【レポート】既存事業のDX推進、必要なものは? 6ステップの実行手順を解説

2020年6月3日(水)、Repro株式会社と株式会社モンスター・ラボが共同でオンラインセミナー「攻めのDXを推進し、ビジネスを成功させるには?」を開催しました。

この記事では、セミナー第2部「DXで売上アップ!って具体的に何をする?実行手順と先行事例」をレポート(第1部のレポートはこちら)。Reproのストラテジックプランナー駒谷徹さんが登壇し、DX推進の手順を解説しました。

DXの分類と推進に必要な要素

ビジネス戦略の策定、運用、開発などDX全般の支援を行うRepro。相談に訪れるクライアントからは「何に集中すればいいかわからない」「他部署を巻き込むのが難しい」「経営陣の期待と現場の活動を擦り合わせるのが難しい」というDXの悩みを聞くといいます。

そこでまずは、企業のDXをわかりやすく分類し、それぞれの推進に必要な要素を解説しました。

DXの分類

駒谷さんはDXを「攻守」「新規・既存」の2軸で分類。縦軸の「攻守」は売上向上(攻め)もしくはコスト削減・効率化(守り)、横軸の「新規・既存」は新規事業の立ち上げもしくは既存事業のトランスフォーメーションを示します。

売上向上×新規事業は「新規サービス開発」第1部で紹介された事例「釣りドコ」はこの枠に入ります。

売上向上×既存事業は「OMO推進」「エンゲージ強化」「複数サービス横断」など。リユース事業のハードオフグループは、本やDVDを扱う「ブックオフ」、AV機器や楽器を扱う「ハードオフ」を含む8つのブランドを横断し、顧客を囲い込む戦略をとっているため、この枠に入ります。

コスト削減・効率化×既存事業は「手動業務の自動化」など。このマトリクスでは唯一の“守りのDX”枠です。

「経済産業省による『2025年の崖』は“守り”寄りのDXといえるでしょう。一方、フィリップ・コトラー教授が掲げる『Digitize or Die』、書籍『アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る』の内容は“攻め”寄りのトピック。海外で言及されるDXも“攻め”が中心だと思います」

新規事業の事例を紹介した第1部に対し、第2部では既存事業における“攻めのDX”を紐解きます。

DX推進に必要な要素

既存事業による“攻めのDX”推進は、以下の3つの観点が重要です。

① 戦略・方針
・E2Eカスタマージャーニーの設計
・タッチポイントごとのUX企画
・戦略チャネルの定義

② 人材・組織
・デジタル人材の育成もしくは外部調達
・アジャイル型の組織構築

③ システム・インフラ
・データ創出、統合、活用

「③システム・インフラを改善を先行する企業が多いと思いますが、重要なのは上位レイヤーの設計だと考えています。①戦略・方針、②人材・組織が後手に回ると、優先度の低いDX活動が増え、現場が疲弊してしまうのです」

また、統合したデータに必要なものがなかったり、データのリアルタイム性が担保されていないことでPDCA運用に活用しにくいという問題が起きる可能性も。そのため、上記の3点は一緒に進めることが重要です。

◎まとめ

・DXは「攻守×新規・既存」で分類できる

・攻め×既存事業のDXはシステム・インフラの改修がどうしても先行しがちだが、戦略や人材・組織もセットで検討する

事業成長に貢献するDX推進の条件

DXの推進手順の前に、まずはデジタルならではの強みを整理。デジタルの強みは、

① 効果測定しやすい(成果を数字で取りやすい)
② すぐにやめられる(改修・改善コストが低い)
③ つねに接点を持てる(ユーザーの状況を捉えて適切なオファーができる)

以上の3点に集約でき、相互に影響しています。

「デジタルのコアな強みは、顧客と接点を持ち続け、PDCAを高速化できること。デジタルを使ったマスっぽい業務や、アプリを作って終わりというようなPDCAを回さないデジタル活用では、DXの価値を十分に発揮できません」

ここで、P&Gの商品「ジーニアスX」を例にデジタルの強みを解説。

ジーニアスXは、AIを搭載した充電式電動歯ブラシ。歯ブラシとアプリが連動し、磨き残しを検知して歯磨き指導をしてくれます。このケースでは、

① 磨き残しのデータをとる
② アプリをアップデートする
③ プッシュ通知などで適切な歯磨き指導をする

というサイクルを回し、サービス・顧客体験を改善。デジタル活用により、圧倒的な改善速度を実現することで、事業の競争優位性を保っています。

◎まとめ

・デジタル活用の本質的価値は事業のPDCA高速化

・事業のPDCA高速化に寄与するDX活動を優先すべき

・「アプリを作って終わり」は有効なDXではない

DXの進め方の選択肢と採用基準

DXの進め方には「トップダウン」「ボトムアップ」の2通りのアプローチがあります。ここからは、それぞれの特徴と進め方のステップを紹介。

ボトムアップアプローチは既存のUX改善。アジャイル・スプリントなどによって短いサイクルでPDCAを回します。そのため、短期間・低予算でできるのが特徴です。

「“まずは現場から”という認識であれば、ボトムアップで成果を出し、その後トップダウンを検討するといいでしょう。クイック運用で早期の事例創出を目指すこと、また、デジタル人材の登用もポイントになります」

トップダウンアプローチは抜本的なUX改善。中長期的な取り組みで、ウォーターフォール的な進め方になります。予算・時間がかかり、部署横断的な取り組みが必要になるケースも。

「変革の度合いが高いため、強いビジョンを要するアプローチ。そのため、経営陣に強い危機感がある場合に採用しましょう。社内の擦り合わせがうまくいかず、水掛け論になってしまうこともあるので、外部のコンサルティングをうまく活用するのが重要だと思います」

DXの進め方の手順

最後に、トップダウン・ボトムアップの一般的な進め方を紹介します。

トップダウンの進め方

まずは「仮ロードマップの定義」。いつまでにどのくらいのDXを目指すかをステップごとに切り、DX推進のための予算取りを行います。

次に「ジャーニー&コンセプト企画」。想像でカスタマージャーニー・施策案を描き、デジタル活用によるビジネス価値を定義します。

そのうえで「ジャーニー&コンセプト検証」へ。ユーザーインタビューを中心に、実効性を検証します。

「この時点でデータ分析をしてもいいのですが、時間がかかってしまい、思ったように進まないことも。無理にデータを分析せず、定性的なリサーチだけで進めてもいいでしょう」

そして「事業企画書策定」を実施。必要な人材組織、システム要件を定義し、スケジュールに落とします。これをもとに順次「要求定義・ベンダー選定」「開発」のステップへ。開発では、スケジュールと予算をコントロールしながら進めましょう。

ボトムアップの進め方

まずは、さまざまなデジタルチャネルの中から注力チャネルを設定し、KPI・施策を決めます。その後、PDCAを回しながら運用し、スモールウィンなどの成果を社内報告。より大きな活動を実行するためにネクストプランを策定するという流れです。
チャネル選びのポイントは、

① データを自社保有できる
② チャネルを自由に改修できる
③ チャネルの顧客来訪頻度が高い

の3点。顧客来訪頻度が高ければデータを取得しやすく、PDCAの高速化に繋がります。

「具体的なチャネルとしては会員用Webサイトやアプリがいいでしょう。店舗中心のビジネスならアプリがベストですが、小規模事業ならLINEもいいと思います」

駒谷さんいわく「会員用Webサイトやアプリには機会損失の要因がたくさんある」とのこと。ユーザー視点で地道な改善を重ね、最終的な成果創出に繋げることが重要と語りました。

DX推進の取り組みに悩んでいる経営者様・企業担当者様へ

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■登壇者プロフィール

Repro株式会社 Sales&CS企画室 ストラテジックプランナー駒谷 徹 氏

株式会社ビービットに新卒入社。カスタマーサクセスとコンサルタントに従事後、Repro株式会社に参画。Reproにて大手クライアントのカスタマーサクセスを担当した後、Repro Web事業の立ち上げおよびカスタマーサクセスチームマネージャーに従事。現在はSales&CS企画室でソリューション開発を担当。

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モンスターラボ DXブログ編集部

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