全国各地の水インフラ設備の設計や施工、管理などを幅広く手掛ける株式会社水機テクノス(以下、水機テクノス)では、ローコード/ノーコードの業務アプリ開発プラットフォームを用いた業務アプリケーションの内製開発にも積極的に取り組んでいます。一方、同プラットフォーム上で内製開発を行うことができる社内要員の不足にも悩まれており、今回この課題を解決するためにモンスターラボにお声がけいただき、既存アプリケーションの改修プロジェクトにともに取り組むことになりました。
このプロジェクトの背景や経緯、成果などについて、同社のIT施策を担うDX推進部の部長を務める遠山篤様と、同じくDX推進部で内製開発を担当されている菊田達朗様、そしてアプリケーションのユーザー部門であるFS管理部の部長を務める遠越一茂様と、今回のプロジェクトの実務を主に担われた長倉昴生様に、さらにモンスターラボ側のPMとして本プロジェクトに参画した林田智典とアカウント担当の若本岳志を加えた6名に振り返ってもらいました。
取材協力:
◾︎ 水機テクノス
遠越 一茂 様 / 遠山 篤 様 / 菊田 達朗 様 / 長倉 昴生 様
◾︎ モンスターラボ
若本 岳志 / 林田 智典
クレーム削減のために「クレーム処理アプリケーション」の改修に着手
まず水機テクノス様の事業概要について教えてください。
遠山:弊社は日本全国の上下水道や工業用水道、水処理施設など、社会を支える水道インフラ設備の設計・施工・メンテナンスなどを担う会社です。「100年先も人と地球をつなぐ情熱で、笑顔あふれる環境を技術と製品で創造し、社会に貢献します」という企業理念のもと、1962年の設立以来一貫して責任と情熱をもって重要な水インフラを支え続けてきました。
社会インフラを支える仕事だけに、顧客や社会から高い信頼を得ることが何よりも重要になってきますね。
遠越:その通りです。そのために今年度は、クレーム仕損を削減する取り組みに力を入れています。具体的にはお客さまから寄せられたクレームや、自社で発見した不具合などに迅速かつ適切に対応できるよう、クレーム情報を登録するアプリケーションを内製開発しました。現場担当者がこのアプリケーションにクレームを登録すると、社内の品質保証部門がクレームを分類・採番して、設計部門や工事部門など適切な部門に対応を依頼しています。
こうした一連のクレーム対応フローはきちんと回ってはいたのですが、対応が終わった後に再発防止策を検討するとなった際、せっかくアプリケーションに登録したクレーム情報を有効活用するための術がありませんでした。本来なら登録された情報をさまざまな角度から可視化・分析して振り返りを行ったり、過去の類似クレーム情報を素早く検索して活用したかったのですが、アプリケーションにそうした機能が実装されていないため、なかなか過去データを有効活用できていませんでした。
遠山:弊社はもともとMicrosoft 365を導入していたので、このクレーム処理アプリケーションもMicrosoft 365に含まれているローコード開発ツール「Power Apps」を使ってIT部門が内製開発しました。しかし当時はスピードを最優先に、アプリケーションの「本来あるべき姿」について十分議論する時間がなく、現場部門から依頼された内容をそのまま実装したため、まだまだ改善の余地は残されていると考えていました。そこで思い切って、アプリケーションの改修に踏み切ることにしました。
遠越:アプリケーションのリニューアルを機に、FS管理部でもISO9001に準拠するよう、クレーム対応の業務フロー設計も一から見直しを行いました。新たな業務フローに合わせてアプリケーションを改修することで、大幅な業務改善を目指していました。
アプリケーション改修作業をモンスターラボに依頼
今回このクレーム処理アプリケーションの改修作業をモンスターラボで支援させていただきましたが、当初は御社内で内製することも検討されていたのでしょうか?
遠山:本来は内製開発できる人材が潤沢にいればいいのですが、現時点では菊田しかおらず、どうしても人的リソースに限りがありました。そこで今回の改修プロジェクトでは、リソース不足の問題を克服する手立ての1つとして、本来内製すべきアプリケーションの開発を実験的に外部に依頼してみることにしました。
菊田:Power Appsを使った業務アプリケーションの内製開発は、現在は事実上私が1人で行っているのですが、情報システム部門のメンバーとしての本業を行いながら、その側で件のクレーム処理アプリ以外にも年間約20〜30のアプリケーションを開発しているため、どうしても今回の改修作業に関しては時間を確保できそうにありませんでした。
長倉:遠越が新たに設計したクレーム処理フローを基に、私の方で現行アプリケーションの改修プランを立ててみたのですが、内容が多岐に渡っていたためプロジェクト難易度の側面からも外部パートナーの支援を仰ぐ必要があると判断しました。
数ある開発パートナー企業の中から、今回モンスターラボを選んでいただいた理由はどのあたりにあったのでしょうか?
長倉:もともとモンスターラボさんには、親会社も含めたグループ全体としてさまざまな案件のご相談をしたり、逆にご提案をいただいておりました。そういった経緯もあり、今回のクレーム処理アプリケーションの改修に関しても真っ先にご相談させていただきました。
若本:これまでさまざまなプロジェクトのお声がけをいただいていた経緯もあり、今回のクレーム処理アプリケーションの件についても「ぜひ協力させていただければ」と二つ返事で手を挙げました。
長倉:モンスターラボさんにお声がけしたのが2024年末ごろのことだったのですが、可能であれば翌年3月末までにはアプリケーションをリリースしたいと考えていました。予算も決して潤沢ではなかったのですが、モンスターラボさんなら限られた期間と予算の中でも柔軟に対応いただけるのではないかと考えて、最終的にお願いすることに決めました。
クレーム処理アプリケーションの機能や利便性が大幅に向上
モンスターラボ側では、今回のプロジェクトの体制をどのように立ち上げたのでしょうか?
林田:ローコード開発のスピード感を最大限に引き出すためには、やはり上流から下流までを1人でこなせるエンジニアの存在が不可欠ですから、私も含め、上流の業務定義から下流の実装・テストまで、すべての工程を1人でこなせる要員を2名アサインしました。もちろん両名とも、Power Appsを使ったローコード開発の経験もありました。
若本:2025年の年明け早々からプロジェクトを立ち上げたのですが、水機テクノス様と実プロジェクトでご一緒させていただくのは今回が初めてだったので、当初はモンスターラボ側では業務知識をまったく持ち合わせていませんでした。そこで短期間のうちに一気に業務知識を吸収する必要があったのですが、幸いなことに長倉様がアプリケーションや業務の仕様についてとても分かりやすく資料にまとめていただいていたおかげで、極めて短期間のうちにキャッチアップできました。
具体的にはどのようなプロセスでプロジェクトを進めていったのでしょうか?
林田:長倉様をはじめとする水機テクノス様側のメンバーの方々と定期的に定例会を開催しながら、実際に作成したプロトタイプをその場で実際に見ていただき、それに対するフィードバックをいただき、さらにその内容を反映させたものをまた次の定例会で見ていただいてフィードバックをいただくというサイクルを回しながら開発を進めていきました。
長倉:当初は現行アプリケーションの細かな調整で対応できると考えていたのですが、モンスターラボさんに弊社の要望をいろいろと聞いていただいたり、弊社のITガバナンス上の制約事項に対応していただいた結果、最終的に出来上がったものはほぼ別物と言えるほど、大規模な改修になってしまいました。この点については、モンスターラボさんには多大なご負担を掛けてしまったのですが、柔軟に対応していただき大変助かりました。
林田:本音を言えば、もう少し時間があればさらにいろんなことができたと思いますが、時間とコストが限られている中でも長倉様をはじめ水機テクノス様の方々に最大限協力していただき、チームワークで何とか乗り切ることができました。
こうして実際にクレーム処理アプリケーションを改修した結果、現在どのような効果を感じていますか?
長倉:旧アプリケーションはUIの見た目や操作性にも課題があったのですが、今回の改修では新たにPower Appsの「モダンコントロール」を採用したことで、UI/UXが大幅に向上したことを実感できています。
菊田:モダンコントロールでは、旧来の「クラシックコントロール」でできていたことの一部が実現できないという制約があったのですが、今回の改修ではその部分のみをクラシックコントロールで実装し、見た目はモダンコントロールの洗練されたUIながら、クラシックコントロールで実現できていた機能もそのまま再現するという、かなり凝った実装をしていただきました。これは、高度な技術とノウハウを持つモンスターラボさんだからこそ実現できたのではないかと考えています。
若本:UIの仕様についても、当初はさまざまな要望をいただいたのですが、そのすべてを実装してしまうと造りが複雑になってしまい、保守コストが高くなってしまうことが危惧されました。そこで今回は、後々の保守性も考慮して弊社が提案したシンプルなUIを採用していただきました。
長倉:当初の最大の課題であった「データの可視化」についても、時間とコストの制約上今回はBIツールのような重いソリューションは実装できなかったのですが、データをCSVファイルで出力する機能を実装していただき、それをExcelで読み込んで可視化する仕組みを実現できました。将来的にはこの仕組みをさらに発展させて、ゆくゆくは本格的なダッシュボード機能を実現できればと考えています。
菊田:また今回はPower Appsだけでなく、Power Automateを使ったワークフローの実装も行っていただいたのですが、モンスターラボさんには限られた時間の中で約10個ものフローを実装していただき、この点についても大いに助かりました。
今後は本社業務だけでなく「現場のDX」も推し進めていく
今回のクレーム処理アプリケーション以外にも、さまざまな分野でデジタル技術の活用を推進しているそうですね。
遠山:現在社内のさまざまな部署を対象に、業務課題のヒアリングを実施しています。そのすべてがDXで解決できるとは限らないのですが、DXで解決する場合も取り得る手段としては「既成の製品・サービスの導入」「システムの内製開発」「システム開発を外注」と複数の選択肢があります。今回のクレーム処理アプリケーションの改修に関しては、内製と外注のハイブリッドのような形でモンスターラボさんにご支援いただきましたが、今後は内製と外注を適材適所で使い分けていきたいと考えており、完全外注の案件についても機会があればぜひモンスターラボさんにお願いできればと考えています。
若本:システムを内製開発するためには、社内で開発リソースを常時確保しておかなくてはならないため、どうしても定常的にコストが掛かります。その負担を減らすための調整弁としても、弊社のようなパートナーをご利用いただく価値は高いかと思います。また弊社にはアジャイル開発や生成AIなどの分野で、お客さまのDXを強力に支援してきた実績もありますので、ぜひ気軽にご相談いただければと思います。
林田:そういう意味では、今回のクレーム処理アプリケーションのプロジェクトでは、水機テクノス様が今後内製と外注を使い分ける際の指針や戦略を検討するための材料が数多く得られたと思いますし、実際にそれらを実行に移すための素地もある程度出来上がったのではないかと考えています。
水機テクノス様としては、今後モンスターラボにどのようなことを期待されていますか?
遠山:今回のクレーム処理アプリケーションのプロジェクトは、本社部門の業務を変革するためのDX施策の1つと位置付けていましたが、弊社はもともと水インフラ設備の設計や施工、管理などを主業としていますから、今後はそうした「インフラ現場のDX」にも力を入れていきたいと考えています。
例えば、点検作業などにIoTや画像認識などの先進技術を導入することで現場業務もDXで変革していけると考えており、現在そのための具体的な方策を模索しているところです。今後はこうした分野においても、モンスターラボさんにぜひご支援いただければ幸いです
若本:「現場のDX」はまさに弊社が得意とする分野で、弊社のエンジニアやデータサイエンティストが実際にお客さまの現場に泥臭く入っていって、要件を吸い上げながらデータの見える化や分析のソリューションを実現した事例が数多くあります。画像認識などの技術についてもエキスパートが多数いますので、ぜひ今後はそうした分野でもお手伝いさせていただければと思います。