齊藤:はい。正式開業前のプレオープン期間中にメンバー全員で現地を訪れて、実際にテーマパーク内を歩き回りながらアプリの仕様を詰めていきました。実際に現地に行ってみないと分からないことも多くて、例えばパーク内でアトラクションを探す際には、個々のアトラクションを示すロゴマークが目印になっていることが分かりました。そこでアプリのマップにも同じロゴを表示させた方が、ユーザーもアトラクションの場所を探しやすいのではないかと考えて、比嘉さんにその旨を提案してアプリのデザインに反映することになりました。
沖縄北部の「やんばるの森」の地において、2025年7月にオープンした大規模テーマパーク「JUNGLIA OKINAWA(以下、ジャングリア沖縄)」。運営元である株式会社ジャパンエンターテイメントでは、来場者の体験をより高めるべく開業前から公式アプリの開発を計画。モンスターラボはその開発パートナーとして選定されました。
その後両社が二人三脚で開発を進めてきた公式アプリは、ジャングリア沖縄の魅力を高める上で極めて大きな役割を果たしてきたといいます。その経緯や成果、チームビルディングのストーリーなどについて、ジャパンエンターテイメント IT Director 比嘉倫士氏に、モンスターラボ側からプロジェクトに参画したプロジェクトマネージャーの渡辺遼平、デザイナーの齊藤由紗、エンジニアのDan Lacunaを加えた4人に振り返ってもらいました。
取材協力:
・株式会社ジャパンエンターテイメント
比嘉 倫士 様
・モンスターラボ
渡辺 遼平 / 齊藤 由紗 / Dan Lacuna
レジャー施設案件やオフショア開発の実績が豊富なモンスターラボをパートナーに選定
まずはジャングリア沖縄について簡単に紹介していただけますでしょうか。
比嘉:ジャングリア沖縄は「Power Vacance!!(パワーバカンス)」というコンセプトのもと、沖縄本島北部に広がるやんばるの森で2025年7月にオープンした大自然没入型のテーマパークです。Power Vacance!!のコンセプトには、都会の喧騒や日常の忙しさから離れ、ここでの体験を通じて沖縄の旅を最高のものにしていただきたいという私たちの情熱が込められています。
また単に新しいテーマパークを作るだけでなく、その根底には「沖縄から日本の”未来”をつくる」という志があります。沖縄はもともと、世界に誇れる素晴らしい大自然や文化のポテンシャルを秘めています。しかし、その魅力が十分に届ききっていなかったり、地域に利益が残りづらかったりという課題もありました。そこで、沖縄が持つ素晴らしい価値を「最高の体験」に変え、訪れる旅行者の方も、沖縄で暮らす地域の方も、全員が豊かになれる持続可能な仕組みを作ろうと、ジャングリア沖縄の構想が立ち上がりました。
この「ジャングリア沖縄」の公式アプリの開発を、モンスターラボが担当したのですね。
比嘉:実は以前勤めていた会社で、ITエンジニアとしてベトナムに駐在していたことがあったのですが、その頃から海外のエンジニアリソースを使ったスピーディーな開発のメリットを実感していました。今回の公式アプリ開発においても、同じく海外リソースを使ってスピード感のある開発を行いたいと考え、ベトナムのオフショア開発の実績が豊富なモンスターラボさんにお声がけしました。
渡辺:モンスターラボではこれまでも、国内外のレジャー施設やエンターテインメント施設のアプリ開発の実績がありましたし、自社のベトナム拠点におけるアプリ開発の実績も豊富に持っていましたから、ご要望に十分に応えられると考えていました。
比嘉:開発パートナーの選定に当たっては、正式にRFPを作って複数の会社に提案を依頼したのですが、その中でもやはりモンスターラボさんの提案内容や体制、実績などが私たちのニーズに最も合致すると判断し、最終的にモンスターラボさんと公式アプリ開発を進めることになりました。
デザイナーもスクラムチームに加わることでスピード感のある開発を実現
アプリ開発プロジェクトは、どのように進められたのでしょうか?
比嘉:プロジェクトが立ち上がったのが、2025年1月のことでした。ジャングリア沖縄の正式オープン日はそれから約半年後の2025年7月25日だったのですが、それに先駆けて7月上旬からプレオープン期間を設けていましたので、それまでに一通りの機能を実装できるよう開発を進めていきました。
渡辺:既に他のベンダーさんがアプリの簡単なデザインモックを制作していたので、まずはそれを基に機能を実装していきました。中にはまだ仕様が決まっていない部分もあったのですが、そこに関しては並行して仕様検討を適宜進めていきました。
Dan:フロントエンドの開発と並行して、バックエンドでユーザーがアプリのUI/UXを直接更新できるCMSの仕組みも開発するなど、プロジェクトの立ち上げ当初から迅速に開発を推進しました。この部分に関しては、比嘉さんにあらかじめ機能要求を一通り洗い出していただいていたので、比較的スムーズに作業を進めることができましたね。
デザイナーはどのように参画していったのですか?
齊藤:プロジェクトが立ち上がって2、3カ月後に、私がデザイナーとして新たにプロジェクトに加わることになりました。当初は主にUIのデザインを担当する予定だったのですが、実際には比嘉さんと相談しながらUXの部分についてもさまざまな提案を行っていました。
渡辺:スピード感をもって開発を進めるために、アジャイル開発手法の1つである「スクラム」のメソッドに則ってプロジェクトを運営していたのですが、やはりエンジニアだけでなくデザイナーもモンスターラボからアサインしてチームに加えた方が、スクラムチームの一体感が生まれてよりスピーディーな開発が可能になると考え、齊藤の加入を比嘉さんに提案しました。
比嘉:確かに齊藤さんに入っていただいてから、より一層プロジェクトのスピード感が増しましたね。アプリの仕様や機能が固まってきた時点で、デザインもそれに合わせて素早くアップデートをかけることができるようになったので、まさに狙い通りでしたね。
渡辺:ベトナム拠点のチームも3月には立ち上がって、スピード感のある開発が可能になったと思っています。スクラムの開発期間の単位である「スプリント」も、一般的には2週間で区切ることが多いのですが、このプロジェクトではスケジュールがタイトなこともあって、立ち上げからしばらくの間は1週間で区切っていました。ただ、チームの一体感とメンバーのモチベーションの高さのおかげで、開業日までに一通りの機能を実装することができました。
「発注側と受託側」「日本とベトナム」の垣根を超えた一体感
このプロジェクトではAIも積極的に活用したと伺っています。
Dan:プロジェクト全体の進め方としては、まず渡辺や齊藤がお客様から要件をヒアリングして、その内容を基に私がAIと壁打ちしながら技術面の検討を行い、具体的な実装方針を日本拠点やベトナム拠点のエンジニアに伝えていました。ドキュメントを作成する際には、日本人担当者向けの日本語版とベトナム拠点向けのベトナム語版、さらには両国共通で使う英語版という3カ国語版を用意したのですが、これもAIを使うことで効率的に作成できました。さらにはプログラムの実装作業においても、DevinやGitHub Copilot、Claude Codeといった各種AI駆動開発ツールを駆使して、より高速に開発作業を進められるようにしました。
渡辺:2025年の早い段階からすでにこれらのAI駆動開発ツールを導入してましたから、業界でも早い段階で本格運用していたのではないかと思います。
Dan:そうですね。もともとは日本拠点のみでの活用でしたが、その後私がベトナムに出張した際に、ベトナム拠点のエンジニアを対象にAI駆動開発に関するワークショップを開催したところ、あっという間に現場での利用が広がりましたね。
比嘉:私もちょうど同じタイミングでベトナムに出張して、Danさんのワークショップに参加したのですが、個人的にも非常に勉強になりました。実を言うと私自身はAI駆動開発について、当初はセキュリティや品質の面で不安が拭いきれなかったのですが、勉強会に参加し、その後モンスターラボさん側からあがってくるコードをチェックしても問題がないことが理解できたので、きちんとチェック体制やガバナンスが機能していることが分かり安心しました。
ベトナム拠点のメンバーも、ジャングリア沖縄までご招待いただいたと聞きました。
渡辺:はい。比嘉さんをはじめとするジャパンエンターテイメントの担当者の方々にベトナムに出張していただいた際、ジャングリア沖縄の紹介や公式アプリの位置付けなどについて、ベトナム拠点のメンバーを対象に説明会を開いていただきました。これがきっかけで、ベトナムチームのメンバーのモチベーションが数段上がりましたね。それ以来、彼らは事あるごとに「実際にジャングリア沖縄を訪れてみたい!」と話していたのですが、ついにその夢を叶えていただき、総勢20名ほどのメンバーをご招待いただきました。
比嘉:私たちはテーマパーク運営だけではなく、沖縄北部の観光振興というミッションも担っていますので、皆さんには今帰仁城跡や古宇利島など他の観光スポットにも案内させていただきました。その際にはベトナム拠点の方々からさまざまな感想が寄せられたのですが、それらは外国人観光客の方々の貴重な生の声としてインバウンド施策にフィードバックさせていただいています。
渡辺:ベトナム拠点のメンバーは本当に喜んでいました。訪問以降、より一層各自がプロジェクトを自分ごと化することができ、アプリ開発の面においてもとても良い知見を積むことができていると考えています。この訪問をきっかけに、発注側と受託側といった壁を完全に取り払うことができ、まさに全員が「ワンチーム」になれたと思っています。
パーク運営の改善や新施策投入に合わせてアプリを迅速にアップデート
モンスターラボの日本拠点のメンバーは、開業前にもジャングリア沖縄を訪問していましたよね。
そのような細かな改善は、開業後も継続的に実施してきたのでしょうか?
渡辺:開業してもうすぐ1周年を迎えるのですが、現場のオペレーションを絶えず改善してきたこともあり、それらの内容をその都度アプリの仕様に反映させていきました。特に開業してから半年の間は、1週間スプリントでほぼ毎週のようにアップデートを繰り返してきました。
比嘉:開業直後のパークでは様々な課題も見えてきましたから、それらの一つ一つに誠心誠意向き合い、現場のオペレーションを改善するとともにアプリもアップデートを積み重ねてきました。これらの迅速な対応は、アジャイル開発が得意なモンスターラボさんだったからこそ成し遂げられたと思っています。
渡辺:アプリ自体にも開業して初めて見えてきた課題が様々あり、特にゲストの皆様の操作方法や反応速度についてのお声は継続的にいただいている部分ですので、ゲスト体験全体を良くするという視点で私たちからも積極的に改善提案を行い、改修を重ねてきました。
比嘉:そうですね、まさにそうした細かなお声への対応も含めて、開業から今に至るまで本当に地道な改善の積み重ねだったと感じています。ゲストの年代や状況によって操作の感じ方も様々で、簡単に「これで完成」とはならない部分ですので、これからも都度向き合っていく必要がある部分だと感じています。
渡辺:加えて、もともとの要件としても天候などの影響でパークの運営状況に応じて臨機応変な対応が求められると伺っていましたので、アプリ側でも更新のしやすさを担保するためCMSを通じて現場の担当者の方々が直接アプリのUI/UXを更新できるアーキテクチャを設計・構築しました。この点も迅速な体験向上を実現したポイントでしたね。
比嘉:おっしゃる通り、CMSはゲスト体験の改善にも大いに役立っています。例えば暑さ対策のための新たなスポットを設けたり、新しいアトラクションを導入したりする際などにもいちいちアプリ全体を改修することなく現場のスタッフがCMSに情報を入力するだけで簡単にアプリ上の情報を更新可能です。
Dan:アトラクションの整理券の抽選機能も、体験改善にかなり貢献していると伺いました。
比嘉:そうですね。当初は「ジャングル エクストリームズ」アトラクションの整理券を紙で配布していたのですが、この方式だとどうしても配布時間にゲストが集中してしまい、他の体験の待ち時間にも大きな影響がでてしまいました。そこでアプリに「整理券の抽選」を一日に複数回実施する機能を実装し、整理券自体をデジタルに移行したところ、ピーク来場時間の分散を図ることができ、オペレーション方法の改善と合わせ、アトラクションの待ち時間が数分の1に短縮するなど、ゲスト体験の向上に大きく寄与することができました。
そのような継続的な改善を、今後ジャングリア沖縄を訪れる方々の体験にどのようにつなげていきたいとお考えですか?
比嘉:1年間のアプリ運用を通じて、ゲストに関するさまざまなデータが集まってきていますから、今後はそれらを活用してアプリの改善につなげていくことはもちろんのこと、テーマパーク全体の運営の改善にもどんどん活用していきたいですね。
渡辺:モンスターラボでは既に、顧客データを活用してパーソナライズされた体験を提供する仕組みを企画・開発してきた実績が豊富にありますので、そうした知見を生かしながら今後もチーム一体となりジャングリア沖縄のゲスト体験をともに高めていければと考えています。
比嘉:個人的には、ITやデジタルならではの強みを生かしたゲスト体験を創出したいなという思いがあります。例えば、今のアプリはもっぱらパーク内で利用されることを前提としていますが、来場前や来場後にもアプリを通じて特別な体験を提供できるような仕組みが実現できるといいなと考えています。こうした構想を具現化する上でも、ぜひモンスターラボさんにはこれまで通り価値の高い提案を期待したいと思います。
ありがとうございました。
パーク画像提供:ジャパンエンターテイメント