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2023年11月にモンスターラボの社員より『ソリューションアーキテクトが起こす、小さな現場革命 〜「炎上案件 ゼロ」を実現する上流工程の仕事術〜』という書籍をKindleより出版いたしました。
・ソリューションアーキテクトが起こす、小さな現場革命 〜「炎上案件 ゼロ」を実現する上流工程の仕事術〜
この書籍が題材としている”ソリューションアーキテクト”ですが、皆様にとっても、まだまだ聞き慣れない職種かと思います。
ところが、我々がをシステム開発を担当させていただく中で、ソリューションアーキテクトが活躍する現場では
といった嬉しいお言葉を多数、頂戴しております。
そこで本記事では書籍の紹介も交えながら、ソリューションアーキテクトという職種の活躍と提供価値について連載形式で紹介していきます。
注)これ以降、ソリューションアーキテクトについては”SA”と表記させていただきます。
第2回目となる本記事では、テーマを「提案の進め方」に置き、ソリューションアーキテクトが実践するクライアントとITベンダー双方がハッピーになれる提案の進め方をご紹介していきます。
ここでは、まず提案活動にSAがいるメリットと差別化ポイントについて、実際に起きるトラブル事例を交えながら見ていきましょう。
従来の提案活動では、クライアントからの要望を受けたITベンダーは、営業担当を窓口にプロジェクトマネージャー(PM)・システムエンジニア(SE)が中心となって以下のようなことを検討します。
彼らは、個々の立場から「プロジェクト開始後にトラブルを発生させないため(=クライアントに迷惑をかけない)」を意識して「リスクは何か?それをどう解決するか」という目線で、課題と解決策をまとめながら提案を作り上げていきます。
この進め方自体に問題はありませんが、時として提案を受けるクライアント側に余計な誤解や心配を与えてしまうケースもあります。
例えば少しハードルが高い課題をITサービスで解決させるような場合では「御社の要望を実現するには、◯◯◯な課題や△△△なリスクがあって…」といったリスクをベースとした会話が必然的に生まれます。
こうなるとネガティブイメージが先行してしまい、クライアントは「本当に自分たちの課題を解決してくれるのか?」と不安を感じてしまうかもしれません。
もちろん、クライアントを不安にさせるつもりは提案側にはありません。
しかし、彼らは「受注後のプロジェクトを安定稼働」というミッションを持っているため、リスクを早い段階から排除しようという思いが強く、時にそれが悪目立ちしてしまうのです。
★ポイント 上記はITベンダー側に起因するトラブル事例でしたが、書籍の中では反対にクライアント側に起因する事例もご紹介しております。 ➡︎書籍の購入・閲覧はこちら |
提案時に起きるトラブルは、ITベンダー・クライアントのどちらが悪いということはなく、伝え方・考え方の違いで生じるボタンの掛け違いが主な原因だったりします。
このような、ちょっとしたすれ違いを解消するのが、お待たせしましたSAの存在です!!
SAはITベンダー側に位置しながらも「PM・SEの提案」と「クライアント要望」を俯瞰的に見て
など「両者がハッピーになるためには?」「要望と提案の間にある「溝」を埋める代替案はないか?」といった視点で提案を最適な形で表現する調整役を担います。
とは言え、いきなり
といった物言いは、不協和音の元で逆効果。
関係者には「そういうことか!」「それだ!!」と気持ちよく、発見と納得感を得てもらうのが一番です。
そこで次からは、提案活動を気持ちよく進めるためにSAが普段から進めている実践術を見ていきましょう。
今回は新規提案や課題解決で活用している「トップダウン提案」について紹介します。
これは、まずクライアントの要望を全て叶える「理想の100点構想」を組み立て、その構想を業務フロー図などを使って関係者で共有しながら、予算・納期に合わせて実現可能なラインへ落とし込みを行う手法になります。
普段の提案は、今回ご紹介しているトップダウン型とは真逆に位置するボトムアップ型の提案と言えます。
具体的には、まず「確実(安全)に実現できるライン」を定め、そこから本来の要求に向かってボトムアップで調整を行っていきます。
ボトムアップ型の長所は「実現できること」を主軸に置いた堅実性にあり、課題やリスクを極力、排除してプロジェクトを安定稼働させる方法をクライアントは知ることができます。
一方で、仮に内容が優れたものであっても、会話の軸がリスクや課題をベース進むので、前述した「本当に我々の課題が解決されるのか?」といった不安をクライアント側が持ってしまう短所も持ち合わせています。
またリスクを排除しようとするあまり、クライアントが本当に望んでいた機能やサービスが提案内容から漏れてしまうことも稀に発生します。
これらの短所を補うのがトップダウン型の提案であり、次に紹介するような特徴をもっています。
トップダウン型の提案では、最初にクライアントが求める最終ゴールである「理想の100点構想」を共有することに主軸をおいているため「我々の課題・理想を理解している」といった安心感の提供が可能になります。
また、クライアントとITベンダーが一緒になって理想の具体化を進めていくと「今なぜ、それがいま実現できていないのか?」といった理想と現実のギャップに出会うこともあるでしょう。
そして、このギャップこそが隠れたニーズであり、そこからクライアント側も想像していなかった「解決させるべき真の課題」が明らかになるケースもこれまで何度も経験してきました。
トップダウン型の提案を用いて、理想系をベースに話が進めていくと「予算や納期の都合で今は全てを実現するのが難しい」という話も当然でてくるでしょう。
このような場合には「今期のフィードバックを活かして来期以降に追加開発を続け、当初の理想系を目指しましょう」といった段階的にサービスを成長させ、徐々に理想形を目指していくような提案をとらせて頂くケースも多くあります。
これは最初にクライアントとITベンダーの間で理想像を共有しているからこそ可能なことで、クライアントにとってはサービスが継続的に成長を続け、逆にベンダー側は安定した追加受注が見込める、まさに理想のWinWin状態にあると言えます。
今回ご紹介したトップダウン型の提案ですが、必ずしも従来のボトムアップ型の提案より優れているということはありません。失敗の許されない確実性が求められるプロジェクトでは、逆にトップダウン型の提案がクライアントを不安にさせてしまうこともあるでしょう。
大事なのは本来、提案とはクライアントの未来をデザインする時間であって、不安を煽る時間ではないということです。
このようなストレスを持たれてしまう背景には、クライアントの現状・要望・企業方針など様々な要因があり、逆に言うとITベンダーはそれらを理解して最適な手法で提案というコミュニケーションをとることが求められます。
そこで「今回紹介したトップダウン提案」と「従来のボトムアップ提案」の両方を選択できる仕組みがあれば、提案の引き出しが増え、最初の1歩目の段階からクライアントと伴走して未来を創っていくことが可能になるのです。
今回は「提案の構成や進め方」を中心に、クライアントとITベンダーの両者がハッピーになるためのストーリーをご紹介させて頂きました。書籍の中では、ITベンダーが実際に資料作成を効率的に行うための実践ノウハウもご紹介しております。
今回の記事に興味を持っていただけましたら、2023年11月に出版された『ソリューションアーキテクトが起こす、小さな現場革命 〜「炎上案件 ゼロ」を実現する上流工程の仕事術〜』にてSAのより詳しい業務内容をご紹介しておりますので、こちらもお手にとっていただけますと幸いです。
次回は、提案後からプロジェクトが実際に開始されると最初に行う「要件定義」をテーマに「SAが実践するプロジェクトの炎上を防ぐ、要件定義の進め方」を予定しております!!
モンスターラボは、約20年にわたるサービス・プロダクト開発実績から得られたデジタル領域の知見や技術力を活かし、デジタルプロダクト開発事業を展開しています。
先端テクノロジーに対応した高度なIT人材があらゆるプラットフォーム上での開発を支援します。アジャイル開発とDevOpsによる柔軟な開発進行や、国内外のリソースを活用したスケーラブルな開発体制の構築も可能です。 また、リリース後の保守運用や品質向上支援まで伴走可能です。
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