こんにちは、モンスターラボ EnterpriseDX部門の重水です。
今回は、建築設備・建材業界の現場で日々行われている「図面からの情報拾い出し業務」、いわゆる“図面読み取り”をテーマに、目視と手作業が中心の現場で何が起きているのか?
そしてそれをどう変えられるのか?という視点でお話ししたいと思います。
目次
建築設備・建材の現場では、日常的に図面との格闘が続きます。なかでも見積作業の初期段階では、「ダクトや配管の長さ」「空調機器や建材の型番・数量」といった情報を図面から拾い出し、部品表を作成する作業が欠かせません。
ところが多くの現場では今もなお、目視による確認と手作業でのカウント・転記が中心です。図面がPDFや紙で提供されることも多く、以下のような課題が生じています。
・拾い出しに時間がかかる
・人によるバラつきやミスが起きやすい
・拾い忘れや計算ミスが見積精度に直結する
また、営業担当者が正式な見積作成前に「スピード見積もり」を求められる場面も日常茶飯事です。
顧客からの急な概算依頼に即応できなければ、提案の機会を逸し、受注チャンスを逃すリスクも高まります。
ところが、概算見積りであっても、社内の技術者に確認する必要があり、提出までに何営業日もかかってしまう…そんな課題をよくお聞きします。
そんな実務における業務課題が図面読み取り業務のデジタル化ニーズを強く後押ししています。
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こうした課題に対処する鍵は、図面の中に埋もれている情報を「構造化データ」に変換し、業務全体をスムーズにすることです。
たとえば、PDFや画像形式の図面から必要な部品・寸法・注記などを抽出し、自動的に部品表を生成できれば、以下のような成果が得られます。
・拾い出し作業の時間短縮(数時間 → 数分)
・担当者間の作業精度のバラつき解消
・スピード見積もりへの対応力向上
・入力ミス防止と、見積精度の安定化
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近年では、図面から必要な情報をAIで読み取り、業務に沿って表示・整理する仕組みが実用化されています。
たとえば、AIがPDF図面や画像から部品名・型番・寸法などを自動抽出し、部品表の7~8割を生成することが可能です。
その結果をもとに、部品表と共に作成された簡易なチェックリストを活用して確認・補完する流れにすれば、精度とスピードを両立できます。
この仕組みは、経験の浅いスタッフや営業担当者でも扱いやすいように構成され、以下のような流れで動作します。
・図面をアップロード
・AIが必要な情報を自動抽出
・部品表、チェックリスト(サーチャブルPDF図面)の自動生成
・自動生成された部品表に対し、人が簡易なチェックリストで確認
・担当者が部品表の内容を補完し、完成度を高める
スキャンされた紙図面を扱う場合には、AI-OCRを用いて文字情報を読み取り、検索可能な「サーチャブルPDF」として図面を保存しておくことが有効です。
これにより、図面内の情報をあとから検索・確認しやすくなり、業務上の利便性が大きく向上します。
また、使用するAIは、業界固有の表記や略語にも対応可能で、Power Platformのようなツールでワークフローと連携すれば、現場の運用にも無理なく適応します。
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図面という業務上機密性の高いデータを外部AIに渡すことに抵抗感を持つ企業も多くあります。
そこで、実際の導入にあたっては、テスト段階ではダミーの図面データを用いて行い、本番では社内のセキュアな環境で処理できる環境を構築します。
たとえば、Microsoftのクラウド環境(Azure)を活用すれば、企業独自のセキュリティポリシーに準拠したAI環境の構築が可能です。アクセス制限やログ監査機能を備えた設計とすることで、社内ルールやISMSの基準にも適合させることができます。
また、Power Platformと連携することで、「誰がどの図面を処理し、どのように補完したか」といった履歴の可視化も実現でき、コンプライアンス面でも安心して導入できます。
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図面情報の自動抽出によって得られる効果は、単なる効率化にとどまりません。
将来的に実現可能な業務の姿(ToBe)は、以下のように描けます。
・新人・非専門人材でも即戦力となるワークフローの実現
・営業が自ら初期見積を作成できるスピード感ある組織
・チェックの重複を減らし、精度の高い部品表が素早く完成
・提案・見積の迅速化による商談スピードと受注率の向上
・熟練者のノウハウを形式知化し、組織に定着
・業務改善を自然に促す「変革し続ける現場文化」の醸成
まずは、“図面の読み取り”という日常業務の変革から始めてみませんか?
図面読み取り業務の効率化は単なる現場DXではありません。人・時間・知見という企業資源の使い方を抜本的に見直すきっかけとなり、企業の体質そのものに変化を促します。
・提案スピードの加速は“商談力”の強化へ
→ 選ばれる企業になるための「即応力」が磨かれ、提案型営業が常態化
・非属人化は“知の民主化”を促進
→ 熟練者依存から脱却し、誰でも使えるナレッジとプロセスを共有
・自動化・標準化は“人材再配置”と“付加価値業務への集中”を後押し
→ 単純作業の縮小により、企画・提案・改善といった創造的業務にリソースを集中
・現場発DXが“変革し続ける企業文化”を醸成
→ 現場から始まる小さな変革が、全社に波及しやすくなる素地を形成
これまで見落とされがちだった「図面を見る」という日常業務こそ、会社全体のデジタル対応力を底上げする重要な起点となります。
単なる効率化ではなく、企業の変化対応力・持続的成長力の源泉となる改革として、ぜひ取り組んでみてください。
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