより重要度の高いタスクや創造的な業務に注力できるようになり、生産性が向上します。

問題の早期発見・予防

AIOpsを採用することで、一元化されたIT運用システム上でパターンを検出し、予め問題を予測したり先回りして予防したりすることが可能になります。手動では対応が困難な問題や発見しにくい問題をいち早く発見し、予防できることも、AIOpsの大きなメリットです。

コストの削減

AIOpsでは、事前に問題を検知して迅速に対応できるため、システム障害やトラブルに起因するコストも削減できます。また、複雑化したIT運用システムの維持にかかる保守費用や更新コストも削減できます。さらには、IT運用を自動化することで、手動で運用していた場合と比べて大幅に人的コストを削減できます。

データドリブンな意思決定

AIOpsの特徴のひとつが、サーバーやクラウド、ファイアウォールといった様々なデータソースから膨大なデータを取り込み、総合的に分析できることです。これにより、正確で精度の高い分析に基づくデータ駆動型の意思決定が可能になります。

また、ビッグデータが一元管理されることで、ITインフラの全体像を把握しやすくなるうえ、部門を超えたコミュニケーションが生まれやすくなります。このように、組織全体でデータドリブンな意思決定が促進されることも、AIOpsのメリットといえるでしょう。

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企業のAI活用成功事例

最後に、AIOpsの成功事例を3つ紹介します。

ユニメイト

株式会社ユニメイトは、レンタルユニフォーム事業を主軸に、各種ユニフォームの企画からクリーニングまでを手がける企業です。

同社のユニフォーム事業では、クライアント企業のスタッフによる自己申告でサイズを把握していましたが、ヒューマンエラーによるサイズ違いが頻発し、返品・交換のコストや過剰在庫が課題でした。

そこで、生産前に正確なサイズを把握するため、AI画像認識を活用した自動採寸PWA『AI×R Tailor(エアテイラー)』を開発しました。プロジェクトにはAIスペシャリストが加わり、画像から作成した3Dモデルをもとに実際のサイズを採寸する手法を模索。同社に蓄積されたデータとAI技術とを駆使して改善を重ねつつ精度を高め、単なる採寸アプリに留まらない「最適なサイズを推奨する」サービスを目指しました。

ユニフォーム事業の運用にAIを導入することで、業務の生産性を高めるとともに、新たなビジネス価値を創出した事例といえます。

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キャッシュビーデータ

キャッシュビーデータ株式会社は、ユーザーが送付したレシート画像から生活者購買データを取得し、BtoC企業がデータを活用できる機会を提供しています。同社は、GoogleのOCR(Optical Character Recognition/Reader、光学的文字認識)を用いてレシート画像から購買データを収集するというデータビジネスを始動しました。

しかしながら、画質にばらつきのあるレシートから安定的にテキストを読み取れず、データの正確性が課題となっていました。

そこで、画像処理技術を改善してAIの画像認識精度を高め、収集データの正確性を追求。画像処理技術の改善によって高精度のデータ抽出・分析が可能になり、人の手による確認作業の負担の軽減に成功しました。さらには、レシートに記載された文字とJANコードを照合して商品を判別する方法を採用したことで、マーケティング情報としてのデータの価値が格段に高まりました。

AIを活用して正確なデータを収集し、高い精度で抽出・分析を行えるようになったことで、業務効率を改善するとともに付加価値のあるデータを提供できるようになりました。

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アイビー化粧品

株式会社アイビー化粧品は「日本の肌はアイビーがつくる」をビジョンに、高品質な製品作りと対面による販売を行う老舗の化粧品会社です。

ご愛用者さまの悩みの中でも多いのがシワ。そこで、新たに開発したシワ改善の薬用クリームの発売に合わせて、シワを認識する肌解析システムがあれば、カウンセリングの質をさらに高めることができると考えました。

モンスターラボはアイビー化粧品のアイディアをもとに、訪問販売員が写真を撮るだけでご愛用者さまの肌を診断できるAI肌解析システムを開発しました。

その結果、訪問販売(リアル)とAI解析システム(デジタル)を融合させることで、同社販売員の利便性の向上に貢献しました。さらに、シワの本数と評価が数字で表されるため、客観的な評価に基づきお客さまへコンサルティングができることから、販売力の強化にも寄与しています。また、蓄積されたデータを使った学習により、背景や光量により検出結果が異なるといった精度や揺らぎについても改善を図っています。

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まとめ:AIOpsでビジネス価値を創出

ビッグデータや機械学習などの最新技術をフル活用するAIOpsは、企業のIT運用の生産性を高め、データドリブンな意思決定を可能にします。企業に蓄積される膨大なデータを総合的かつ安定的に管理し効果的に運用することで、業務効率が高まり、部門間の連携も強化されます。ぜひAIOpsを新たなビジネス価値の創出に活用してください。

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記事の作成者・監修者

平田 大祐(株式会社モンスターラボ 常務執行役員)

平田 大祐(株式会社モンスターラボ 常務執行役員)

2004年IBMグループに入社し、IBM ITスペシャリストとしてシステム開発に従事。 2009年からベンチャー企業にて受託開発、コンテナ型無人データセンターの管理システム、ドローン開発などソフトウェアからハードウェア開発まで幅広く関わる。チーフテクノロジストとして2015年にモンスターラボへ入社し、2018年4月より最高技術責任者であるCTOに就任。 プロフィールはこちら