非技術者の利用ハードルを下げ、データ活用文化の醸成をした事例

非技術者の利用ハードルを下げデータ活用文化の醸成をした事例

はじめまして。モンスターラボでデータ&バックエンドエンジニアを担当している佐野義彰です。
今回は社内における非技術者のデータ活用文化を醸成した事例をご紹介いたします。

データをビジネスに活用できる状態に分析し、データに基づいて意思決定を行うデータドリブンというアプローチが注目されていますが、とりわけ、専門知識を持たない担当者・ビジネスユーザーである非技術者には高い技術的ハードルがあり、全社的にデータ活用文化を醸成していくことは難しいと感じる方も多いかもしれません。

本記事では、マーケティングデータと営業データを統合した自然言語ベースの分析基盤構築プロジェクトや、専門知識を持たない担当者・ビジネスユーザーである非技術者でも高度なデータ分析を可能にする「DataAnalyze AI」の活用について詳しく解説し、データ分析サイクルの大幅な時間短縮を実現した取り組みを探ります。

データは豊富にあるものの分析リソースが不足している企業様や、データ活用の具体的な手法にお悩みの皆様にきっと役に立つ事例です。ぜひご参考ください。

企業の情報と案件概要

・業界:医薬品メーカー
・事業内容:医薬品の開発・製造・販売
・案件のサマリ:海外市場への製品展開において、マーケティングデータと営業データを統合分析できる基盤を構築
・実施体制:クライアント側マーケティング部門・営業部門、当社側コンサルタント・デザイナー・エンジニア

課題

抱えていた課題

A社は海外市場への展開にあたり、効果的なマーケティング戦略の立案が急務でした。
しかし、Google Analyticsなどのコーポレートサイトのデータは取得しているものの、商品PRに関するサイトのデータや分析リソースが社内になく、データ活用が限定的なものとなっていました。

また、営業データとマーケティングデータが別々に管理されており、相関性を分析できておらず、地域特性を踏まえた戦略的意思決定に必要なインサイトを得るための分析基盤がありませんでした。

したがって、データ分析から施策立案までに時間がかかり、新市場への迅速な対応が困難といった課題に直面していました。

あるべき理想の姿

こういった課題からA社が考える理想の状態は、専門知識がなくても、営業部門やマーケティング部門が自ら必要なデータ分析を実行し、マーケティング活動と営業成績の相関関係を容易に可視化し、効果的な施策立案ができる仕組みがあることでした。

また、データを基にしたインサイトを日常的な業務フローの中で活用できる体制があることで分析から施策立案までのサイクルを短縮し、新市場での迅速な意思決定を可能にすることでした。

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ソリューション

MLのソリューション

当初A社から依頼されたのは、海外市場向けのキャンペーンマイクロサイト構築でした。しかし、弊社との協議を重ねる中で、単なるウェブサイト制作にとどまらず、データを活用した商品の市場展開全体を加速させるソリューションへと発展しました。

弊社のDataAnalyzeAIを活用したソリューションは、従来のデータ分析プロセスを大幅に簡略化し、効率化します。従来のデータ分析では「データプラットフォームへの接続と抽出・ロード」「データ変換・カタログ作成」「データ可視化・分析・洞察」「施策検討」「施策実行」という多段階のステップが必要でしたが、DAAを活用することで「データプラットフォーム」から「自然言語による問いかけ」「施策実行」というシンプルなステップへと変わります。

プロジェクトのプロセス

データを活用し、商品の市場展開全体を加速させるため、DataAnalyzeAIを活用し統合的なデータ分析基盤の構築を実施しました。
プロジェクトは以下のステップで進行しました。

  • ・市場・データ分析フェーズ
    • ・海外市場特性の分析と既存データ資産の棚卸し
    • ・GA4データと営業データの統合可能性の検証
    • ・データ分析ニーズの特定とユースケースの優先順位付け
  • ・統合データ環境構築フェーズ
    • ・DataAnalyze AI基盤の初期構築
    • ・GA4データ取り込み環境の整備
    • ・営業データとの連携システム設計・実装
  • ・キャンペーンマイクロサイト構築フェーズ
    • ・地域特性を考慮したUX/UI設計
    • ・DataAnalyze AI基盤と連携したデータ収集機能の実装
  • ・社内ツール連携フェーズ
    • ・既存社内チャットツールとDataAnalyze AIの統合開発
    • ・自然言語によるデータクエリインターフェースの提供
  • ・継続的改善サイクル確立フェーズ
    • ・業種特化型ナレッジの整備と更新プロセスの構築

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プロジェクト上での壁、困難とその解決策、対応策

プロジェクトを進行する上でデータ品質や業種特有の分析ニーズへの対応、非技術者の利用促進などの障壁がありました。

データ品質の課題

異なる事業所から収集したデータの形式不統一や欠損値の存在がデータ品質の足かせになっていました。そこで分析ユースケースに最適なデータ形式の定義と、必要に応じたデータ変換処理の提案を行いました。

業種特有の分析ニーズへの対応

当該地域特有の指標や分析パターンへの対応不足に対しては業種ナレッジ(分析ユースケースカタログ)の拡充だけではなく、当該地域特有の分析パターンと、クライアント固有のローカルナレッジの整備を行うことで解決を図りました。

非技術者の利用ハードル

データ分析に不慣れな営業部門の利用促進に関しては自然言語インターフェースの洗練と調整や、社内チャットツールとの連携を実装することでデータ分析に不慣れな非技術者でも通常の業務の中でデータ分析を基にしたインサイトを得られる仕組みを構築しました。

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結果

海外市場に最適化されたキャンペーンサイトを構築。従来の静的なサイトとは異なり、ユーザー行動データをリアルタイムに準ずるターンアラウンドで収集・分析できる仕組みを構築しました。

また、統合データ分析基盤として、GA4データと営業データを統合し、自然言語で分析可能なDataAnalyze AI環境を実装しました。

既存の社内コミュニケーションツールとDataAnalyze AIを連携し、日常業務フロー内でのデータ活用を実現しました。

さらに、DataAnalyze AIにより取得した結果データを活用することで、web訪問者と売上の時系列相関分析、地域別分布分析、ユーザー獲得チャネル分析、検索トレンドと売上の関連性分析など、マーケティング意思決定に直結する高度なレポートを、より簡単に作成できるようになりました。

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ゴール

・マーケティングデータと営業データが有機的に連携
・非技術者でも自然言語で高度な分析が可能に
・データから得られたインサイトをすぐに施策に反映できる環境を実現
・分析から施策立案までのサイクルを従来の1/3の時間に短縮
・これにより、A社は海外市場への展開において、データに基づいた迅速かつ効果的な意思決定が可能に

今後

A社では、今回構築したDataAnalyze AI基盤を拡張し、別の地域における類似データや季節・イベントデータも統合分析対象に含める計画を進めています。これにより、さらに包括的な市場理解と戦略立案が可能となることを目指しています。

課題解決のポイント

・単なるウェブサイト構築を超えた価値提供:当初のマイクロサイト構築の範囲を超え、データ活用全体の変革を実現するソリューションへと昇華させたことで、クライアントビジネスへの本質的な貢献を実現
・導入の敷居を下げる段階的アプローチ:限られたデータソースから小さく始め、成功体験を積み重ねることで組織全体の受容性を高めた
・業種特化型ナレッジの活用:業界特有の分析パターンやユースケースを事前に組み込み、すぐに価値を生み出せる環境を構築
・既存ワークフローとの統合:新たなツールとして独立させるのではなく、社内で日常的に使われているコミュニケーションツールと統合することで、利用ハードルを大幅に低減。データ活用文化の醸成に貢献

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記事の作成者・監修者

佐野 義彰 (株式会社モンスターラボ データ&バックエンドエンジニア/テックリード)

佐野 義彰 (株式会社モンスターラボ データ&バックエンドエンジニア/テックリード)

20年以上のIT業界経験を持つエンジニア。ベンチャーでキャリアを開始、大手SIerや中小ベンダーでの経験を経て、フリーランスとして幅広い技術を習得。現在はモンスターラボにてデータ&バックエンドエンジニアとして従事。要件定義から開発まで、テックリードとして多くのプロジェクトに携わる。社内では、データエンジニアリング文化の醸成に尽力し、技術的なリーダーシップを発揮、チーム全体のスキル向上にも貢献している。