物流DXとは、IT技術を活用してサプライチェーン全体の変革を行うことです。
単に「システムを導入することで、属人化している業務を効率化できる」と思われがちですが、属人化したノウハウやプロセスを最新のIT技術やデータを用いて業務全体で「標準化」することが重要です。
また、現在の物流業界は、労働力不足の顕在化やコロナ禍の影響といった社会情勢も合間って、よりDX推進の取り組みが急務となっています。
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目次
国土交通省の『最近の物流政策について』では、物流DXを「機械化・デジタル化を通じて物流のこれまでのあり方を変革すること」と定義。単にシステムを導入するだけでなく、他産業に対する物流の優位性を高め、産業の国際競争力の強化につながる変革を行うことが重要と言及されています。
具体例として、国土交通省では下記の2つの目標を提唱しています。
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以下に目標達成に向け、過疎地域を対象に取り組まれている事例を紹介します。
長崎県五島市の離島では、本土と島の港同士を船で1日3往復することで生活物資を配送し、島の港から車の往復で配送先へ届けています。しかし、人口減少で船の便数の維持が困難となり、配送手段の確保が問題となっています。
そこで国土交通省は、物流網の維持と運輸部門の温室効果ガスを削減するため、災害時も含めた新たな輸送手段として、無人航空機の導入などによる既存オペレーションの改善に取り組んでいます。
IPAが2023年2月に発表した「DX白書2023」によると、業種別のDX取組状況の調査において、運輸業・郵便業で「DXを実施している」と回答した企業は16.9%でした。これは他業界と比較しても低い数字と言えます。
しかし「2019年から実施している」と回答した企業が1.8%だったのに対し、「2020年から実施している」と回答した企業は3.0%でした。まだまだ全体的な割合は少ないものの、年々物流業界でもDXへ取り組む企業が増加していることがわかります。
具体的には物流DXに取り組む企業の事例として、以下のようなものが挙げられています。
1. デジタルを活用した新サービスの取組
・物流プラットフォームサービスによる顧客・同業他社連携強化
・物流サプライチェーン一元管理ソリューションの創出
2. データ取得及び利活用による業務効率化、高度化
・デジタルタコグラフを活用した日報作成自動化・車両運行状況管管理
・データ活用による船舶運航モニタリング・推進性能分析高度化
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物流業界には、以前から労働力の不足や従業員の負担過多などの課題がありました。現在、コロナ禍で社会情勢が大きく変化したことにより、より旧来の課題が深刻化しています。
国土交通省の資料によると、全国の運送業者が扱う営業用トラックの積載効率は、約40%まで低下。輸送効率の指標の1つで、トラックの荷室の半分以上が空になっており、非効率な状態になっていることを示しています。
旧来の物流業界は、BtoBの大口配送をメインに効率化を測ってきました。しかし、amazonや楽天などの台頭により、EC市場のBtoCやCtoCの小口配送が増加。それにより、効率の前にスピードと即時性が重視されるようになっています。
追い討ちをかけるように、コロナ禍で小口配送の需要はさらに高まり、非効率化の改善が課題となっています。
厚生労働省が2021年に実施した「労働力経済動向調査」(画像左の図)においても、物流業界における労働力不足が深刻化していることが言及されています。
また、全日本トラック協会が行った「トラック運送業界の景況感」(画像右の図)に関するアンケートに、約7割の企業がドライバー不足と回答。市場が順調に拡大する一方で、労働力不足による配達員への負担増が大きな問題になっています。
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課題1で述べた通り、荷室の積載率(輸送効率)より配達までの時間を優先。少ない荷物を高頻度で輸配送することで、荷主からの運賃は下げざるを得ず、低賃金・長時間労働による配達員への負担が増加。国土交通省がまとめた資料からも確認できます。
結果的に、仕事がキツくて給料は安いという状況が生まれ、貴重な若年層の労働力確保が困難となり、業界全体の高齢化が加速しています。
「2024年問題」とは、2024年4月から働き方改革関連法により自動車運転業務の時間外労働時間の上限規制が適用されることによって生じるさまざまな問題のことです。具体的には年間時間外労働が上限960時間(1ヵ月あたり80時間)に制限されます。
ドライバーの長時間労働を見直すことを目的としていますが、ドライバー1人当たりの走行距離が短くなることにより、企業の利益減少、ドライバーの収入減少、送料の値上げなどの問題が懸念されています。
課題3までで述べたようにすでに多くの課題を抱える物流業界は、2024年に向けて各社に早急な対処が求められます。
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物流DXを推進するために、どのような取り組みが必要になるのか。国土交通省の資料で推奨されている2つの取り組みを紹介します。
近年は物流業界においても、AI・IoTなどの最新技術を活用した物流の自動化・機械化が進んでいます。
具体的には、AIによる行動提案で船員をサポートする自動運航船や、後続車無人システムを活用したトラックの隊列走行の実証実験を実施。
また、無人搬送機や自動ピッキングシステム、ドローンによる荷物配送など機会化する取り組みも行われており、システムやロボットによる、オペレーションの改善や働き方の改革が期待されます。
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国土交通省は、物流のサプライチェーン全体を最適化し、物流(モノの動き)・商流(商品情報)のデータを活用した新しい産業や付加価値の創出を目的とした「SIPスマート物流サービス」の構築にも積極的に取り組んでいます。
また、国内外のサプライチェーン上のさまざまな業種が持つ物流・商流データを見える化し、最適化に向けて共有・活用できるオープンでセキュリティの担保された物流・商流データ基盤を構築することで、ビジネスモデルに大きな変革をもたらせます。
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日本国内で物流DXにいち早く取り組んでいる先進事例を紹介します。
名古屋大学発の物流ベンチャーとしても知られているオプティマインド。
同社が提供する『Loogia』は、配送業者向けに「ラストワンマイル配送におけるルート最適化サービスの開発と提供」を目的にしたドライバーアプリです。
オプティマインドは、組合せ最適化技術を活用した、物流配送最適化の分野で世界トップクラスの研究実績とアルゴリズム保有。それらを活用することで、精度の高い最適な配達ルートを算出することが可能となり、配送ドライバーの業務サポートと業務フローの脱属人化につなげ、業界で深刻化するドライバー不足の解消が期待されています。
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『PickGO』は、運送会社からの配送依頼をフリーランスドライバーに紹介する配車サービス。
特徴は、ドライバーが直接、荷主(運送会社)から仕事を受注することで、多重下請けがなくなり、ドライバーの単価をあげられること。また、出発後はドライバーの現在地、到着時間がリアルタイムで分かるため、遅延のリスクを軽減や業界で深刻化するドライバー不足の解消も期待されています。
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物流DXは、システム導入=課題解決ではありません。
例えば、システムを導入して属人化した業務を誰もが行えるようにすることが目的とします。しかし、そのシステムを操作できるのは、結局、担当者(属人化している現場の当事者)だけだった。これでは、属人化の解消になったとはいえないでしょう。
そもそも、業務の属人化はなぜ起こるのか。誰もがこなせる業務であれば、属人化は起こりえません。属人化が発生するのは、そこに独自のノウハウや知識を伴う、複雑なプロセスや判断を必要とする業務だからです。
ノウハウやプロセスを標準化し、DXについて正しく理解をした上で、サプライチェーン全体でデータや課題、取り組みを共有することが大切になります。
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