呉井:「日本一の魚屋」になることを標榜し、鮮魚専門の大型直営店を関東および信越エリアに展開しています。ここで言う「日本一」とは必ずしも売上や店舗数を示すものではなく、とにかく活きのいい魚を安くお客さまにお届けして満足いただくことを目指しています。そのために「鮮度は良いか」「値段は良いか」「品揃えは良いか」「態度は良いか」という「4つの“良いか”」をモットーに、お客さまに一番だと認めていただける鮮魚店を目指しています。
呉井:はい。私も所属する商品調達本部という部署が魚の買い付けを担当しているのですが、バイヤーが毎朝豊洲と新潟の魚市場に出向き、そこで買い付けた魚をそのまま直営店舗に配送して販売しています。日本人の食生活の変化に伴い魚の消費量は年々減っていますが、そんな中でも弊社はこの独自の直販ルートを駆使して新鮮な魚を安く販売するビジネスモデルで、おかげ様で売り上げも順調に伸び続けています。
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呉井:「セリ原票」というのは、バイヤーが魚市場で買い付けた鮮魚の種類や産地、量といったさまざまな情報を記載する帳票です。魚の買い付け業務のフローは、まず店舗の担当者がバイヤーに仕入れてほしい魚の情報を明細書に記入して、本社に送ります。本社の担当者はこの内容を取りまとめて、バイヤーに対して「受注明細書」として手渡します。
バイヤーはこの受注明細書の内容をもとに魚を買い付けるのですが、市場の状況によっては必ずしも明細書の内容通りに買い付けるとは限りません。そこで実際に買い付けた内容をセリ原票に記入し、これを本社と店舗にその日のうちに送ります。これを受け取った本社の担当者は、業者からの請求内容とこのセリ原票の内容を突き合わせて、差異がないかどうかをチェックします。また店舗の担当者は、このセリ原票の内容から実際に店舗に配送される魚の種類や量を事前に確認し、販売戦略や売り場作りに活かしています。
呉井:もともとセリ原票は、魚市場の現場でバイヤーが紙の伝票に手書きで記入して、その後FAXで本社に送信していました。この買い付けとセリ原票の記入は弊社内でもバイヤーのみが行える業務なのですが、新型コロナウイルスの感染が流行した際にバイヤーの感染や濃厚接触のリスクが高まったことが大きなきっかけです。
弊社のビジネスモデルの軸は直販ですから、バイヤーが市場に買い付けに行けなくなれば自ずと店舗でお客さまに提供する商品もなくなってしまいます。そこでこうしたリスクを回避するために、デジタルの力を使ってリモートでも買い付け業務が行える体制を整えておく必要があると考えていました。
坂ノ下:買い付けを限られた短い時間の中で行わなければならない中、帳票に手書きで記入する作業はかなりの手間がかかり、かつ時間を圧迫するので、ときにバイヤーにとっては心理的なプレッシャーになっていました。また、毎日新たに伝票を発行していたので、年間6000枚もの膨大な量の紙帳票が作成されており、これらをペーパーレス化して経費を削減したいとの要望も以前から上がっていました。
椎名:手書きだとどうしても記載ミスが避けられませんしね。またセリ原票をFAXで受け取った本社の担当者もその内容をあらためて社内の基幹システムに手作業で入力していましたので、作業にもかなりの時間や手間が掛かっており、デジタル化によって効率化できないものかと考えていました。
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呉井:理由はさまざまあったのですが、特にアジャイル開発手法を提案いただいた点が大きかったですね。買い付け現場の業務は極めて複雑で、細かな要件や仕様を事前にすべて定義するのは到底無理だと思ったので、実際に現場で使いながら実務にマッチした形に継続的にシステムを改善していくアジャイル開発のやり方が、今回のプロジェクトにはマッチしていると考えました。
坂ノ下:買い付ける魚の種類ごとに、数で買うものや重さで買うもの、箱の単位で買い付けるものなど、買い方がそれぞれ異なります。そのあたりの細かな違いをあらかじめすべて洗い出すのは難しかったのですが、モンスターラボの河西さんに実際に買い付け現場に足を運んでいただいて、私たちバイヤーの要望を直接聞いてもらったおかげで、今ではかなり使いやすいアプリに仕上がっています。
河西:モンスターラボではこれまで小売業界の案件は多数手掛けてきたものの、鮮魚業界は初めてでノウハウがまったくなかったため、まずは市場での買い付け現場に足を運んで、皆さんが働く様子を直接見ながら一から業務を理解していきました。バイヤーの皆さんにしつこく付きまといながら、「これはどうなっているんですか?」「これは何をやっているんですか?」と事細かくヒアリングさせていただいたおかげで、キャッチアップすることができました。
また現場の皆さんはこれまで長年アナログのやり方を続けてこられたので、急にデジタルに切り替えるのはハードルが高いと考えました。そこで開発途中のプロトタイプ段階からバイヤーの皆さんに実際にアプリの画面に触れていただき、その都度さまざまなフィードバックをいただきました。こうして事前にデジタルのやり方にある程度慣れていただいたおかげで、本番導入はかなりスムーズに運んだと思います。
呉井:河西さんに初めてタブレットを渡されたときには、正直「こんなに難しそうなものを使いこなすのは、絶対に無理だ!」と思いました。でも少しずつ触っていくうちに徐々に慣れることができて、本番導入の頃にはすっかり違和感なく使いこなせるようになっていました。
椎名:以前とは比べ物にならないほど作業が効率化されたと感じています。以前は紙の伝票に一から情報を手書きで記入していたのが、今ではタブレットアプリ上で最低限の情報だけを入力すればよくなり、買い付け現場での作業効率が大幅に上がった実感があります。また手書きに起因する記入ミスもなくなったので、業務品質も確実に向上していますね。
坂ノ下:タブレットアプリに入力した内容はそのまま送信するだけで基幹システムに登録されますから、紙の伝票をFAXで送信する必要もなくなりましたし、本社でそれを受け取って基幹システムに打ち込む作業も不要になりました。そのおかげで本社の事務員の作業負荷もかなり軽減されましたし、セリ原票の内容が以前より早く店舗から参照可能になったので、店舗の担当者からもとても好評ですね。
", "show": true, "title": "アジャイル開発で現場の要望を都度アプリ仕様に反映" }, { "show": true, "title": "アプリを通じて蓄積されたデータを参照できるダッシュボードを開発", "content": "呉井:セリ原票アプリを開発したことで、担当バイヤーが買い付け現場に行けなくなっても、代わりのバイヤーを市場に派遣すれば、リモートでやりとりしながらアプリを使って買い付け業務を行えるようになりました。一方で、セリ原票アプリから基幹システムに登録したデータの内容は、本社オフィスのPCを使えば参照できたものの、タブレットからは見ることができませんでした。
坂ノ下:魚市場での買い付けや競りは早朝に行われますから、前日の夕方までに店舗からの受注明細を受け取って買い付けの準備をする必要があります。その際に過去の買い付けの履歴や売上、粗利などの情報を参照できれば、より精度の高い買い付けが可能になります。経験豊富なバイヤーなら、ある程度経験と勘で「どの魚をどれだけ買い付ければどれだけ粗利を確保できるか」を導き出すことができますが、全員がそれをできるとは限りません。
河西:そのような要望をお聞きしたので、「私たちでタブレットから過去実績を参照できる仕組みを作りましょうか?」と提案させていただきました。具体的には、バイヤーの皆さんが参照したいデータをあらかじめ基幹システムから抽出し、別途構築したデータマート上に保管した上で、その内容をタブレットのブラウザからダッシュボードとして参照できる仕組みを新たに開発しました。
呉井:この仕組みを作っていただいたおかげで、自宅や市場で過去の買い付け履歴をすぐ確認できるようになりました。過去の買い付け実績、たとえば仕入れ高や値入率などの期間指定実績値はもちろん、累計値までを一目で把握できるので、より売上や利益に貢献できる買い付けの判断が素早くできるようになりました。
椎名:これまで私は過去に作成したセリ原票をすべて紙で保管して、事あるごとに内容を見返していたのですが、その量がだんだん膨れ上がっており、管理に困っていました。でもこのダッシュボードの仕組みができたことで、いつどこにいてもタブレットから過去の履歴を呼び出すことができるようになり、紙の管理に困ることもなくなりました。
呉井:弊社の業務にはまだまだデジタルで効率化できる余地があるので、そうした領域を中心に今後も積極的にデジタル活用に取り組んでいきたいと考えています。直近では店舗からの発注業務をシステム化できないか、モンスターラボさんとともに検討したいと考えています。中長期的には、デジタルを使った先進的な取り組みで業界をリードできる存在になりたいですね。
河西:私自身、もともと一消費者として角上魚類さんの店舗には足繁く通っていたので、今回のプロジェクトに参画できたことは感慨深いですね。今後も角上魚類さんの事業成長に寄与できることであれば、あらゆることに挑戦していきたいと考えています。
関東・信越地方を中心に、鮮魚の大型小売店「角上魚類」を23店舗展開する角上魚類ホールディングス株式会社(以下、角上魚類)。豊洲と新潟の魚市場で大量に仕入れた鮮魚を、卸業者を介さずに大規模直営店で直販する独自のビジネスモデルを武器に、近年業績を伸ばし続けています。そんな同社の成長の秘訣の1つに、DXへの積極的な取り組みがあります。アナログな仕事の進め方が依然として浸透する鮮魚業界において、デジタル活用の先駆けとしてさまざまな業務にITを導入して業務効率化を図っています。
そうした同社の取り組みの1つに、魚市場における買い付け業務へのタブレットアプリ導入があります。業界内でも高い注目を集めるこのアプリは、モンスターラボの全面協力のもとに開発されました。同アプリの開発の経緯や成果、その後の各種アップデートなどについて、角上魚類で買い付け業務を担当する呉井宏之様、坂ノ下正樹様、椎名秀樹様、そしてモンスターラボのプロジェクト担当である河西健一に話を聞きました。
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◾︎ 角上魚類
呉井 宏之 様 / 坂ノ下 正樹 様 / 椎名 秀樹 様(角上魚類ホールディングス株式会社)
◾︎ モンスターラボ
河西 健一(プロジェクトマネージャー)
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モンスターラボは、不確定な仕様変更にも適宜対応しながら柔軟に開発を進めたことが評価され、現在もサービスのさらなる拡充に向けた支援を続けています。
これまで角上魚類では、東京・豊洲市場と新潟・中央卸売市場での買い付け業務にて手書きの受注明細やセリ原票を使用。しかし、事業拡大により発注・買い付けミスや誤配送、紙を使用することによる事務作業の負荷が課題になっていました。
アプリ開発でポイントになったのは、市場特有の買い付け業務のフローを崩さずに効率化すること。
また、既存の基幹システムとの連携が必須になるため、仕様変更や機能追加に強いアジャイル手法を用いた開発ができることや、属人化した業務への理解や高いアプリ開発の知見を持った伴走型のパートナーが求められていました。
モンスターラボは、業界理解を深めることと共に、客観的視点で改善ポイントを模索しました。
まず初めに各市場と本社を訪問し、現場観察によるバイヤーと配送担当者の業務フローの理解と、手書きの受注明細やセリ原票の分析から着手。
調査により、新潟と東京では買い付けのフローが異なることや、バイヤーが買い付けた魚を記録するセリ原票が手書き・手計算で作成されていることが判明。また、セリ原票は完成後本社にFAXで送付され、本社の担当者が基幹システムに手入力していることがわかりました。
また、配送ミスが発生した際に買い付けが行われた事実の確認を可能にするため、配送担当者が積荷を個人用携帯で撮影・管理していたことなど、全体業務フローと課題の可視化、改善ポイントの洗い出しを行いました。
そこでモンスターラボは、受注明細やセリ原票のフォーマットを踏襲した「システムに人が合わせるのではなく、人にシステムを合わせた」アプリ開発を提案。スピーディーな作業が要求される現場への負担を減らすため、アジャイル手法を取り入れました。また、現場担当者への導入負荷を最低限に抑えるUX/UIデザインを模索しました。
デザイン面では、受注明細とセリ原票のフォーマットをベースにフレームワークを作成。複雑な記入箇所を整頓することでアプリならではの表現を追加しました。
また、個人用携帯で撮影・管理していた画像はドライブ上で保管する仕組みや、アプリで入力されたデータが、そのまま基幹システムに反映される仕組みを取り入れました。
実際の現場で動作確認を中心に入念なテストを繰り返し、不具合やユーザビリティを損なう箇所を割り出しては改善を繰り返しました。
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