あるアメリカの大手調査会社によると、2018年までにマネタイズに成功する消費者向けスマホアプリは1000分1未満になると予測されています。
(開発規模にもよりますが、)SNS、動画ストリーミング配信、音楽ストリーミング配信、フリマ、EC、キュレーションメディア、UGC型の情報共有/検索といった、ある程度の機能を含んだスマホアプリやWebサービスを外注で開発すると、数千万円の開発費用が必要です。また、サービス公開後の宣伝広告費、サーバー費、保守・運用費なども考えると決して小さな投資と言えません。もちろん、全てのアプリ・Webサービスを単独でマネタイズさせる必要は無いのですが、当然、収益への貢献を期待しているので、費用対効果が得られないことは避けなければなりません。
今回の記事では、開発したスマホアプリ/Webサービスを成長させ、事業として成功に導くためのグロースハックの秘訣を紹介したいと思います。
なぜグロースハックを行うのか?
グロースハックとは、流入数/離脱率/PV数/コンバージョン率といったサービスを評価する指標やユーザーの声を分析し、アプリ/Webサービスを成長(グロース)させる仕組みや機能を組み込むことです。
そしてグロースハックを行う理由は、そのサービスの中でユーザーに最終的にしてもらいたいアクション(ゴール)へユーザーを上手く導くためです。離脱ポイントを少なくしたり、リピートして再訪してもらう仕組みがないと、いくら広告費を投資してもサービス本来の目的にユーザーを到達させることが出来ません。ザルにいくら水を入れても穴をふさがない限り、水は貯まらないということです。
次に、グロースハックの方法を順番に解説していきます。
1. 最終コンバージョン(KGI)を決める
アプリ/Webサービスを通して最終的にユーザーにしてもらいたいアクション(最終コンバージョン)と数値目標(KGI)を決めます。大体のケースは下記の例に集約できると思います。
【スマホ/Webアプリの場合】
・広告モデル(Facebook、Youtube、Instagramなど)
⇒広告へのクリック、広告表示
・ECモデル(Amazon、楽天市場など)
⇒商品やサービスの購入
・課金モデル(Netflix、スマホゲームなど)
⇒有料会員登録、アイテム課金
・仲介手数料モデル(Airbnb、Uberなど)
⇒サービス利用のマッチング完了
【Webサイトの場合】
問い合わせ、見積り依頼、会員や購読の申し込み
サービスのビジネスフェーズによって、KGIを変更する場合もあります。例えば、SNS系アプリの場合、初期フェーズでは、アカウント登録、シェアなどをKGIと置いて、ある程度集客できた時点で広告クリック数をKGIに設定した方がスムーズにグロースしやすい場合もあります。
2. AARRRフレームワークでユーザー行動を分解する
KGIに到達するまでのユーザー行動をAARRR(アー)というフレームワークを使って分解していきます。AARRRとは、Acquisition(獲得) ⇒ Activation(活性化) ⇒ Retention(継続/再訪) ⇒ Referral(紹介) ⇒ Revenue(収益化)というステップで、流入から最終ゴールまでユーザー行動を考えていくフレームワークです。
【例】
1:Acquisition
アプリダウンロード、Webサイト訪問
2:Activation
商品/サービス詳細画面の閲覧、コメントする、フォローする、チュートリアル突破、アプリを開く、会員登録、滞在時間、問い合わせ
3:Retention
2回目のアクション(1回目と同じActivation)、翌日以降の再訪問、フォローする
4:Referral
SNSシェア
5:Revenue
商品/サービス購入、課金、購入、有料プラン登録
3. KPIの現状分析
AARRRモデルで決めたユーザー行動の数値指標(KPI)について、Googleアナリティクスやデータベース情報から現状の数値を書き出していきます。
[図2] AARRRフレームワークに沿ったKPI
4. グロースさせる箇所を決める
AARRRモデルの中でグロース(改善)させる箇所を1、2箇所に絞ります。当社パートナーのグロースハッカー曰く、全てを一度に改善しようとしないことが秘訣とのことです。一気に改善をすると、施策と結果の因果関係分析が複雑になってしまい、施策を評価することが難しくなってしまいます。
改善箇所の優先順位を決めるポイントとしては、KPIが最も減少している部分や改善施策を打たずにKPIが長い間変化していない箇所が良いと思います。
5. 開発チーム全員一緒にブレストでアイデアを出し合う
グロースハックする箇所を絞ったら、具体的にどんな改善施策を打つか、エンジニア、プロデューサー、UI/UXデザイナー、Webディレクターなど開発チーム全員一緒にブレインストーミングでアイデアを出し合いましょう。開発チーム全員でアイデアを出し合うことで、実装・技術、サービス、UI/UXといった様々な観点で面白いアイデアが出てくるだけでなく、みんなで一緒に考えることで開発チーム全体のモチベーションにつながる効果が期待できます。
競合のiOS/Androidアプリ、Webサービス、Webサイトなども分析して、上手く取り入れられないか考えてみても良いと思います。
6. 改善施策の優先順位をつける
アイデアを出し合ったら、各施策について、①どれ位の改善効果が期待できるか、②どれ位の実装工数がかかりそうか、という2つの軸でプロットしていき、どの改善施策から開発・実装していくか、優先順位をつけていきます。
[図3] グロースハック施策の優先順位の決め方
優先順位を決める時、弊社に所属するグロースハッカーによると、効果の期待値よりも開発工数を優先した方が経験上良いとのことです。
理由は、
1:工数が少ないと実装が進んでいる感覚を実感しやすく、開発チームへのストレスも軽減できるため、モチベーション維持がしやすい
2:効果の期待値はあくまでも想定値であり、実際にどの程度の改善インパクトがあるのはか不確実である
という2点が挙げられます。
7. スケジュールに沿ってグロースハックサイクルを回す
施策の優先度を決めたら、1週間程度でデザイン・実装・テストできる範囲を決めて開発を進めます。そして、実装した仕組み・機能をリリースしたら、1〜2週間程かけて効果測定をします。効果測定の期間は、ユーザー数が十分に多い場合は1週間でも大丈夫ですが、ユーザー数がまだあまり多くないうちは2週間程度かけて測定しておいた方が良いです。また、グロースハック施策が成功したのか、失敗したのかの評価基準はサービスやフェーズによっても異なり難しいところですが、施策前後で5%以上の改善効果が確認されたら成功とみなして良いようです。
その後は、施策検討⇒デザイン・実装・テスト⇒効果測定のグロースハックサイクルをスケジュール通り回していきます。
[図4] グロースハックサイクルのスケジュール
グロースハックを始めた当初は開発スコープをスケジュール内で消化しきれないこともあるかもしれませんが、何回かサイクルを継続していると徐々に期間内にこなせるタスク量が開発チームで分かってくると思います。また、ちょっとしたコツとしては、グロースハックの施策は本番環境に反映しやすいAndroidアプリやWebサービスで試してみて、効果が出た場合にiOSアプリへ展開した方がスピーディにサイクルを回せます。
グロースハッカー、Webディレクター、UI/UXデザイナーの人材紹介サービス
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執筆:岡田 崇嗣 /編集:西本 守人