紙で書くのが当たり前だった送り状を、スマホで手続きできるように──。
訪日外国人が自分のスマホから、荷物の配送手続きまで完結できたら、それだけで旅行体験はぐっと快適になります。
でも、ただデジタルにするだけでは、本当に使えるサービスにはなりません。
今回のプロジェクトでは、「インバウンド対応」「多言語対応」といった表面上の話だけでなく、文化や業務、そして現場の負担にまで踏み込んで再設計していきました。
本記事では、「なぜUXや業務プロセスの視点が不可欠だったのか?」という点にフォーカスしながら、プロジェクトの裏側をご紹介します。
目次
今回のクライアントが目指していたのは、以下のようなサービス実現でした:
・スマホから送り状が発行できる:紙での手書きをなくしたい
・訪日外国人でも使いやすい:言語や文化の壁を取り除きたい
・宿泊施設での受付業務もスムーズにしたい:フロント業務の負担を軽減したい
ただし、サービス開発の目的が「リリースすること」、「デジタル化すること」になってしまうと、本来届けたかった価値は実現しきれません。
だからこそ私たちは、「導入後に、実際にスムーズに使われる」ことをルールとして、業務プロセスごと一緒に見直していきました。
UI/UXの多言語対応と並行して、私たちが力を入れたのが「現場業務の再設計」です。
従来のホテル業務では、以下のような流れで荷物の発送対応が行われていました:
チェックアウト時、フロントで
→ 宿泊者に手書きで送り状を記入してもらう
→スタッフが荷物を採寸
→ 宿泊者に送料を説明&支払い対応
→ フロントが荷物を預かり、運送業者へ集荷を依頼
課題として見えてきたのは:
・フロントでの説明負荷(特に外国人相手)
・手書きの文字が読みづらく配送トラブルのもとに
・書類控えの保管・管理・再発行もアナログで煩雑
そこで私たちは、以下のように業務フローとUIをセットで再設計しました。
・ゲストが入力途中で詰まっても、フロントが端末で代理対応しやすい設計
・UI内に業務導線を自然に誘導する文言やフローを組み込み
・集荷や支払いタイミングの違いによるパターン分岐を設計書に明記
また、「想定外のことが起きたときに、誰がどこまで対応するのか?」というリスク対応の整理も、PMチーム主導で事前に洗い出しました。
これにより、ホテルスタッフは業務ステップを1〜2手に集約。
チェックアウト時の混雑を緩和し、インバウンド対応のオペレーション負担も大幅軽減できました。

「外国語に翻訳すれば、多言語対応になるでしょ?」……そんな単純な話ではありませんでした。
・住所入力欄:日本は「郵便番号 → 都道府県 → 市区町村 → 丁目番地」
→ 欧米では逆順だったり、階数や部屋番号の扱いも国によって違う
・電話番号認証:SMS対応していても、国際番号+携帯キャリアの仕様で使えないケースが多発
・UI内の文言選定:「集荷」「着払い」「元払い」など、直訳では誤解を生む表現が多かった
1.現地メンバーとの協業
・社内外の英語・中国語・韓国語ネイティブメンバーがUXレビュー
・ ベトナム・台湾・欧州などの拠点スタッフとインタビューセッション
→ 「その言葉、現地だと誤解されるかも」「逆にこう言えば伝わる」など、“実際にその国で使う人”目線の気づきを反映。
2.言語ごとのUI最適化
・翻訳文の長さが違うことでレイアウト崩れが発生 → 言語別にUI調整
・フォーム構成そのものを国・言語ごとに分岐させてカスタマイズ
→ 例:英語版では住所ブロックの順序を逆にするなど、「文化仕様のUI」に仕立てた
3.FAQやエラーの表示内容も再設計
・日本語では当たり前の説明も、海外ユーザーには意味が通じない
→ よくある失敗例や、文化的な“つまずきポイント”を明文化して表示
とくに意識したのが、「業務プロセスの中にローカライズされたUIがどう溶け込むか」。
たとえば:
・日本語UIでは「郵便番号から住所を自動補完」できるが、英語版ではそれがむしろ混乱を招く
・日本では当たり前の「送り主情報の控え」も、海外ユーザーからは「なんで2回入力するの?」となる
・エラーが出た時に「再起動してください」では伝わらない
→ そもそも何がエラーか分からないし、再起動の文化も違う
つまり、業務フロー × 文化 × UIが“ひとつの体験”としてつながっていることが重要なんです。
今回のプロジェクトであらためて感じたのは、
“ただアナログをデジタルにする”だけでは、本当の意味での「使いやすさ」は作れないということ。
・ユーザーの文化や常識に合わせたUX
・現場オペレーションに寄り添ったフロー設計
・技術的な実装とのバランスをとったUI/開発
そのすべてを横断して設計・調整していくのが、我々のような“伴走型のチーム”の役割だと考えています。
今後、同じように
・既存サービスをデジタル化・アプリ化したい
・海外やインバウンドユーザーに対応したい
・業務の現場も含めて、使いやすい仕組みにしたい
という企業様にお伝えしたいのは、
「機能を作る」ことではなく、「業務を回す設計」が大事ですよということ。
そして、その設計は“一緒に作る”ことが何より大事です。
私たちは、企画から実装・改善まで、そして導入後の現場の“つまずき”まで、まるっと一緒に伴走します。
迷ったときは、ぜひ一度ご相談ください。