DataOpsとは?DevOpsとの関係やメリットを解説

DataOpsとは?DevOpsとの関係やメリットを解説

DataOpsとは、DevOpsの考え方をデータ領域に応用した手法です。データフローの自動化・高速化を図り、データ管理者とデータ利用者が協力してビジネス価値の最大化を目指します。多種多様かつ膨大なデータに基づく意思決定の重要性が増している今、ビジネスにおけるDataOpsへの注目度が高まっています。

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DataOpsとは

DataOpsとは、DevOpsから派生した言葉で、DevOpsの考え方や文化をデータ領域に応用した手法です。部門間の壁を取り払い、データの収集・分析から活用までの組織全体のデータフローを自動化し、高速回転させることで、最大限の価値創出を目指します。

★まとめ
・DataOpsは、DevOpsから派生した手法のひとつ。
・DevOpsの文化や考え方をデータ領域に応用した手法がDataOps。
・DataOpsの目的は、組織全体のデータフローを自動化・高速回転させて最大限の価値を生むこと。

DevOpsとの関係

DevOpsとは、開発(Development)と運用(Operations)を組み合わせた造語です。

一般的に、開発部門はシステムへの新機能追加を主眼とし、運用部門はシステムの安定稼働を主眼とするため、両者の利害は往々にして対立します。しかし、両者の目的の先には「顧客のニーズに応える価値あるシステムを届ける」という共通の目的があります。

そこで、サイロ化された開発部門と運用部門の間にある壁を取り払い、協働によって価値の高いソフトウェアをスピーディーに生み出そうとする考え方が、DevOpsです。

データ(Data)と運用(Operations)を組み合わせたDataOpsは、そんなDevOpsの考え方や文化をデータ領域に応用しています。

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AIOps・MLOpsとは

AIOpsとは、人工知能(AI)と運用(Operations)を組み合わせた造語で、システム運用の自動化や効率化に人工知能を活用する手法です。AIを使ってシステム運用を自動化することで、運用コストの削減や人為的なミスの防止を図ります。

MLOpsは、機械学習(ML)と運用(Operation)を組み合わせた造語です。機械学習を取り入れたシステム開発と運用をスムーズに行うことで、価値あるソフトウェアを確実に顧客に届けることを目的としています。

AIOpsもMLOpsも、DataOpsと同様にDevOpsから派生した言葉です。ただ、DataOpsはデータの管理・利用にその考え方を適用し、AIOpsはこれをITシステムの運用に、MLOpsは機械学習システムの開発・運用に適用している点が異なります。

企業にとってDataOpsが重要である理由

今日の企業が扱うデータの量は膨大で、ビジネスにおけるデータ駆動型意思決定の重要度も増しています。

一方で、膨大なデータの収集・管理プロセスは複雑化しており、データの重複や人為的ミスによりデータの信頼性が損なわれるリスクが現実化しています。また、データ管理者とデータ利用者の間に認識の齟齬が生じることも多く、データを活用したビジネス価値創出の妨げとなっています。

よって、データ管理者とデータ利用者の連携を強化し、信頼できるデータを適時に利用できる体制を構築するDataOpsの手法が、今まさに求められています。

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DataOpsの基本要素

IPAが2023年5月に発表した「データマネジメントの高度化に対応するためのDataOpsの導入 俊敏で柔軟なデータ処理を可能にする新しいデータマネジメント手法」では、DataOpsの基本要素として、「データマネジメントプロセスの自動化」「データマネジメントプロセスに対する可観測性」「共通の目標に向けて協力できる部門横断的な組織構成」の3つが挙げられています。

データマネジメントプロセスの自動化

データの処理やデータマネジメントのプロセスが手動で行われていると、各処理やタスク同士のやりとりに膨大な時間を要します。また、人為的なミスが起こりやすく、データの品質も低下します。

DataOpsでは、データマネジメントプロセスを自動化し、データ処理の効率化とタスク間の連携強化を図ります。これにより、迅速かつ高品質なデータへのアクセスが可能となります。

データマネジメントプロセスに対する可観測性

可観測性とは、データがシステム上でどのような状態にあるか、処理プロセスのうちどの段階にあるかを可視化することです。

データマネジメントのプロセス全体を可視化することで、データの品質を下げている欠陥や、データデリバリーまでの所要時間を引き延ばしているボトルネックをいち早く発見し、解決策を導けます。

共通の目標に向けて協力できる部門横断的な組織構成

DataOpsで高度なデータマネジメントプロセスとスピーディーな対応とを両立させるには、データを作成する部門とそれを利用する部門の連携が不可欠です。

ともすると利害が対立しがちなデータ管理部門とデータ利用部門ですが、両者には「高品質なデータを迅速かつ継続的に届ける」という共通の目標があります。この共通目標を達成するには、役割の異なる部門が互いに保有するノウハウや専門知識を出し合って協力しなければなりません。

このため、異なる部門が連携しやすい組織構築が求められます。場合によっては、連携をスムーズに進めるための新たな役割を設置してもよいでしょう。

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DataOpsが解決する課題

高度なデータマネジメントを実現するDataOpsの手法は、企業が直面している「データ量の急増・多様化」「データ品質の確保」「外部環境の変化」といった課題の解決にも役立ちます。

データ量の急増・多様化

現代のビジネスシーンで価値を生み続けるには、データの分析が欠かせません。一方で、分析に必要なデータ量は急増しており、データソースやデータの種類も多様化しています。

例えば、ExcelやCSVファイルなどで管理される構造化データもあれば、XMLやJSONファイルといった半構造化データ、画像やテキスト、音声などの非構造化データもあります。

DataOpsは、ソースや構造が多様化したデータを適切に収集・保管し、必要に応じてすぐに利用できる体制を構築します。

データ品質の確保

データ駆動型の意思決定を下すには、高精度のデータ分析が求められます。その前提として問題となるのが、データの品質です。

誤記や欠落がないデータ、最新のデータが揃うことで、データの品質は向上します。また、用語やフォーマットの違いを乗り越え、一貫性を保ちながら一元化されたデータは、高精度の分析を可能にします。DataOpsは、このようなデータの品質確保に役立ちます。

外部環境の変化

ビジネスをとりまく外部環境は急速に変化しています。データ領域に関する変化も例外ではありません。
環境の変化のひとつに、国内外のデータの取り扱いに関する頻繁な法改正が挙げられます。また、主要ブラウザのサードパーティクッキーの廃止に見られるように、データソースが突如制限されることもあります。さらには、訴求したい顧客層の変化や競合他社の動向の変化に応じて、収集すべきデータや分析軸の変更を要するケースもあります。
このような外部環境の変化に対応しながら、迅速かつ継続的にデータ駆動型の意思決定を下すうえでも、DataOpsの手法が役立ちます。

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DataOpsのメリット

DataOpsを実践することで、膨大なデータの品質を維持しながら、迅速かつ柔軟にデータを活用できる組織体制を構築できます。これにより、企業は「生産性の向上」「新たな価値の創出」「データの民主化」といったメリットを実感するでしょう。

生産性の向上

データの収集から活用までのデータフローが自動化され、データ管理者とデータ利用者の連携もしやすくなるため、生産性が向上します。
例えば、アプリケーションの開発やテストに必要とされるデータにスピーディーにアクセスできるようになるため、アプリケーションのリリースまでの時間を大幅に短縮できます。

新たな価値の創出

新たな価値を創出できることも、DataOpsのメリットのひとつです。
データを管理する部門と利用する部門の間に立ちはだかる障壁がなくなり、両者が「ビジネス価値の向上」という共通の目標に向けて協力することで、これまでにないアイデアやソリューションが生まれます。
また、DataOpsで高品質なデータが迅速に得られるようになれば、これを活用して新たな製品やサービスを展開するなど、ビジネスの可能性も広がります。

データの民主化

データの民主化も、DataOpsのメリットです。
DataOpsを推進する中で、自動化を促すツールを導入したり、部門間の連携を強化する体制を構築したりするため、個々人のスキルや所属部門を問わず、必要なデータにアクセスできるようになります。
誰もがデータにアクセスできるデータの民主化が実現することで、ビジネス需要に紐づいた効果的なデータ活用が活発化し、イノベーションが起きやすい企業風土の醸成につながります。

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DataOpsマニュフェストとは

DataOpsマニュフェストとは、DataOpsプラットフォーム企業のDataKitchen社が公開している18の原則です。ここには、DataOpsを実践する上で押さえておきたい重要な18の原則が列挙されています。

  1. 継続的にお客様を満足させる
  2. 実用的な分析に重きを置く
  3. 変化を受け入れる
  4. チームスポーツ
  5. 日々の関わり
  6. 自己組織化
  7. ヒロイズムを減らす
  8. 自己反映
  9. 分析はコード
  10. オーケストレーション
  11. 再現可能にする
  12. 自由に使用できる環境
  13. 単純さ
  14. 分析は製造
  15. 品質が最も重要
  16. 品質とパフォーマンスを監視する
  17. 再利用
  18. サイクル時間を短縮する

DataOpsの成功事例

最後に、DataOpsの成功事例を3つ紹介します。

ユニメイト

株式会社ユニメイトは、レンタルユニフォームを主軸に展開する企業です。各種ユニフォームの企画からクリーニングまでを手がけています。

同社のユニフォーム事業では、クライアント企業のスタッフが自己申告でサイズを把握していましたが、ヒューマンエラーによるサイズ違いの頻発と、これに伴う返品・交換コスト、過剰在庫の増加が課題となっていました。

そこで、生産前に正確なサイズを把握するために、AI画像認識データを活用した自動採寸PWA(Progressive Web Apps)『AI×R Tailor(エアテイラー)』の開発に着手。ここでは、従来業務で蓄積されたデータと最新技術とを融合させながら、データの管理から利用までを視野に入れた開発を実践しました。

まずは従来の採寸業務のヒアリングからスタートし、採寸ノウハウを活かした適切なサイズを導くマッチングロジックを創出。採寸データを用いて検証を繰り返し、AI画像認識の精度を高めました。さらには、顔写真や採寸値といったデータの管理には、BtoB事業であることを踏まえて細心の注意を払っています。

その結果、課題だった返品・交換コストの削減や業務効率化を達成しただけでなく、ユーザーが安心して利用できるサービスが誕生しました。

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アイビー化粧品

株式会社アイビー化粧品は「日本の肌はアイビーがつくる」をビジョンに、高品質な製品作りと対面による販売を行う老舗の化粧品会社です。

ご愛用者さまの悩みの中でも多いのがシワ。そこで、新たに開発したシワ改善の薬用クリームの発売に合わせて、シワを認識する肌解析システムがあれば、カウンセリングの質をさらに高めることができると考えました。

モンスターラボはアイビー化粧品のアイディアをもとに、訪問販売員が写真を撮るだけでご愛用者さまの肌を診断できるAI肌解析システムを開発しました。

その結果、訪問販売(リアル)とAI解析システム(デジタル)を融合させることで、同社販売員の利便性の向上に貢献しました。さらに、シワの本数と評価が数字で表されるため、客観的な評価に基づきお客さまへコンサルティングができることから、販売力の強化にも寄与しています。また、蓄積されたデータを使った学習により、背景や光量により検出結果が異なるといった精度や揺らぎについても改善を図っています。

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キャッシュビーデータ

キャッシュビーデータ株式会社は、ユーザーが送付したレシート画像から生活者購買データを取得し、BtoC企業にデータの活用機会を提供する事業を展開しています。

同社は、情報資産の価値が増すなか、GoogleのOCR(Optical Character Recognition/Reader=光学的文字認識)を用いてレシート画像から購買データを収集するデータビジネスを開始しました。しかしながら、レシートの画像データを有効活用する前提として、データの正確性と業務効率の向上が課題となっていました。

そこで、画像処理技術を改善してAIの画像認識精度を高め、経験豊富なAIエンジニアとの連携で文字情報の抽出方法を工夫することで、収集するデータの正確性を追求。画像処理技術の改善によって高精度のデータ抽出・分析が可能となり、人の手による確認作業の負担の軽減に成功しました。

さらには、収集したデータをマーケティング情報として活用できるよう、レシートに記載された文字とJANコードを照合して商品を判別する方法を採用。業務効率を飛躍的に改善しただけでなく、データの利用段階まで見据えた付加価値の高いデータの収集・管理システムを構築しました。

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まとめ:DataOpsの部門を超えたデータマネジメントでビジネス価値の最大化を

DataOpsを実践することで、部門を超えて組織全体でデータフローをスピーディーに回し、必要な人が必要なときにデータにアクセスできるようになります。これにより、企業には生産性の向上や新たな価値の創造といったメリットがもたらされます。データマネジメントの自動化をはじめとする基本要素を取り入れてDataOpsを推進し、ビジネス価値の最大化を目指しましょう。

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記事の作成者・監修者

平田 大祐(株式会社モンスターラボ 常務執行役員)

平田 大祐(株式会社モンスターラボ 常務執行役員)

2004年IBMグループに入社し、IBM ITスペシャリストとしてシステム開発に従事。 2009年からベンチャー企業にて受託開発、コンテナ型無人データセンターの管理システム、ドローン開発などソフトウェアからハードウェア開発まで幅広く関わる。チーフテクノロジストとして2015年にモンスターラボへ入社し、2018年4月より最高技術責任者であるCTOに就任。 プロフィールはこちら