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2017/02/27
新規事業の企画立案と評価ポイント ~人間中心設計を参考にして~

斬新なアイディアで、素晴らしいサービスやオペレーション力を持ったベンチャー企業が注目を浴びる中、日本国内企業の5社中1社が新規事業開発に取り組んでいると言われています。ビジネスコンテストや新規事業提案制度などの公募で社員からアイディアを広く募るケースもあれば、特命プロジェクト的にチームが立ち上がる場合があります。メンバーは新規事業を成功させられるアイディア、企画は無いか考えをめぐらせますが、実際は「良いアイディアがなかなか湧かない」もしくは「アイディアは出るものの、そのサービスの市場、ニーズがあるか評価できない」といった悩みを抱えている方が多いようです。今回はこうした課題を解決できるよう人間中心設計(HCD)を参考にしながら、新規事業の企画立案と評価方法についてご紹介したいと思います。

|新規事業がうまくいかない理由

突然ですが、、、私がプロデューサー時代にお客様との打ち合わせでこんなお話をいただきました。

「語学学習アプリを作りたいんです、こんなアプリにしたいと思っています。販売先はチャネルがあるのでそのチャネルに販売したいと思っています。ユーザーは学習レベルC層を想定しています。・・・」

私の第一印象はしっかり固まってる企画だな、です。企画はもちろん販売・マネタイズの方針まで決まっていました。
ただ、話を伺っているうちに本当に使われるのか?ユーザーはこれを受け入れてくれるのか?など色々疑問が湧いて出てきました。そのきっかけは「参考書や即習系の教材やオンライン英会話との違いは何ですか?」に対する回答の具体性があまりにも欠けていたからです。
質問を続けると「もともと持っているチャネルを活かす、そこに営業をかける」ということだけが先走っていることがわかりました。販売チャネルを活用したビジネスを始めるということに取って付けて「学習レベルC層はどの会社にもいるし、勉強も必要(だろうと思われる)だろう。だからアプリ作ったら使ってくれるでしょ」という考えから新規事業プロジェクトが立ち上がったそうです。このままの企画をブラッシュアップせず開発したら、このアプリは本当に使ってくれるのでしょうか?

今回の事例では問題点が2つあると考えます。1つが他にある教材や英会話プログラムと差別化できていない、もう1つはそもそもユーザーが本質的にそのアプリを望んでいるのか把握できていないということです。アプリが使われるかどうかは結局のところ公開しないとわかりません。ただ、制作に取り掛かる前に利用者が本当にいるのか?どうしたら作ってくれるのかなどを事前に調査する必要があります。

|ユーザーニーズを調査・分析する”人間中心設計”とは?

人間中心設計(Human Centered Design, HCD)とは、製品やサービスをデザインする場合に使用する人間(ユーザー)を中心に置きアプローチする方法論です。
これは、顕在化している問題を解決していく従来の問題解決型の方法ではなく、利用者が本質的に望んでいるユーザーエクスペリエンス(User Experience, UX)を提供するために開発されました。
同質の製品やサービスが世に溢れており、ユーザーは新しい体験、素晴らしい経験を求めています。それゆえ、プランナー、ディレクターなどの企画者、新規事業担当者は、こうした人々の本質的な要求は何であるかを探り、それに応える価値を提案し続けていく必要があります。

|人間中心設計と企画立案プロセス

人間中心設計は、1. 問題の把握 2. 要求の明確化 3. 解決策の作成 4. 要求事項に照らした解決策の評価という4つのプロセスを経ていきます。

では、順を追ってどのようにプロセスを実践するのか説明していきます。

■ 問題の把握

最初に対象サービスに関する情報収集と評価を行い、問題点を抽出、理解します。
問題を洗い出す手法として下記(一部)が挙げられます。
―――[手法例]―――
・アンケート
・ユーザーインタビュー
・UXタイムライン
――――――――――――――

今回では調査会社を利用して20歳~40歳までの海外赴任の可能性がある企業勤めている社会人を対象にアンケート調査を行うとします。下記のような質問項目が想定されます。
―――[項目例]―――
・個人情報の取得(学卒、年齢など)
・英語スキル(留学経験の有無、TOEICの点数や英検などの資格取得有無など)
(スキルが低い人向けに)
・英語を使えないことでの問題
・使用頻度
・英語の学習状況
・利用ツール(参考書、スクール、またはアプリか?、具体的にどこかなど)
(学習している人向けに)
・学習する上での問題
――――――――――――――

■ 要求の明確化

この段階では問題を理解した上でユーザー要求を明確にし、サービスの方向性・コンセプトを策定します。方向性を策定する手法は以下です。
―――[手法例]―――
・シナリオベースドデザイン
・ユーザーストーリーマッピング
・ユースケース
・ペルソナ化
――――――――――――――

20歳~40歳までの海外赴任の可能性がある企業勤めている社会人から、27歳、留学経験無し、来年から海外に赴任予定、文法やライティングのスキルはあるがヒアリングやスピーキングのスキルが低いことが悩み、学習はオンライン英会話を利用中、オンライン英会話は予約が埋まっていて自分が望む時間に授業が取れていない、のようにより明確な人物像(ペルソナ)を作ります。

ペルソナをいくつ作ればよいですか?といった質問をいただくことがありますが、あればあるだけ良いと思います。
(いつかの事例で100以上のペルソナを作ったという事例を見たことがあります)

ぺルソナがどのような流れでサービスを利用するのか明確にするため、ユーザージャーニーマップなどを作成します。このアプリをどのように発見するか、発見した後にユーザーがどのようにこのアプリを利用するのかというストーリーを明確にします。

ペルソナから得られたインサイトを整理すると、ユーザー要求は「来年から海外赴任するので英語スキルを上げたい」で、課題は「ヒアリングとスピーキング力を上げられるか」です。「仕事やプライベートと英会話のスキルアップの両立が出来ずにストレスがたまっている」というインサイトが得られました。

■ 解決策の作成

見えてきた要求(ユーザーニーズ)と方向性(ストーリー)に合わせて、問題解決するためのアイディア(機能、インターフェース)を発想します。アイディアの表現方法としては下記があります。
―――[手法例]―――
・ペーパープロトタイピング
・スケッチ
・モックアップ
――――――――――――――

制作段階ではあまり時間をかけず、ラフなスケッチや簡易プロトタイプが使われます。というのも、提案する解決策の精度を高めていくためにアイディアの発想と評価のサイクルを素早く回すことが重要だからです。

ユーザー要求の「来年から海外赴任するので英語スキルを上げたい」ということであれば、英会話教室でも、先生と生徒のマッチングサービスで解決しても良いと思います。ただ今回は「仕事やプライベートと英会話のスキルアップの両立が出来ずにストレスがたまっている」や「ヒアリングとスピーキング力を上げられるか」などのインサイトがありますのでその軸をベースに検討していきます。
今回は“英会話、AI子!”というサービスを立ち上げるのはどうでしょうか。MicrosoftのりんなやAppleのSiriのようなイメージを持って頂ければ近しいですが、AI(人工知能)であるあい子と会話(発話、リスニング、読み書き)しながら英語学習を進めていけるサービスです。

アンケート調査を通して、ペルソナと問題の解決策の作成が終わりました。皆さんだったらどのようなサービス・機能で想定ユーザーが持つ問題を解決しますか。ワイヤーを書いたり、実際にプロトタイプやMVPなどの解決策を作ったら次はその評価フェーズになります。

■評価

このフェーズでは「3. 解決策の作成」で提案したアイディアを「2. 要求の明確化」で定義したユーザーの要求に照らして評価を行います。評価の方法例は下記(一部)があります。
―――[手法例]―――
・チェックリスト
・ユーザビリティテスト
・ヒューリスティック評価
――――――――――――――

アイディアごとに比較をしたり、サービス自体の全体設計評価、機能・画面ごとでユーザーゴールを達成出来るか評価していきましょう。今回はユーザーニーズのマッチ度と競合優位性を確認するためにチェック項目を軸に比較表を作成して検討していきたいと思います。

ここでは◎×△と文章、そして絶対評価で行いましたが、絶対評価、相対評価でも、点数評価でも問題ないと思います。

|新規事業と企画立案

ここまで人間中心設計の考え方をもとに新規事業の企画立案方法を紹介しました。人間中心設計の文献や事例を見ると、新規事業の企画立案より既存事業の改善・改修シーンで使われている印象があります。おそらくですが「ユーザー中心に考えられていないサービスや製品を利用者中心に変えていきましょう」という考えが人間中心設計の根幹にあるかだと思われます。もちろんご説明した通り人間中心設計であるプロセスを新規事業立ち上げでも応用出来ます。繰り返しですが、ユーザー観察、インタビュー ⇒ ペルソナ設定 ⇒ 行動のストーリー化 ⇒ 検証用のプロトタイプ作成 ⇒ サービス評価 ⇒ インタビュー ⇒ 問題の特定・・・、というプロセスで調査・検討をしていくことでインサイトが得られたり、的確な評価・フィードバックを得られて、新しいアイディアが生まれます。

以前紹介した考え方やフレームワークも新規事業の企画・立案に活かすことが出来ますので一部紹介いたします。
【参考記事】
アプリ/Webサービスのコンサルティングメソッド -カスタマージャーニーマップの作り方-

サービス企画の必殺技「UXタイムライン」とは?

|まとめ:新規事業企画立案ではユーザー調査・分析を行おう

いかがでしたか。少し長くなってしまいましたが、新規事業の企画立案プロセスをご紹介しました。

机上で新規事業の企画を発想したり、評価することは大変難しいです。また、ユーザーを省みない企画立案プロセスは、今回冒頭で紹介した事例のように企業側の都合に走りがちです。それらは会議で決まることがほとんどだと思います。

そのサービスって本当に使われるの?ユーザーって本当にそれが問題なの?を1つ1つ分析・検証して紐解いていく必要があります。実際にインタビューしたり、プロトタイプを作ることは骨が折れる作業ですが、こうした活動から得られたインサイトこそ良いアイディアに繋がり、ブラッシュアップすることで新規事業の成功に近づくと思います。

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