近年、さまざまな企業がAIの活用を進めていますが、その導入過程には多くの課題が存在します。
本記事では、AI導入のメリットやデメリットを整理するとともに、導入効果を最大化するポイントを詳しく解説します。
目次
一般社団法人 人工知能学会では、AIという言葉の生みの親であるジョン・マッカーシー教授の言葉を『知的な機械、特に知的なコンピュータプログラムを作る科学と技術』と翻訳して紹介しています。
AI(人工知能)は、大規模なデータと高度なアルゴリズムを組み合わせることで、人間の知的作業を模倣・代替したりサポートしたりする技術です。実装形態はさまざまで、チャットボットや音声認識システムなどはすでに広く普及しています。今後はさらに多様な領域で人間の作業を効率化し、新たなビジネス機会の創出に貢献していくと期待されています。
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日本企業のAI投資意欲は、実は、諸外国と比較して最も高く、調査回答企業の約半数が2025年に2,500万ドル超のAI投資を予定しています。
しかしながら、AIの投資効果が十分に発揮されていないと感じている方も多いのではないでしょうか。
諸外国と比較して日本企業ではAI導入が進みにくい現状があります。その背景や要因を見ていきましょう。

日本企業におけるAI導入の停滞は、導入前の明確な目標設定不足により効果測定ができていないこと、戦略から運用までのサイクルが分断されていることに要因があります。
個別業務改善に留まり、データ基盤の不備や人材不足によってAIモデルの継続的改善が滞り、本来の価値創出に至らないケースが発生しています。
AI導入における成果を測定するためには、明確なKPIやKGIなどの指標を設定し、継続的に効果検証する仕組みが欠かせません。
ところが、導入前に目的や目標が定義されないまま進めるケースが目立ち、ビジネス効果を正しく把握できていない企業が多く存在しています。
社内のコスト削減といった個別業務の改善が主な目的となっているため、大きなビジネス効果を出せていません。また、戦略〜運用のサイクルが繋がっていないため、稼働後のAI精度の維持・改善が十分に行われず、AIモデルの性能が低下してしまうことでビジネス効果が得られにくくなっています。
KPIを正しく設定しAI施策の改善サイクルが完成したように見えても、サイクルがスムーズに回らず本来出せるはずの価値を出せていない企業が多く存在しています。
データ基盤の不備、レガシーシステムの存在、AIの知見を持つ優秀な人材の不足といった要因で、サイクルの回転が停滞してしまいます。
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AIを導入することで、プロセスの効率化や新たなビジネスチャンスを生むことが可能です。
ここではAIを導入するともたらされるメリットを6つ紹介いたします。
多くの企業がAI導入を検討する最大の理由として、定形的な業務が自動化されることによる生産性向上が挙げられます。特に事務処理やデータ入力など、人手で行うとミスが発生しやすい反復作業をAIでカバーすることで、ヒューマンエラーも大幅に削減されます。これらのタスクが省力化されると、従業員は創造的な業務や顧客対応に時間を使えるようになり、組織全体のパフォーマンスが高まります。
AIは膨大なデータからトレンドを見つけたり、将来を予測したりする能力に優れています。従来は人間や既存システムでは見逃しがちなパターンを見つけ出し、ビジネス上の意思決定をサポートします。これにより、市場動向の分析や顧客セグメント別のアプローチを高度化し、想定外のビジネスチャンスを捉えることが期待できます。
定型的な業務をAIに任せると、人件費やシステム運用コストの圧縮が見込まれます。さらに分析や予測精度が高まれば、無駄の多いプロセスを削減でき、経営資源を最適に配分する戦略が可能になります。結果として利益率の向上や新規投資に回せる余剰予算の確保など、経営面にも恩恵をもたらします。
AIを活用したレコメンドシステムやパーソナライズされた接客対応は、顧客一人ひとりのニーズを捉えたサービスを可能にします。これにより、従来の画一的な提供形態から一歩進んだ顧客体験を提供し、リピーターの増加やブランドイメージの向上につなげることができます。卓越したサービス品質は競合他社との大きな差別化要因にもなります。
特定のベテラン社員にノウハウが集約されている企業では、担当者が変わると業務品質や成果にばらつきが生まれやすくなります。AIを導入することで、データに基づく一貫した判断やプロセス管理が可能となり、人に依存しない安定した結果を得られるようになります。結果として、組織全体のスキル底上げや品質の平均化につながります。
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一方、導入にはコストやリスク、専門人材の確保といった課題も存在します。
AI導入には期待されるメリットが多い一方で、初期投資や運用コストの負担や、専門知識を持つ人材の確保が難しいといったデメリットも見逃せません。責任範囲の曖昧さからトラブルが発生してしまうことも含め、導入開始時からルール整備を進めることが重要です。
AIを導入するにはシステムの構築費やデータを整備するコストが必要となります。さらに、実運用に入ってからもソフトウェアのライセンス費用やクラウド利用料、継続的なメンテナンスやアップデートに伴うコストが発生します。大きな投資にはなるものの、長期的な利益向上や業務効率に結びつけるための経営判断が欠かせません。
AIが分析や意思決定に関わると、結果に対して誰が最終的な責任を負うのか不明確になる場合があります。特に誤った予測や判断によって損失が出た場合、責任範囲をどう定義するかは企業のコンプライアンスにも大きく関わります。事前に役割と責任の線引きを明確にしておくことで、リスク管理とスムーズな運用が可能となります。
AI導入においては、取り扱うデータが個人情報や機密情報であるケースが多いため、セキュリティ対策が非常に重要です。もしも内部不正や外部からのサイバー攻撃を受ければ、AIが掛け算的に情報漏えいや被害を広げる可能性もあるため、堅牢なネットワークと監視体制が求められます。
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AI関連の知識やスキルを持つ人材は、世界的にも需要が高まっており、確保が難しい状況です。社内で新たに人材を育成するか、外部からの採用またはパートナー企業との連携を図るかなど、企業の状況に合った方法を選択する必要があります。人材不足を補うために外部コンサルやベンダーを利用する事例も増えています。
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導入したAIの効果を最大限引き出すには、戦略と運用プロセスの高度な連携が必要です。
ここでは、戦略策定や改善サイクルなどの重要ポイントを整理します。
AIを導入する目的を明確にし、それらに紐づく事業戦略を策定することが欠かせません。単に最新技術としてのAIを導入するのではなく、適切なKPIを設定し、ビジネス効果を生むことができる戦略策定が必要です。
AIのメリットは局所的な業務への導入だけでは、十分なビジネス効果を発揮できません。
AIを業務フロー全体に組み込み、継続的に改善サイクルを回していくことでより高い収益成長を達成できます。
AIの導入によるビジネス効果を最大化するためには、改善サイクルのスピードも大きな武器になります。PoC(概念実証)を素早く回し、得られた結果を基に即座に改善策を反映させるアジャイルなアプローチが有効です。停滞要因を早期に発見、問題解決していくことで、ビジネス効果の最大化に寄与します。
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AI導入の効果を最大化させる3つのポイントを参考に実際の導入ステップもみていきましょう。
自社で開発するのか、外部ベンダーに委託するのかなども含めて、自社に合った導入体制を検討しましょう。
AI導入の第一歩は、自社が解決したい課題を明確にし、どのような成果を期待するかを定義することです。対象となる業務フローや必要データを洗い出し、導入規模や期間、必要となる人・コストなどを把握します。この段階であいまいな部分が残っていると、後々のステップで再定義が必要になる可能性が高いので注意が必要です。洗い出しは自社が思っている以上に複雑で、課題整理と期間・コスト算出は容易ではないので、パートナーをこの段階から導入して進めることもおすすめです。
対象業務の現場担当者や顧客からのフィードバックを収集し、小規模なPoCでAI導入の有効性を検証します。仮説を立て、必要最小限のリソースでテストを行い、実際にどういった成果や課題が生じるのかを明らかにします。PoCで得られた結果をもとに、導入規模や方向性をより具体的に固めることでリスクを軽減できます。
なお、自社に開発組織がない、または、AIに関するスキルセットをもった人材が不足していることもあるでしょう。その場合はPoCの段階で開発パートナーをアサインし、検証できる体制を組成しましょう。
★PoCについて詳しくはこちら
PoCの結果に基づき、最適なAIソリューションや開発パートナーを選びます。要件定義やPoCの段階でパートナーが参画している場合は、そのパートナーにそのまま依頼するとスムーズです。もちろんPoCの結果を基に本開発の依頼は改めてコンペを行うといったことも可能です。
すでにAIが組み込まれた既存ツールを使うのか、自社向けにカスタマイズしたシステムを開発するのかによって必要な体制が変わってきます。プロジェクト責任者やデータサイエンティストなど役割を明確にし、スムーズに開発を進められる体制を整えましょう。
選定したAIモデルに対して実際のデータを用いてプロンプトエンジニアリングとコンテキスト設計を行い、出力の精度やパフォーマンスを評価します。入力データの質と適切なプロンプト設計が結果を大きく左右するため、データの前処理とコンテキストの整備作業が重要です。評価結果を踏まえてプロンプトの改善やコンテキスト構成の最適化を進め、目標とする精度を達成できるよう繰り返し検証を行います。このアプローチで十分な結果が得られない場合は、ファインチューニングやモデルの再学習といったより高度な手法を検討します。
最終的なAIシステムを本運用に移行し、実際の業務や顧客対応に適用します。運用開始後は設定したKPIや導入目的に照らし合わせ、期待通りの成果が得られているかを定期的にチェックしましょう。問題が見つかれば即時に改善策を講じるとともに、AIに活用するデータを継続的にアップデートすることで精度向上を続けることが可能になります。
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ここでは、実際にAIを活用し成果を上げている企業の事例から、導入および活用のヒントを探ります。
各社がどのような目的でAIを導入し、どのような成果をあげたのかを知ることは、自社での応用を考える際に大いに参考になります。
PEPSICOでは、豊富な販売データに基づいて需要予測モデルを構築し、適切な価格設定とプロモーション戦略を実現しました。その結果、販促コストの最適化や在庫ロスの削減につながり、大きな収益増を達成しています。蓄積されたデータをAIにより分析し、予測と実際の販売を常に比較しながら戦略を更新するサイクルが大きな成功要因となりました。
Mahou San Miguelでは、ホテルやレストラン等への飲料供給においてAIを活用し、需要予測と在庫管理を精密化しました。顧客データを分析することで、営業担当者が最適なタイミングで訪問・提案を行え、コスト削減と売上拡大の両立を実現しています。この取り組みは、人海戦術型の営業手法からデータドリブンなアプローチへシフトする良い例といえます。
株式会社ユニメイトは、レンタルユニフォームにおけるサイズ選びの課題を解消するために、AIによる画像認識技術で自動的に採寸できるアプリを開発しました。ユーザーがスマホカメラで自身を撮影するだけでサイズが割り出され、サイズ選択や返品、交換率の大幅な改善につながっています。
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AIの導入は企業の成長だけでなく、社会的な変化をもたらす大きな取り組みです。
AI導入は単なる技術導入にとどまらず、企業の組織改革やビジネスモデルの再構築を伴う場合が多くあります。メリットとデメリットを十分に理解し、経営戦略と連動させたうえで小さく始めて改善を重ねることが定石です。
さらに、導入の成果を測定し続けることで、投資対効果を高めながら事業や企業そのものを持続的に発展させる可能性を広げていくことができます。これらのポイントを踏まえ、ぜひ自社の状況に合わせたAI導入を検討してみてください。
モンスターラボでは、世界各国のスペシャリストがチームを組み、さまざまな業界・業種のデジタルサービス/プロダクト開発から、UX/UIデザイン、ブランド開発、グロースハックまで幅広く支援しています。
ビジネスの上流工程からデジタル領域の知見を持つコンサルタントが中心となり、課題に合わせたソリューションを提案します。さらに、先端テクノロジーを含むあらゆるプラットフォームに対応できる開発体制を整えています。その他にも、アジャイル開発による柔軟な開発進行や、国内外のリソースを活用したスケーラブルな開発体制の構築、リリース後の保守運用や品質向上支援まで、さまざまなニーズに対応しています。
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