故障診断アプリ『Kubota Diagnostics』
クボタは、世界各地のユーザーニーズに対応した建機・農機などの製品を用いてトータルソリューションを提供するグローバル企業。
モンスター・ラボグループでは、同社が販売代理店のサービスエンジニア向けに提供する3Dモデル・ARを活用した故障診断アプリ「Kubota Diagnostics(クボタ ダイアグノスティックス)」開発プロジェクトに要件定義から参画。UIデザインから設計、プロダクト開発を担当しました。
課題
グローバルに製品を展開するクボタは、海外にも多数の販売子会社を設立しています。しかし、建機の修理対応の多くは現地販売代理店のサービスエンジニアの手で行われており、担当者の経験・スキルによってはマニュアルだけではサポートが不十分なケースも発生していました。
ダウンタイムによる建機の稼働率低下は、ユーザーの収益減少に直結する問題。そのため、迅速かつ効率的で誰にでもわかりやすく、サービスエンジニアの能力に左右されない故障診断サポートが求められていました。
また、米国での故障診断のニーズが最も高かったことから、運用開始と効果検証のスコープを米国市場に設定。その後のグローバル展開も視野に入れていたため、グローバル市場における知見を持つプロダクト開発のパートナーが求められていました。
ソリューション
従来の故障修理では、建機のマニュアルに記載された膨大な情報から該当する箇所を探し出す必要があり、必要な情報を探すだけでも多くの時間を要していました。時間効率を改善するための解決策として、機械が発するエラーコードや不具合症状を入力することで自動的に点検箇所や修理方法が表示されるシンプルな故障診断フローを構築。サービスエンジニアの知識・経験に頼ることなく、故障箇所を迅速に割り出すことを可能にしました。
また、3DモデルとARを組み合わせ、スマートフォンをかざすことで建機内部の故障箇所や対象部品の特定をビジュアルで認識できる機能を搭載。建機の内部を実際に確認する手間を省くことで、効率的な修理が行えるようにしました。
また、UIデザインや設計においては、グローバルなプロジェクトの実績を豊富に持つネイティブのデザイナーをモンスターラボ グループのA.C.O.からアサイン。米国ユーザー向けのトレンドを取り入れたり、日本語のマニュアルを英語圏向けに再構築することで、現地ユーザーが使いやすいタッチポイントを意識しました。同時に、クボタ現地法人スタッフとのコミュニケーションにおける橋渡し役という面でも寄与しました。
ユーザータッチポイントでは、可読性の高いサイズの大きなフォントの使用、片手でもタップしやすい大きめのボタンの採用、素早く内容を理解できるピクトグラムの使用など、建設現場での使用を意識したUIデザインを取り入れました。
開発面では、拡張性を鑑みて、マルチデバイスへの対応が可能なFlutterを採用。独自のCMSを構築し、ログとユーザーからのフィードバックを蓄積させることで、今後の診断フローの整備や故障余地につながるさまざまな情報を収集できるようにしました。
結果
リリースに先駆けて本アプリの発表が行われた海外販売代理店向けのMTGでは、操作性に優れたUIデザインとともに、3Dモデル・ARを活用してビジュアルで故障診断ができる仕組みに大きな注目が集まりました。また、サービスエンジニアの教育や人員の確保といった面でも今後の貢献が期待されています。
今後、本アプリは日本を含む世界各地の市場に順次展開していくことが予定されており、同時に本アプリをベースにした対象機器の拡充も視野に入れられています。
モンスター・ラボでは、さらなる故障診断フローの精度向上や機能拡充を目指し、今後も世界各地へのローカライズ支援を継続していきます。