DXの第一歩:インフラ現場の課題を解決する情報管理のあり方とは?

インフラ現場の課題を解決する情報管理のあり方とは?

こんにちは、モンスターラボ EnterpriseDX部門の重水です。
今回は、インフラ業界の現場が抱える「情報管理」の課題解決に繋がる、新しいアプローチをご紹介します。
日々の生活に欠かせない電気、ガス、水道、通信といった社会インフラ。これを安定して皆様にお届けするためには、現場作業の正確な記録と、関係者間でのスムーズな情報共有が不可欠です。まさに事業の基盤となる重要な要素と言えるでしょう。
しかし、その基盤を強化しようにも、現場では様々な課題が山積しているのが実情ではないでしょうか?
今回ご紹介する情報管理の考え方は、その基盤強化を後押しし、インフラの安定供給という社会的責任を果たしていく上で、きっとお役に立てるはずです。ぜひ参考にしてください。

インフラ現場を悩ます「情報管理」の課題

DX推進とデータ管理の重要性が叫ばれる一方、インフラの最前線である現場では、乗り越えるべき特有の課題が立ちはだかっており、これらが変革を阻む壁ともなり得ます。

1. 大量発生する情報と、その分散・検索性の問題

実際の施工工事では、多様な情報(例:図面、部品リスト、CADデータ、報告書、写真など)が大量に発生します。これらの情報は、担当者ごとやファイルサーバー内のフォルダなど、様々な場所に分散して保管されがちです。

また、たとえシステムなどで一元的に管理しようとしても、フォルダ構造が複雑化したり、ファイル名のルールが統一されていなかったりして検索性が悪く、必要な情報をすぐに見つけ出せないことがよくあります。

2. 課題が引き起こす悪循環

その結果、情報探しに時間がかかり業務全体の生産性が低下し、手戻りなどでコストが増加。情報不足からミスが発生し品質も不安定になりがちです。さらに、過去の知見が活かせず、組織としての知識・技術力の向上も妨げられ、悪循環に陥りやすくなります。

目指すべき「あるべき理想の姿」

これらの課題を解決し、情報が「きちんと」管理されるようになると、現場の業務は大きく変わります。私たちが目指すべき「あるべき姿」は、以下のような状態です。

  • 情報の一元化とアクセス: 全工事情報がシステムに集約され、いつでも参照可能。
  • ・瞬時の情報検索: 必要な情報をキーワード等で即座に発見。
  • ・正確な履歴追跡: 全変更履歴が記録され、過去の状態も把握可能。
  • ・容易な情報再利用: 過去データを流用し、標準化と効率化を促進。
  • ・高効率・高品質な業務: 無駄なく作業が進み、データに基づき的確に判断。

この理想の姿が実現すれば、情報検索や手戻りの無駄がなくなり業務効率は大幅に向上します。ミスが減って品質は安定し、過去データの活用で標準化や技術継承も進みます。そして、データに基づいた的確な判断が可能になり、生産性の高い業務が実現します。

現場作業における情報管理ソリューション

「あるべき姿」を実現するためには、まず足元の課題を解決することが不可欠です。特に、現場作業における情報のデジタル化と共有は、多くの変革の土台となります。

モンスターラボでは、この情報管理の課題解決に貢献するソリューションをご提供し、皆様のDX推進の第一歩を力強くサポートします。

解決への考え方

私たちが提案するのは、工事に関連する情報を体系的に整理・管理するための新しい仕組みです。これは、たとえば複雑な機械などの設計情報を管理する時に使われるような考え方に似ており、「一つの工事全体」を中心に据えて、それに関連する全ての情報をコンピューターシステム上で一箇所にまとめて管理する方法です。

プロジェクトのプロセス

では、この情報管理の考え方を形にしたソリューションは、どのようなデータをどのように管理していくのでしょうか。さらに具体的に解説します。

「工事」を大きなフォルダ(親)と考える

まず、個々の工事(例:工事番号「xxxxx-xxx」)を、パソコンのフォルダのようなものとして、システム上の管理単位とし、その工事で使った「施工部品」(パイプ、バルブ等)や「関連資料」(図面、報告書、写真等)をすべて関連付けます。これにより、工事に関する情報が一箇所にまとまります。

関連情報をフォルダに紐づける(子)

その工事で使った「施工部品」(パイプ、バルブ、継手など)や、「関連資料」(配管図面、工事報告書、現場写真など)を、すべてこの工事に関連付けます。フォルダの中にファイルを入れるようなイメージです。
また、さらに施工部品に関連する情報(部品の性能資料やサプライヤ情報、部品に必要な専門工具など)(孫)がある場合は部品に関連付けします。

部品には固有情報を持たせる

個々の施工部品には、それぞれ「品番」「仕様」「製造年月」「単価」といった詳細な情報を持たせます。

「いつ・誰が・どう使ったか」も記録

単に部品を紐づけるだけでなく、「その部品を何個使ったか」「いつ取り付けたか」「誰(どの業者)が施工したか」といった、工事と部品の関係性に関する情報もしっかり記録します。

逆引き検索ができるように

部品(例:「品番Pxx-xxxのパイプ」)から逆引き検索すると、「このパイプが使われている工事はどれか?」がすぐに分かるようになります。また、同様に関連資料(例:特定の図面)などからも逆引き検索により関連する工事を探せます。

承認プロセスもシステム化

工事報告書など、上司や責任者の確認・承認が必要な書類は、システム上で回覧し、承認の記録を残せるようにします(ワークフロー機能)。

工事の変更履歴(バージョン)を管理

工事に変更(例:老朽化した部品の交換、補修工事)があった場合、古い情報(例:バージョンA)を消さずに、新しい情報(例:バージョンB)を作成します。
変更があった部分(例:交換した部品)だけを新しい情報に更新し、変更がない部分は古いバージョンから情報を引き継ぎます。
これにより、「いつ、どの部品が、どのように変わったか」という正確な工事履歴が残り、後から簡単に確認できます。
たとえば、「2024年11月時点の工事の状態は?」と日付で検索すれば、その時点のバージョンの情報が表示されます。

結果

情報管理ソリューションを実行することで、情報がまとまりバラバラだった工事関連情報が一箇所に集まり、整理されます。また、情報の属人化を避け、探しやすく、必要な情報をすぐに見つけることができるでしょう。さらに履歴がわかるため、いつ、どんな工事や変更が行われたかが正確に追跡できます。

そして、これらの情報は蓄積されていくため、再活用しやすく、過去の工事情報を参考に、新たな工事の計画を立てたり、書類を作成したりすることが可能になります。したがって、工事計画作成プロセスの標準化につながります。
情報が正確に管理されることで、ヒューマンエラーなどのミスが減り、間違いが起こりにくくなります。

このように、情報を中心(工事)とそれに関連するもの(部品や資料)に分けて体系的に管理し、変更履歴も追えるようにすることで、施工工事のような現場作業の情報管理を格段に効率化・高度化できるソリューションになっています。

まとめ

「現場の情報をデジタル化して管理する」――。これって、単に「仕事が少し楽になる」「ミスが減る」だけだと思っていませんか? もちろんそれも大きなメリットですが、実は、現場の情報管理をしっかり行うことは、会社の未来を左右するもっと大きなパワーを秘めているんです。

会社の「稼ぐ力」がグンと伸びる! (競争力UP)

現場の情報探しや書類作成の時間が減れば、その分、もっと多くの仕事に取り組めますよね。これは単純にコスト削減になるだけでなく、会社の「稼ぐ力」そのものを強化します。
さらに、正確な情報でミスなく質の高い工事ができれば、お客様からの信頼は急上昇!「あの会社に頼めば安心だ」となれば、自然と選ばれる存在になり、価格競争からも一歩抜け出せるかもしれません。

「いざという時」に強い、しなやかな会社になる! (安定性UP)

「あの仕事はベテランの〇〇さんしか分からない…」なんて状況、ありませんか? 情報管理システムで知識やノウハウを会社全体で共有できれば、〇〇さんが急に辞めても大丈夫。技術が会社に残り、安定して事業を続けられます。
さらに、災害時や予期せぬトラブルが発生した時も、設備の状況や過去の対応履歴がすぐに分かれば、慌てず迅速に対応できる。これは会社の「しなやかな強さ」=事業継続力を高めることに直結します。

未来を変える「新しい芽」が育つ! (成長力UP)

システムに蓄積されたデータは、ただの記録ではありません。それは未来へのヒントが詰まった「宝の山」!「どんな部品が壊れやすいか」「もっと効率的な工事方法は?」など、データを分析すれば、今までにない改善点や新しいサービスのアイデアが見つかる可能性があります。
また、社員が日常的にデジタルツールに触れることで、「もっとこうしたら?」という改善意欲や新しい発想が生まれやすい土壌も育まれます。

課題解決のポイント

・「工事」を軸に関連情報(部品・資料・履歴等)を紐づける情報管理モデルを導入し、データの検索性・追跡性・再利用性を高めることで高効率で質の高い業務を実現する

・単なる業務効率化に留まらず、企業の競争力・事業安定性・成長力の向上にも貢献する基盤や組織風土を醸成する

インフラ現場のデジタル化、DX化は、多くの可能性を秘めていますが、推進には様々なハードルもあります。モンスターラボは、これまで培ってきた知見と技術で、皆様の現場が抱える課題解決を力強くサポートします。

現場の情報管理の改善、業務プロセスのデジタル化、その他DXに関するお困りごとがございましたら、テーマの大小に関わらず、いつでもお気軽にご相談ください。皆様からのご連絡を心よりお待ちしております。

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重水 淳(株式会社モンスターラボ DXコンサルタント)

重水 淳(株式会社モンスターラボ DXコンサルタント)

重水 淳(株式会社モンスターラボ DXコンサルタント) 企業のDXを推進するコンサルタント。PLMシステムなどの企画・導入・活用支援におけるエンジニアとしての深い実務経験と、セールス活動で培った顧客課題への洞察力などを掛け合わせ、現場の実情に即した実践的なコンサルティングを提供。単なる業務改善提案に留まらず、さまざまな技術の選定から導入、そして組織への定着化までを一気通貫で支援し、持続的な成長と競争優位性の確立に貢献。