完全キャッシュレス商業施設「よかど鹿児島」のオープンに合わせて鹿児島銀行(以下:鹿銀)独自のキャッシュレス決済アプリ「Payどん」がリリースされました。

“地元のお客様が使いやすいアプリ”を目指して開発された「Payどん」は、地域に根ざしたサービスとして受け入れられ徐々にサービスを拡大中。地域商流のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進に貢献しています。

モンスター・ラボ(以下:ML)では同アプリの開発に携わるとともに、鹿銀の行内開発チームにトランスファー型の技術支援を実施。開発の過程を通じてアプリ開発のスキルやノウハウを残し、初回リリース以降はクライアントチーム主導で運用できる環境づくりを目指しました。

今回は鹿児島銀行のIT統括部 調査役の下迫哲男氏とIT統括部の星野健太郎氏にキャッシュレス決済アプリ「Payどん」開発の舞台裏をお伺いしました。

取材協力:
下迫 哲男(鹿児島銀行 IT統括部 IT開発グループ 調査役)
星野 健太郎(鹿児島銀行 IT統括部 IT開発グループ)
 
インタビュアー:
宮本 愛生(モンスター・ラボ ビジネスプロデューサー)

★インタビュー Part.1はこちら

今後のアプリ開発の内製化に向けたOJTができると判断したことがモンスター・ラボを選んだ大きな理由

鹿児島銀行 IT統括部 IT開発グループ 調査役 下迫哲男氏鹿児島銀行 IT統括部 IT開発グループ 調査役 下迫哲男氏

── 開発のパートナーにモンスター・ラボを選んだ理由

宮本:今回のアプリ開発において“内製化できる体制づくり”という部分を重要視されていたかと思います。まずは、その理由からお聞かせいただけますか?

下迫:弊行は昔から独自性やスピード感を出す必要がある部分には積極的に要員を投入して、内製化してきました。今回のPayどんアプリについては稼動当初は決済機能が中心ですが、今後も利便性の向上や地域活性化につながるような機能を柔軟かつスピーディに対応していきたいと考えていますので内製化が必要でした。また、スマホの普及により、今後もさまざまなアプリ開発を銀行主体でできる体制を整備しておくことで、将来的にも柔軟な対応が可能だと考えているからです。

宮本:そんななか、数ある開発ベンダーのなかから弊社を選んでいただいたのはどういった理由からだったのでしょうか?

星野:開発実績が豊富という部分ももちろん魅力的でしたが、何よりもMLさんとの協業であれば今後のアプリ開発の内製化に向けたOJTができると判断したことが大きな理由です。いろいろとご提案いただくなかで一緒にお仕事をしたいと思うようになり、御社に依頼することに決めさせていただきました。

宮本:ありがとうございます。では、実際にMLと協業してみていかがでしたか?

星野:まず初めに感じたのはマネージメント能力が高いということ。それに開発を通じてMLさんのエンジニアは非常にスキルが高いと実感する場面が多かったです。

下迫:スキルの高さももちろんですが、要員のアサインを柔軟に対応していただけたことも大きかったです。弊行の開発チームのマンパワー不足やスキル不足により遅延が発生した場合にも、状況に応じてMLさんの方で要員を割り振ってくださったのでとても助かりました。私としては、そこがMLさんに依頼して本当に良かったと思ったポイントですね。

宮本:鹿銀さんには優秀なエンジニアの方々がたくさんいらっしゃいますけど、アプリ開発は初めてだったそうですね。

星野:はい。勘定系システムやWebシステムの開発は自前で行なっていますが、アプリ開発に関してはほとんど知見がありませんでした。

宮本:そんなお話を受けて、最初にアプリ開発の勉強会を開催させていただきましたが皆さんからの評判はいかがでしたか?

下迫:とても有意義な勉強会だったと思っています。「アプリ開発とはどういうものなのか」という基本的な部分からわかりやすく教えていただけたので、事前知識が無くてもある程度イメージすることができました。研修内容も非常に良かったですし、いろいろと準備していただきありがとうございました。

宮本:いえいえ、とんでもございません。それにしても鹿銀さんの開発チームの皆さんのキャッチアップの早さには驚かされました。最初がとても重要で、そこでつまずいてしまうと全体的な遅れに繋がってしまいかねないですから。スムーズにキャッチアップしていただいたおかげで余裕を持ってリリースできたので、非常に感謝しています。

コミュニケーションツールの導入がプロジェクトの成功に役立った

鹿児島銀行 IT統括部 IT開発グループ 星野健太郎 氏鹿児島銀行 IT統括部 IT開発グループ 星野健太郎 氏

── 「Payどん」アプリ開発時に工夫したこと

宮本:ステークホルダーが多かったこともあり、自社の開発チームの管理を含めて大変だったと思います。進めながら工夫された点などはありますか?

星野:自分自身がしっかり理解できていないと話にならないので、積極的に設計・開発に携わるようにしました。まずはMLさんと対等に会話ができるところまで知見を高めないといけないと思って、素早くキャッチアップできるように努力しました。

宮本:コミュニケーションを円滑にするために努力していただいたんですね。

星野:コミュニケーションの円滑化という意味では、MLさんから紹介していただいたクラウド型のコミュニケーションツールを導入したことも今回のプロジェクトの成功にかなり役立ったように思います。

宮本:Slack・BackLog・Zoomの3つのツールを導入した部分ですね。具体的にどんなところが良かったですか?

星野:今回はロケーションが鹿児島、東京と離れていましたので、SlackやZoomでリアルタイムにやりとりできるのは非常に便利でした。Zoomを使えば直接対面して話すこともできますし、PCの画面を共有してソースコードをチェックしていただきました。

宮本:開発中はZoomを用いてリモートで会議をすることも多々ありましたよね。

星野:キックオフ直後に会議の計画を立てて、週1で定例会議を計画したのもよかったです。定例までに質問事項や確認をお願いしたいソースコードをまとめておけば、その場でチェックしていただけるので。緊急の場合はSlackで「今からZoomいいですか?」みたいに連絡して実際にソースコードを見ながらアドバイスをいただいていました。

宮本:やはり直接話せて、一緒に確認できるという部分は大きいですよね。行内のセキュリティルールが厳しく、ツールの導入に関しても使える・使えないという稟議も多々ありましたが、そこを乗り越えられたのも非常に大きかったのかなと。

星野:もし活用できていなかったら、プロジェクト管理にかかる時間は倍以上に膨れ上がっていたでしょう。セキュリティの関係上、専用端末以外はインターネット接続できないので、従来はメールでExcelファイルを送信して「課題ナンバー○番を追加しました」というような形で課題管理を行なっていましたから。

下迫:インターネットに接続しないと開発できない環境でしたので、セキュリティ面は注意しながらルールを設け、各種ツールをうまく活用しながら効率的に開発することができました。

最も違いを感じた部分は、アジャイル開発の手法を用いてどんどん機能を追加していくこと

モンスター・ラボ ビジネスプロデューサー 宮本愛生氏モンスター・ラボ ビジネスプロデューサー 宮本愛生氏

── 初めてのアプリ開発を通して感じたこと

宮本:初めてアプリ開発をされたなかで、特に苦労した部分があれば教えてください。

星野:いろいろ大変だった部分はありましたが、今回のプロジェクトにおけるアプリ開発に関してはあまり苦労したという感じはなかったです。上席のマネジメント能力が高く働きやすい環境を準備してもらったこと、弊行の開発エンジニアがとても優秀だったこと、また、MLさんのPMやエンジニアの方々も非常に能力が高かったので助けられました。

下迫:私はプロジェクト全体を見る立場だったのでステークホルダーが多かったという部分では大変でしたが、MLさんと協業したアプリ開発に関しては本当に順調に進んだなと感じています。何画面あるからMLさんと弊行でどう分担して作業するか調整したり、難易度の高い部分は最初にMLさんにベースを作ってもらったり、うまく役割分担できたことで開発が順調に進んだように思います。

宮本:これまでの開発と今回のアプリ開発で何か違いを感じた部分はありますか?

星野:どんなデジタルプロダクトを作るにしても物作り自体が大変なことなので、開発に関してはどれも一緒かなと思いますが、今回のアプリ開発のなかではiOSのリリース作業が特に大変でした。iOSアプリはAndroidアプリと比べて審査が厳しく、アップルストアの審査を通過しないとストアに配布されないことから、自分たちでリリースタイミングを制御できないというのが非常に大変でした。これは今後もつきまとっていく問題なのかなと思っています。

下迫:他のシステム開発とアプリ開発で最も違いを感じた部分は、アジャイル開発の手法を用いてどんどん機能を追加していくことでした。今回、2018年7〜8月から開発をスタートして同年11月には行内で実証実験するという、かなり厳しいスケジュールでしたが機能を絞り込んで開発を進めて、実証実験を無事に実施することができました。
これまではウォーターフォール開発で一括して開発を進めて最後にまとめてテストする形が多かったので、アジャイル開発はアプリ開発の手法として非常に有効だと感じました。

開発チームのメンバー入れ替えを柔軟に対応できるような体制にすることもできたので、とても感謝しています

Payどんではバーコード決済とQRコード決済が利用できるPayどんではバーコード決済とQRコード決済が利用できる

── アプリ開発前と比べてチームの成長を感じたポイントは?

宮本:開発前と比べて、開発チームの皆さんのどんなところが成長したと感じていますか?

星野:ベースとなるコードを作っていただけたおかげで、短期間でアプリ開発のノウハウを吸収できたと思っています。MLさんに設計思想の部分でも助力いただいた部分が大きかったです。

下迫:今回は骨幹をなす部分をMLさんに作ってもらって、それに基づいて弊行がいろいろな機能を追加していきましたので、今後の拡張を考えたときにメンテナンスしやすい形になっていると思います。1からまったく新しいアプリを作るには、まだMLさんのサポートが必要だと感じています。

宮本:でも、店舗側のアプリに関してはベースコードから星野さんが作られて機能の実装までやり遂げられましたよね。こちらでお手伝いする部分もほとんどなくて、短期間なのに習熟度がかなり向上されていたことに驚きました。

星野:店舗側のアプリは、Payどんをベースにしています。Payどんは設計思想が明確になっており、ソースの可読性および保守性が高かったことから弊行だけで実装することができました。設計思想については、今回iOSとAndoroidで可能な限り合わせていただいたおかげで、iOSのエンジニアがAndroid側のソースコードを見ても、AndroidのエンジニアがiOSのソースコードを見てもある程度のことを理解できるようになっています。開発チームのメンバー入れ替えも柔軟に対応できるような体制にすることができたので、とても感謝しています。

お客様の意見を取り込んで、Payどんを常に成長させていきたいと思っています

よかど鹿児島では全店でPayどんを利用することができるよかど鹿児島では全店でPayどんを利用することができる

── 初回リリースを終えての感想と今後の展望

宮本:初回リリースを終えてみていかがでしたか? プロジェクトが始まるタイミングで想定していたものと比べて、期待通りの着地になったのでしょうか。

下迫:全体的に、うまく行きすぎたという感じですね(笑)。まぁ、苦労はありましたけど、ここまでスムーズに運ぶとは思っていなかったです。段階的に開発するなかで大きな失敗もなく、期間的に厳しい部分もありましたが全員で目標意識を持ってゴールに向かえたことが一番大きかったと思います。

宮本:いいお話ばかりで弊社としてはありがたいのですが、これだと「ただうまくいきました」という感じで終わってしまいますね(笑)。

下迫:大規模なトラブルが出てしまうことを一番リスクとして考えていたんですけど、テストを繰り返してもMLさんに確認してもらってもまったく問題がなくて……。もちろんそれは素晴らしいことなんですけど、いざリリースしてみたらトラブルが…ということも多いじゃないですか。今回はそういったことも一切なかったですし、問題がまったく起こらないので逆に心配になるぐらいでした(笑)。

宮本:ありがとうございます。では、最後に今後Payどんをどのように発展させていきたいのか、開発チームとしてのビジョンをお聞かせください。

星野:まずは広域展開を目指して、その次に割り勘などで使える個人間の送金機能の実装を考えています。そのあとにポイント還元です。今のPayどんアプリには、わかりやすいインセンティブがないですから。この辺りが実装を予定している大きな機能ですが、さらにお客様に対しての利便性を提供できる機能を追加していく形になっていくと思います。
 
新機能の実装に関しては基本的に我々の方で開発を進めていく形になりますが、技術支援であったりOSのバージョンアップに伴う最新情報の提供など、今後もMLさんにもいろいろとご支援していただければうれしいです。

下迫:Payどんは、鹿児島を中心とした地域に根ざしたスマートフォン決済アプリ。地元のお客様に使いたい・使いやすいと思っていただけるアプリを作るというのが一番の目的です。そもそも使ってもらえないと意味がないですから。今後もお客様の意見を取り込んで、常に成長させていきたいと思っています。

宮本:ありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。

★インタビュー Part.1はこちら

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