ナレッジマネジメント(知識管理・知識経営)とは? 4つのメリットと導入ステップを徹底解説

ナレッジマネジメント(知識管理・知識経営)とは? 4つのメリットと導入ステップを徹底解説

ナレッジマネジメントとは、社員個人の持つ知識やノウハウを組織全体で共有し、活用する経営手法です。終身雇用の崩壊や働き方の多様化にともない、組織内での知識継承は以前より難しくなりました。予測困難なVUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)時代において、企業の競争力を高めるために、このナレッジマネジメントが再び注目されています。

★まとめ
・ナレッジマネジメントの基本的な考え方と、関連する主要概念
・ナレッジマネジメントが注目される背景と、導入によって期待される4つのメリット
・「暗黙知」を「形式知」にするSECIモデルの4つのプロセスと、導入手順、失敗を防ぐためのポイント

目次

ナレッジマネジメントの基礎知識

ナレッジマネジメントとは、社員個人の知識や経験を「組織の力」に変えるための手法であり、仕組みのことです。業務を通じて得た知識やノウハウを全社で共有し、業務改善や新しい価値創造に活かします。

たとえば、現場で発生した機器の故障対応やシステムエラーの原因、解決プロセスを「トラブルシューティング事例」として詳細に記録し、検索可能なナレッジベースに蓄積する活動がこれにあたるでしょう。

この仕組みにより、類似のトラブルが再発した際、担当者がベテランに聞かずとも迅速に自己解決できるようになり、対応時間の短縮と属人化の解消に繋がります。個人の持つ知識を共有可能な形に変え、それを循環させることが、ナレッジマネジメントの要です。

以下では、このナレッジマネジメントに関する主要な概念について解説します。

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ナレッジマネジメント概念図

ナレッジマネジメントと似た用語

ナレッジマネジメントと混同されやすい用語に、「ナレッジシェアリング(知識共有)」があります。
ナレッジシェアリングは、社内SNSに成功事例を投稿するといった知識共有の行為そのものを指します。

一方で、ナレッジマネジメントは共有された知識を整理・蓄積し、そこから新しい価値を生み出す「経営プロセス」です。
ナレッジシェアリングは、ナレッジマネジメントを実現するための重要なステップの一つです。

「暗黙知」と「形式知」の違い

ナレッジマネジメントを理解する上で欠かせないのが、「暗黙知」と「形式知」の違いです。
暗黙知とは、経験や勘に基づく、言語化が難しい知識のことです。たとえば、ベテラン社員の判断基準や交渉の「間」の取り方などが該当します。
一方、形式知は、マニュアルや報告書など、言葉や図で明文化された知識を指します。
重要なのは、暗黙知を必要に応じて形式知に変え、誰もが再現できる形で共有することです。
これができなければ、社員が培ったノウハウや経験は、その人個人の中に留まり、属人化によって全社で活用することは難しくなります。

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ナレッジマネジメントが注目される理由

ナレッジマネジメントが再び注目を集める背景には、働き方や市場環境の変化があります。

終身雇用制度の崩壊と人材流動化

終身雇用制度の変化により人材の流動化が進んだ現代では、社員の異動・退職時に知識やノウハウが外部へ流出するリスクが高まっています。そのため、個人の経験知に依存する組織運営には限界があります。この課題に対応するには、個人が持つ知識を「組織の資産」として可視化・共有し、人の異動に左右されない知識基盤を築くことが不可欠です。

働き方の多様化

テレワークなど働き方の多様化により、社内コミュニケーションの形は大きく変化しました。
オフィス勤務時のように、偶然の会話からアイデアが生まれたり、気軽に相談できたりする機会が減少しつつあります。
その結果、社員一人ひとりが持つ「暗黙知」を共有・継承しにくくなり、組織の学習スピードが鈍化するリスクがあります。
こうした課題に対して、事例共有や、Slack、Notionなどを活用したナレッジチャンネル、プロジェクト後の振り返り会など意図的に知識共有を促す場を設計し、オンライン上でも学び合いが生まれる仕組みを整えることが重要です。

団塊世代の定年と技術継承の課題

日本の高度経済成長期を支えた団塊世代の退職により、長年の経験で培われた専門技術や顧客との関係性といった暗黙知が失われつつあります。ベテラン社員の暗黙知を形式知として整理・共有する仕組みを整えなければ、次世代への技術継承が滞り、組織の持続的な成長が難しくなるでしょう。

DX推進における重要性

DX推進の成否を分けるのは、テクノロジーそのものではなく「知識の共有」と活用の仕組みです。
例え新しいSFA(営業支援システム)を導入しても、過去の顧客対応履歴や営業ノウハウが社内で共有されていなければ、その効果は限定的です。
ナレッジマネジメントは、散在するデータを全社で活用できる仕組みを整え、DXの成果を最大化します。

グローバル競争の激化

市場のグローバル化が進む中で、企業にはスピーディーな意思決定と継続的なイノベーションが求められます。ナレッジマネジメントによって組織内の知見を集約し、全社で活用できる基盤を整えることで、変化に強い経営を実現できます。

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ナレッジマネジメントの4つのメリット

これまで紹介した背景を踏まえ、ナレッジマネジメントの導入によって得られる具体的なメリットを4つに整理して解説します。

メリット1:業務効率化・生産性向上

ナレッジマネジメントは、業務に必要な情報やノウハウへ誰もが迅速にアクセスできる環境を整え、過去の知見を活用して無駄を削減します。たとえば、新製品の開発担当者が、過去の類似プロジェクトの設計書や議事録を参照できれば、同じ失敗を繰り返すリスクが避けられ、結果として生産性を高められます。

メリット2:組織力の強化

ナレッジマネジメントを導入すると、部署を越えた知識連携が進みます。
たとえば、マーケティング部門が収集した顧客の声を開発部門が活用するなど、知識の相乗効果が生まれます。
知識を共有し合う文化が定着すれば、新たなアイデアやイノベーションが自然に生まれるでしょう。

メリット3:属人化の防止

業務が特定の社員に依存する「属人化」は、多くの現場で起こる課題です。個人の頭の中にある手順や判断基準を形式知として共有すれば、業務の標準化が進み、誰が担当しても一定の品質で対応できる体制が整います。

メリット4:人材育成の効率化

新入社員や若手社員が、過去の提案書や商談記録をデータベースから学ぶことで、実践的なスキルを自律的に習得できます。
これにより、OJT(On-the-Job-Training)で先輩社員が指導に費やす時間を減らし、より質の高い人材育成が可能になります。

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「暗黙知」を「形式知」にするSECIモデル(セキモデル)

社員一人ひとりの経験を、組織の知として活かすための理論が「SECIモデル」です。
これは、個人の暗黙知が形式知へと変換され、さらに組織全体へと広がっていく知識創造のプロセスを体系化したものです。

SECIモデルの4つのプロセス

SECIモデルは、知識が「個人から組織へ」、そして「組織から再び個人へ」と循環しながら拡大していく過程を4つのプロセスで説明しています。

1.共同化(Socialization)

共同化は、個人が持つ暗黙知を他者との体験を通じて共有し、新たな学びを生み出すプロセスです。
ベテラン社員の作業を近くで見ながら学ぶOJTや、ミーティング前の雑談から新しい発想が生まれるような場面がこれにあたります。
言葉では表現しにくい経験や感覚を、行動や観察を通じて共有することが、共同化の第一歩です。

2.表出化(Externalization)

表出化は、共有された暗黙知を言葉や図に置き換え、誰もが理解できる形式知に変えるプロセスです。たとえば、トップセールスの商談ノウハウをヒアリングし、営業マニュアルとしてまとめるような取組みがこれに該当します。
経験に基づく勘や感覚を言語化することで、チーム全体が同じ基準で行動できるようになります。

3.連結化(Combination)

連結化は、表出化で得た形式知を既存の知識と結びつけ、新しい知見を生み出すプロセスです。
複数の市場調査レポートを横断的に分析して経営戦略を立案したり、各部署のデータを統合して新規事業の方向性を導き出したりする取組みがこれにあたります。
文書化された情報を体系的に整理・再構成することで、より高度で再現性のある知識を創造できます。

4.内面化(Internalization)

内面化は、連結化で整理された形式知を、実践を通じて自分の暗黙知として身につけるプロセスです。
新しいマニュアルを読むだけでなく、実際の業務で試行錯誤しながら自分のやり方として定着させる段階です。
組織の知識を個人が行動レベルにまで落とし込み(内面化)、次の知識創造サイクル(共同化)へとつなげていきます。

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SECIモデルに必要な4つの「場」

SECIモデルを実際に機能させるには、それぞれのプロセスに適した「場」の設計が欠かせません。ここでいう「場」とは、会議室だけでなく、オンラインや非公式の交流も含めた知識創造空間も含みます。

1.創発場

「創発場」は、社員同士が自然な会話や共同作業を通じて暗黙知を共有するための場です。
休憩スペースやランチミーティング、雑談の生まれるオンラインチャットなど、偶発的な交流が新たな気づきを生み出します。

2.対話場

「対話場」は、暗黙知を言語化し、形式知へと変換するための場です。
ブレーンストーミングやワークショップ、オンラインディスカッションなど、自由に意見を出し合える環境が効果的です。

3.システム場

「システム場」は、形式知を蓄積し、誰もがアクセス・活用できるようにする場です。
社内Wikiやデータベース、グループウェアといったITツールがその役割を担い、情報の共有と再利用を促進します。

4.実践場

「実践場」は、形式知を実際の行動を通じて自分のスキルとして定着させる場です。
業務現場や研修プログラムで実際に試行錯誤を重ねることで、知識が個人の暗黙知として身につき、組織の力に変わります。

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ナレッジマネジメントの導入手順【4ステップ】

ナレッジマネジメントを定着させるには、次の4ステップを計画的に進めることが重要です。

ステップ1:目的の明確化と社員への周知

まず、ナレッジマネジメントを導入する目的を明確にします。
「業務の属人化を防ぐ」「若手社員の育成を効率化する」など、自社の課題と結びつけて定義することがポイントです。

目的が定まったら、経営層から全社員へ背景と意図を丁寧に説明し、共通認識を形成します。
「なぜこの取組みを行うのか」を理解してもらうことが、成功の第一歩です。

ステップ2:共有すべき情報の選定

情報を「すべて共有する」ことが目的ではありません。目的に沿って、共有すべき知識を厳選することが重要です。
たとえば、顧客サポート部門であれば、「不具合対応の解決策」や「よくある質問への回答例」など、現場で役立つ情報を優先的に共有対象にします。

ステップ3:ツール・システムの選定と導入

共有内容が決まったら、それを管理するためのツールを選びます。必要な機能を整理し、複数のシステムを比較検討した上で、一部部署で試験導入してから全社展開すると効果的です。
操作性が高く直感的に使えるツールを選ぶことで、定着スピードが大きく変わります。

ステップ4:定期的な見直しと改善

ナレッジマネジメントは、導入して終わりではありません。定期的に運用状況を振り返り、情報の活用状況や投稿数を分析します。貢献度の高い社員を表彰するなど、知識共有を促す仕組みを整えましょう。
また、情報の質を保つために「ナレッジマネジャー」を任命し、継続的に改善サイクルを回すことで、取組みを組織文化として定着させることが大切です。

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ナレッジマネジメント失敗を防ぐポイント

ナレッジマネジメントは、導入しただけで機能するものではありません。担当者が陥りやすい失敗のパターンを理解し、対策を講じることが定着への近道となります。ここでは、よくある3つの失敗と、その回避策を紹介します。

よくある失敗パターン

1.情報が提供されない

社員が知識を投稿せず、システムが空のままになってしまうケースです。背景には、「自分のノウハウを公開したくない」「入力作業が手間」といった心理があり、日常業務の負担と感じられやすい点が挙げられます。
この課題を防ぐには、知識共有を「業務の一部」として仕組み化し、投稿を自然な行動として定着させる工夫が必要です。

2.情報が活用されない

データが蓄積されていても、実際には使われないパターンです。情報が古い、検索しにくいなどの理由で、結局「人に聞いた方が早い」となり、システムが形骸化してしまいます。情報の鮮度管理と、誰でも使いやすい検索設計が欠かせません。

3.ツールが使われなくなる

高価なシステムを導入しても、操作が難しく現場に浸透しないケースも多く見られます。導入時には、実際に利用する社員の視点で操作性を確認し、トレーニングを行うことが重要です。

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成功のための3つのポイント

1.社員が自発的に共有できる環境づくり

知識共有を、負担ではなく評価や貢献として捉えられる仕組みを作ります。
たとえば、優れた知識を共有した社員を表彰したり、改善事例を発表する機会を設けたりすることが効果的です。
自発的な参加を促すことで、共有文化が自然に根付きます。

2.2段階データベース法の活用

情報の信頼性と検索性を高めるには、「2段階データベース法」が有効です。
現場から挙がる一次情報を専門チームが収集・整理し、精査した上で正式なデータベースに登録します。
このプロセスにより、情報の質が保たれ、社員が安心して活用できる仕組みが整います。

3.継続的な改善サイクルの構築

導入後も定期的に運用を見直し、改善を繰り返します。アンケートで使い勝手を確認し、社員の声を反映することでシステムの鮮度を維持します。
情報の管理責任者として「ナレッジマネジャー」を置くのも効果的です。
このような改善を継続し、ナレッジマネジメントを組織文化として定着させることが、成功の鍵となります。

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ナレッジマネジメント成功事例

サービスエンジニアの経験・スキルに依存しない建機故障診断アプリ(クボタ)

建機・農機メーカーのクボタは、グローバル展開を図るなかで、海外の現地販売代理店の修理対応が担当者の経験・スキルによってばらつきがあることに課題を感じていました。

そこで同社は、販売代理店のサービスエンジニア向けに3Dモデル・ARを活用した故障診断アプリ「Kubota Diagnostics」を提供しました。

建機故障時の原因をビジュアルでスムーズに認識できるようになり、顧客側のダウンタイム削減に貢献。同時にカスタマーサポートの業務効率化を実現しました。

また米国ユーザー向けのUI設計を実施し、現地ユーザーに受け入れられるローカライズにも成功しています。

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属人的な仕入れ業務のペーパーレス化と業務効率化を実現(角上魚類)

角上魚類ホールディングスは、主に関東地方・信越地方で鮮魚専門店「角上魚類」を展開する企業。
同社は、手書きの受注明細やセリ原票を使用する仕入れ作業の負荷を改善するため『セリ原票アプリ』を開発。

市場特有の業務フローを崩さずデジタル化することで、手作業でのフローと遜色のない使い勝手を実現し、仕入れ業務の標準化、リアルタイムでの情報連携も可能となり、業務の利便性向上に寄与しました。

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まとめ:知識を組織の力に変え、競争優位を築く

ナレッジマネジメントは、個人の経験やノウハウを組織の資産に変える仕組みです。終身雇用が過去のものとなり、働き方が多様化する今、知識の継承はあらゆる企業にとって避けられない課題です。社員一人ひとりが自発的に知識を共有し、学び合う文化を育むことで、属人化を防ぎ、組織全体の生産性と競争力を高めることができます。

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